外国人が見た近世日本 日本人再発見

制作 : 財団法人上広倫理財団 
  • 角川学芸出版
4.09
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  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784046216427

作品紹介・あらすじ

16〜19世紀の日本を訪れた外国人が見た、驚くべき日本人の姿!欧米を中心とする外国人が残した多くの資料から立ち現れる日本と日本人、生活文化の諸様相を知る。

感想・レビュー・書評

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  • 外国人が日本について書いたものを基に近世日本についての論文集。渡辺京二著「逝きし世の面影」と違い、5人の著者がそれぞれに自分の意見を述べている。当時の日本のすばらしさがよくわかった。印象に残る記述を以下に記す。
    「よく団結し、親和的で、神々は当然崇敬すべく、法律は当然遵守すべく、君主には当然服従すべく、隣人は当然愛し尊敬すべく教え込まれていて、慇懃、懇篤、高潔である。美術工芸の面では他のすべての国民を凌駕している。彼ら自身の間の相互の商売交易によって富み、優秀な国をつくっている。勇敢であり、生活に必要としているものはすべて豊富に恵まれている。しかも平和と平穏を享受している」(ザビエル)
    「国民性は賢明にして思慮深く、自由であり、従順にして礼儀正しく、好奇心に富み、勤勉で器用、節約家にして酒は飲まず、清潔好き、善良で友情に厚く、率直にして公正、正直にして誠実、疑い深く、迷信深く、高慢であるが寛容であり、悪に容赦なく、勇敢にして不屈である」(ツュンベリー)
    「正直と忠実は、国中に見られる。そしてこの国ほど盗みの少ない国はほとんどないであろう」(ツュンベリー)
    「日本の幕府は専横的封建主義の最たるものと呼ぶことができる。しかし同時に、かつてどんな国民も日本人ほど、封建的専横的な政府の下で幸福に生活し、繁栄したことはないであろう」(パンペリー)
    「もしこの人口多く聡明で抜け目ない、模倣上手な、忍耐強く勤勉でどんなことでも出来る国民の上に、わがピョートル大帝ほどの偉大な王者が君臨すれば、日本が内蔵している能力と財宝によって、その王者は多年を要せずして、日本を全東洋に君臨する国家に仕上げるであろう」(ゴロウニン)
     大石学氏の結論
    1 来日外国人の記録は、歴史史料として一定の価値を有するものであり、近世日本を国民国家の形成過程、脱宗教段階の文明社会として捉えていたこと、さらに近世の武士を官僚として捉えていたことを明らかにした。
    2 近世前期の来日外国人の記録には「平和」と「文明化」のもとでの国家体制の確立、社会資本の整備、文書主義などが記されており、日本型文明社会の成立の様子がうかがえた。
    3 近世中期の来日外国人の記録には、日本社会の治安の良さ、礼儀正しさ、正義、勤勉、倫理・道徳の尊重と普及などが多数記され、日本型文明社会の発展の様子が知られた。
    4 近世後期の来日外国人記録には、国民の間の自由や自治の発達、教育の普及、法制度の整備、女性の地位向上、親切・温和などが、これも多数記され、近世における日本型文明社会の到達点が確認された。
    5 260年という時代をへて形成された日本型文明社会は、明治維新ののちも近代日本の基礎を構成し特質づけた。均質性、中流化、帰属意識の強さなどを特徴とする近代日本社会は、本稿で検討した日本型文明社会の延長上にあるといえるのである。

  • 室町から江戸年間にかけて、日本に何らかの形で滞在した外国人が記した文献をもとにして、日本の近世社会について論じた本。内容は興味深いものであった。

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著者プロフィール

大石 学 1965年生。東洋大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。杏林大学ほか非常勤講師。哲学・倫理学。

「2023年 『日記・書簡集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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