岸信介の誕生から岸政権の終わりまでを書いた本。
当時の政治家とのやり取りや密約などの記載も多く、彼がどのように政治的に事を進めて行ったを垣間見ることができた。
また、各所に岸信介の実際の言葉や関係者の証言などが挟まれており、彼の人柄に触れることができる気がした。
彼が生きた時代の歴史的背景を知らないと流れを理解しづらいため、岸信介について最初に読む本としては少し難しい内容かもしれない。
また、本全体の構成として、
・特に後半にかけて岸信介を賛美する記載が多くなり、内容をそのまま受け取って良いのか判断がつきづらい
・歴史的事象やそれに対する評価が単純化されすぎている傾向がある(様々な背景や文脈がある事象を「これはこうであったから素晴らしい」と一面からしか評価していないなど)
と感じられる部分もあり、どの程度この本の内容を自分の解釈とするのか判断が難しいと感じた。
しかし、彼が大きなことを成し遂げた人という事自体は変わらず、長年青写真を描き続けた安保改定や憲法改正に向けて、彼が着実に手を進め、最後は死の危険を冒してまで安保改正を行った気骨に溢れる政治家だったのではと感じられる内容だった。