セーラー服の歌人 鳥居 拾った新聞で字を覚えたホームレス少女の物語

著者 :
  • KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048656320

作品紹介・あらすじ

「歌があるから生きられた」目の前での母の自殺、小学校中退、施設での虐待、ホームレス生活。今も複雑性PTSDの病と共に生きる、ある女性歌人の感動的な半生を、鮮烈な短歌を交えて描く。いとうせいこう氏推薦!

感想・レビュー・書評

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  • 新聞を拾った(?)のは、児童養護施設内。

  • 燃やされた戦地の人を知る刹那【せつな】フライドチキンは肉の味する
     鳥 居

     セーラー服姿の女性の写真が表紙。サブタイトルは、「拾った新聞で字を覚えたホームレス少女の物語」。新聞記者である岩岡千景によるノンフィクション「セーラー服の歌人 鳥居」が、話題を集めている。

    「鳥居」という名前は、もちろん筆名だ。幼少期に両親が離婚し、母は自死。児童養護施設では虐待を受けるなど、その生い立ちは読むにもつらいものである。「生きづらさ」を抱え、住む部屋を失った一時期もあったが、天運のように短歌という心の「居場所」に出合った。

     2014年、帯広ゆかりの女性歌人の名を冠した「中城ふみ子賞」候補作に選ばれ、歌集「キリンの子」も上梓【じょうし】したばかり。信頼できる大人との出会いは少なかったが、作歌によって、みずからのよりどころが生まれたのだった。

     他者の痛みに敏感で、その想像力、共感力が、作品にもあらわれている。たとえば掲出歌。テレビで目にした戦争犠牲者の肉体を連想した瞬間、「フライドチキン」の肉の味が生々しく口中に残ったという。

     慰【なぐさ】めに「勉強など」と人は言う その勉強がしたかったのです

     家庭の事情で義務教育を一部しか受けられず、ほぼ独学で漢字を覚えた彼女には、つねに「学び」に対する渇望があるという。

     みずいろの色鉛筆で○つける(今日も生きた)を確かめるため

     生き続けるための、水色の「○」マーク。読者にも、生の自己確認を迫る新刊である。
    (2016年5月1日掲載)

  • 今年1番に魂を揺さぶられました。僕のような文章弱者は本作のように鳥居さんの生い立ちを辿りながら、感情移入しながら、作品(短歌)を読む事で理解し、感動する。
    鳥居さんの作品を手に取ろう。そして鳥居さんが幸せに暮らせることを東京の端より願います。

  • 以前、記事か何かでこの歌人のことを知り、ずっと気になっていた。
    かなり壮絶な体験の持ち主。解離性障害を負っているというほどの過酷さである。よくぞここまで生きていたとすら感じる。
    彼女自身の体験から紡ぎだされた短歌は、平易な表現でありながらとても心を揺さぶられる。彼女最初の作品集『キリンの子』も一緒に借りたので読んでみるつもり。
    ただ惜しいのは、どうにも本書のノンフィクションとしての仕上がりが今一つなこと。新聞連載をまとめて加筆修正したことがその原因なのか、一冊の本としての読みごたえに不満がのこる。
    構成のせいなのか、エピソードの掘り下げ不足なのか、敬体であるせいなのか、はたまた単に文章力のせいなのか、ここが、とうまく言えないのがもどかしいが、何とも中途半端な感じが否めず残念。

  • 一気に読んだ。不幸物語で終わらせたくないし、そんなふうに読みたくもない。
    彼女の作品をもっと読みたい。
    こむずかしいことはわからないから、なんとか賞とかも別にいいから、とにかく読みたい。

