自殺について (角川ソフィア文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044086077

作品紹介・あらすじ

「すべての人間の一生は、ある精霊が見ている夢。そして、死は、ひとつの目ざめであろう」。欲望や感情など、無限に溢れ出る人間の「意志」が世界を規定し、その意志を実現できない一切の生は苦しみに満ちている、とした偉大な哲学者が、死について深く考察。そこから善人と悪人との差異、生きることの意欲、人生についての本質へと迫る。意思に翻弄される現代人へ、死という永遠の謎を解く鍵をもたらす名著。

感想・レビュー・書評

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  • ドイツの哲学者 アルトゥル・ショーペンハウアーの論文集。彼の代表作"意志と表象としての世界"は哲学に興味を持つと一度は通る道ではないでしょうか。本作は、死について考察を行っており、前半が"パレルガ・ウント・パラリポメナ"から5編、後半が"ノイエ・パラリポメナ"から5編を収録しています。哲学の本は作者の思想の一端を掴むまでがとにかく苦行になりがちですが、本作は巻末の解説が丁寧なので読みやすいかと思います。キリスト教的な西洋の考え方というよりも仏教やヒンズー教などの東洋の考え方を重視しているように感じました。

  • 学校で読んでいたら皆に心配されました(体罰による自殺が話題の時期だったので^^;)。読むときは場所に気を付けましょう。

  • 素晴らしい本だった。岩波版より読みやすいが、文章の質は岩波の方が上かもしれない。
    amazonのレビューに書いたが岩波版には誤訳がある。
    第一部は自殺に対して厳しい目線で書いている。著者がまさに自殺念慮と戦っていた頃と解説にあった。
    第二部は65歳頃執筆されたとこあって闘い終えた退役軍人のような柔らかい目線でかつての闘いを振り返っている。

  • 「この人、ヒマなのかしら」
     葉月は読み終わった本を放り出すと、その表紙を横目で見ながら言った。
     そんな彼女の様子に、蛹は苦笑した。
    「書かれた時代を考えても、これはここ20年ほどの間に出された自殺に関する本とは、根本的に違うと思った方がいいだろうね」
     そして、放り出された本に手を延ばし、ぱらぱらとめくってみる。
    「時代背景はよく分からないけれど、自殺は社会問題というよりは、明確に『罪』と認識されていたみたいだね。著者は後半で、その風潮を批判している。宗教的な罪というならば、教典の該当箇所を示せ、というように」
    「その言い方だと、まるで自殺を肯定しているようですけれど」
    「ある意味では、そうだろう。いや、どうかな。そう考えるのは、いささか楽観的かもしれない」
     蛹は、ぱたん、と本を閉じ、葉月に返した。
     葉月は彼がしていたように、ぱらぱらとページをめくる。だがすぐに飽きたようで、また放り出した。
    「いずれにしても、自殺の方法よりも、自殺の理由をぐだぐだ考えている辺り、やっぱりヒマだったんじゃないかしら」
    「俺はむしろ、死にもっともらしい理由を求めている辺りに、何かしら切実なものを感じるけれどね。何しろ、個人のあり方を超えて、生命の連続性にまで思考は及んでいる。あらゆる宗教、哲学、思想からアプローチして、どうにかして死を肯定しようとしている。つまりは、何か理由が欲しいんだろう」
    「そして、自殺などしなくとも、人は時に暴力的に命を奪われるものだということには、触れていない」
    「どうだろう? タイトルによる先入観というのは強いものだけれど、でも俺が思うに、彼が求めているのは、死ではないよ」
     葉月がふと目を向けた先で、蛹は笑っていた。

  • 訳は岩波版の方が良いかも

  • まず先に書かれている文を解すのが少し難しいのは予想通り。痛烈な批判や皮肉などもあって興味深くはある。死は決定付けられているとはいえ、悲観論が主導的のようで、その点は気が滅入る。

  • 人生で何度か生きていてよかったと感じる日があるが、それと同時に今死んでも構わない、死ぬなら今だという感情に飲み込まれそうになる。死を自分で選択することに意味がある。消えてなくなりたいというニュアンスに近いがこれも生きようとする意志の表れなのだろうか。死についてもっと理解する必要がある。

  • ショーペンハウエル 「自殺について」 


    著者の代表作「意志と表象としての世界 」の補論集。論考テーマは 自殺、生の空しさ、悩み、存在としての不死など。各テーマ共通して 厭世的な雰囲気はあるが 暗さはない。


    著者の言いたいことは「世界は表象に過ぎないのだから、苦悩や不幸も表象に過ぎないし、存在として人間は不死なのだから、個体としての死は意味がない」ということだと思う


    「生は夢であり、死は目覚めである」「人生は迷妄であり、人生そのものに内容はない」など 一見すると、死を積極的に捉えたり、自殺を増長しているような言葉もあるが、読み進めると なるほどと思う。



    「生は夢であり、死は目覚めである」
    死の前に 存在としての不死性を認識せよというものだと思う。存在としての不死性は、キリストの復活や永遠性と関係しているのか?


    人生を「現在の各瞬間であり、いまは既に終わっているもの」と定義した上で「人生は迷妄であり、人生そのものに内容がない」
    人生を追憶することに意味がなく、幸福を求めたり、不幸に苦悩することに意味がない という意図だと思う


    悩みや自殺に関する言葉は、かなり本質をついているように思う
    *私たちが意欲することがそのまま私たちの不幸なのである〜意欲は満足させられるものでないから、人生は悩みとなる
    *人間の一生は、全体として観ると悲劇であるが、部分的に眺めると喜劇である
    *自殺は、生きようとする意志の現れである〜いつまでも生きたいという志向が、耐えられないほどの苦悩によって打ち負かされた結果である
    *自殺によって滅ぼされるのは、生そのものでなく、生の現在的な現象であり、個体のみにとどまる
    *自殺は、苦患に充ちたこの世の中から形の上からだけ解脱することで紛らわすこと


  • 哲学者が書いたものとしては、読みやすいとのことだが、それでも一読してすんなり入ってこない部分もたくさん。翻訳の問題ということもあるのかも。
    朝目が覚めて、今日も死んでなかったな(睡眠も死も似たもの?)と思うことや自分は子供を残した時点で生物としての役割を終えてしまったのではないかと思うようになりました。
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    ・我慾を廃棄することによって、わたしたちは、生に対する絆から放たれ、生に関する生存の重荷である自我は永久に振り捨てられ、認識は残っているにしても、中心はなくなり、球形も失せる、いいかえると、外なる世界は存続しているが、我はないのだ。
    ・個体的存在の根底には、あるひとつのまったく異なったものが存在し、このものの現れが、すなわち個体的存在なのだから。このものは決して時間を認めない。従って、また、永続をも滅亡をも認めない。

  • ショーペンハウエルは、この世の中は、どれほど悩み苦しみに、迷いや愚かしさに、さてはもろもろの害悪に満たされていようとも、当たり前のこと、と述べる。

    もののけ姫のアシタカが言ったようにそれでも苦しみ生きよう、ということなのだろうか?

    自殺を思うことは、生きようとする意志の表れ、と言われると、自殺を考えた時の心境を振り返ると、確かに自分は本当は強く生きたいのだ、という感じがする。

    苦しみ生きよう、と今後も力強く言えるかは分からないが、ショーペンハウエルのような賢者も悩んだ道を私も歩み、生涯を終えたいと思う。

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著者プロフィール

1788年―1860年。本名は、アルトゥル・ショーペンハウエル。ドイツの哲学者。

「2012年 『自殺について』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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