歌集 西行の肺 角川短歌叢書 (角川短歌叢書 塔21世紀叢書 第 150篇)
- 角川学芸出版 (2009年8月22日発売)
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- Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
- / ISBN・EAN: 9784046217462
感想・レビュー・書評
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吉川宏志は、あとがきに「短歌とは、つまり呼吸を伝え合う形式なのではなかろうか」と書く。その通りだと思う。私も、息をするように歌をうたいたい。
「冬の樹はどのに行きしか騒がしきみどりのなかに鋭(と)き枝は消ゆ」「山沼に葉がびっしりと浮くように妻は笑えり顔でわらえり」「雨のなか一夜ありたる大石を春の光はあたためなおす」「脱ぐことのできぬ衣を彫られたる吉祥天は厨子にたちおり」「電話メモの紙片いくつも貼られあり欠勤つづく男の机」「辞めさせるべきだと言えど待たされきあるいは心を病みいるという」「怒りつつ入りしトイレに緑色の液体石鹼したたりており」「辞めさせよと言いたる我は何者か手から指へと洗いゆきたり」「この島を出でざる生の一つならむ翅くずれつつ赤蜻蛉とぶ」「ゆっくりと樹の寡黙さをまといゆく息子をつれて書店に入りぬ」「読みながら息はしずかに合いてゆく西行の肺大きかりけむ」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ひよどりがいくら啼いてもその声を吸い込んでゆく霜月の空
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