    少なくとも私はこの本と彼女の作品で、
    まだ生きる力をもらった。

  •  新聞の記事で、「セーラー服の歌人 鳥居さん」は母子家庭で育つが、小学5年生の時に母が目の前で自殺。児童養護施設に預けられる。しかし、虐待やいじめにあい、その経緯から学校にも通えなくなり、施設も出ることになる。その後もホームレス等、過酷な生活を余儀なくされる。拾った新聞で字を覚えていった。
     という信じられないような過酷な運命に興味を持って、この本を読みました。
     本書はノンフィクション伝記であり、現実は想像以上でした。
     小学校3年生で不登校になってしまったため、義務教育レベルの知識が身についていない。
    それが、生きていく上でどんなにか、大切な事なのか、この本を読んで初めて知りました。
     彼女は生きて行く上で必要な義務教育をもう一度学びなおしたいという思いを持っている人達を代表して、あえてセーラー服を着ています。
     生きていく意味がわからない彼女が短歌に出会った事で、希望を持ちます。
     しかし、短歌だけでは生きていけないというのも事実なのです。
     私は、虐待された子供が児童養護施設に入ったり、里親のもとに行ければ、幸せな温かい暮らしが出来ると、何も知らずに信じていました。
     しかし、彼女にとっての現実はむごすぎました。
    今、彼女は自分と同じような思いをしている人の為に少しでも出来る事があれば、と活動し、「辛い事は山ほどあるけど、死なないでください。」と伝えたくて、『生きづらいなら短歌を読もう』と呼びかけています。
     ニュースでよく見る子供の貧困のすさまじさを知り、彼女たちに「生きて欲しい」と強く願わずにはいられませんでした。

    これからも生きる予定のある人が3か月後の定期券買う

    普段何気なく当たり前に定期券を買っている行為自体が、生きる予定でいるという事に、ハッと気が付かされました。

    揃えられ主人の帰りを待っている飛び降りたこと知らぬ革靴

    その情景が目に浮かび、胸に悲しみがじわじわわいてきました。

    このように、文章の合間合間につづられている短歌は心に響きました。

    いろいろな障害にさいなまれながらも、それでも短歌という助けを借りて、前向きに生きている彼女にこれからも生きて欲しいと応援したいです。

  • 幾つかの不遇が重なり、義務教育を受けることができなかった歌人の鳥居の半生。
    何度も涙が拭い、状況を想像しながら読んだ。
    挿入されている短歌に心が鷲掴みになった。
    生活保護受けない理由も書かれている。
    図書館で出会った短歌集が彼女を救った。
    言葉の力に表する言葉が見つからない。
    多くの図書館や図書室に所蔵、彼女が自立の為に本を購入することを切望。

  • 私自身、17歳の頃に短歌を詠んでました。
    久しぶりに歌集を読みたいと思って、図書館の歌集のコーナーを見てたら、この本に出会いました。

    過酷な子供時代を生き抜いて、歌人として活動している「鳥居」さんのお話。

    御本人も語る通り、インタビュー等でも過酷な子供時代がクローズアップされがちだというけど、彼女の歌を読んで、人生の絶望の中に見出した感傷のようなものを捉える、感性を感じました。

    それから、御本人が語るお母様の言葉が聞き覚えのあるテンションで、自分の子供時代を思い返してなんだか切なくもなりましたが…それでも母なりの愛情を注いでくれていたんだ、と認識できる彼女はすごいなって思いました。

    歌集「キリンの子」もチェックします。

  • 過酷な子供時代を過ごした彼女が、短歌に出会ったことで生きる望みを見出し、歌人として活動する話。

    鳥居氏のことは、Twitterのフォローはしているものの「セーラー服着たサブカルっぽい雰囲気の歌人」くらいにしか認知していなかったが、この本で彼女の半生を知り、もっと早くこの本に出会いたかったと後悔した。

    言葉で命を繋ぎ、また彼女自身も言葉の力で誰かの命を救いたいと活動する姿に感動した。芸術はお腹が膨れるものでも、お金が儲かるものでもないけど、死の境地に立つくらい悩み苦しんでいる人の灯火になる。

    彼女の以下の言葉が突き刺さった。

    「"自殺したいと思ってしまった人"を踏みとどまらせるには、力づくで生の側へ引き戻すのではなく、死の世界まで一緒に潜って一緒に戻ってくるという手続きを踏まないといけないと思う」

    友人が目の前で自殺したという彼女にとって、自死をどうすれば踏みとどまらせるのかは大きな課題だという。

  • この境遇から絞り出した正解が短歌だったのかもしれないですね。

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