ストーリーメーカー 創作のための物語論 (アスキー新書 84)
- アスキー・メディアワークス (2008年10月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048674157
感想・レビュー・書評
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最後の30の質問、役に立つー!!!
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こんな物語を書きたいのだけれど、漠然としたイメージしか沸かない。そんな悩みを抱いていた時に出会った本です。
まだ、実際に使ったことはありませんが、今後、役に立ってくれる一冊だと思っています。 -
物語の文法 物語には「文法」に似た一定の規則性がある
物語の文法の一番の基本の2つのパターン
①欠落したものが回復する
②行って帰る
・行って帰る物語
境界線を越えて向こう側に行く 境界線は象徴的な場合もある
行って未知なるものに触れる
帰ることによって初めて元に居た場所の意味が確認できる
日常や現実の確かさがこのようなプロセスを経て実感されるのが「行って帰る」物語の主題
対象物を「最小単位からなる構成物」と理解する態度→ロシア構成主義、モンタージュ論
モンタージュ 単独では「意味」の成立しないカットの組み合わせによって「意味」を成立せしめる
レフ・クレショフの実験 「男の顔のアップ」の後に「皿の上の料理」「死体」「ベッドに横たわる女」で意味が変わる
ウラジミール・プロップ「昔話の形態学」
物語の最小単位、物語の進行に果たす作用=機能 登場人物の行為によって定義される
機能の配列のされ方=構造
8種類の登場人物 「魔法民話のキャラクター」
①主人公
②偽の主人公
③敵対者
④贈与者
⑤助手
⑥対象者(敵対者が狙い、主人公が探す)
⑦依頼者
⑧追跡者
物語の31の機能
①不在 主人公ないし対象者の家族の成員の一人が家を不在とする
②禁止 主人公または対象者に禁止を課す
③違反 主人公ないし対象者は違反する
④情報の要求 敵対者は主人公に情報の要求をする
⑤情報入手 敵対者は情報を入手する
⑥策略 敵対者は主人公ないし対象者に策略を仕掛ける
⑦幇助 主人公ないし対象者は敵対者を結果的に幇助する
①〜⑦は、⑧のための下準備
⑧加害あるいは欠如 敵対者は主人公ないし対象者に加害、欠如を生じさせる
⑨派遣 依頼者は主人公を派遣する
⑩任務の受諾 主人公は依頼者に任務の受諾をする * いやいやとか快諾とか主人公の気持ちと「機能」とは何の関係もない
⑪出発 主人公は出発する
⑫先立つ働きかけ 贈与者は主人公に「贈与に先立つ働きかけをする」 *RPGのアイテムを手に入れる前のバトル
⑬反応 主人公は反応する
⑭獲得 主人公は魔法の手段を獲得する
⑮空間移動 主人公は呪具ないし呪力の援助で空間移動する
⑯闘争 主人公と敵対者は闘争する
⑰標付け 主人公は敵対者もしくは対象者から標付けをされる
⑱勝利 主人公は敵対者に勝利する
⑲加害あるいは欠如の回復 主人公は加害あるいは欠如の状態を回復させる
⑳帰路 主人公は出発してきた場所に戻るため帰路につく
㉑追跡 帰路についた主人公を追跡者が追跡する
㉒脱出 主人公は追跡者から脱出する
㉓気づかれざる帰還 主人公は気づかれざる帰還をする
㉔偽りの主張 偽の主人公が偽りの主張をする
㉕難題 依頼者は主人公に難題を課す
㉖解決 主人公は難題を解決する
㉗認知 依頼者あるいは対象者は主人公を認知する *⑰の標付けが意味を持つ
㉘露見 偽の主人公の正体が露見する
㉙変身 主人公は変身する *㉓と呼応
㉚処罰 依頼者は偽の主人公を処罰する
㉛結婚ないし即位 主人公は対象者と結婚し、もしくは即位する
4つのテーゼ
①昔話の恒常的な不変の要素となっているのは、登場人物たちの機能である。その際、これらの機能がどの人物によって、またどのような仕方で実現されるかは関与性を持たない。これらの機能が昔話の基本的な構成部分である。
②魔法昔話に認められる機能の数は限られている
③機能の継起順序は、常に同一である
④あらゆる魔法昔話が、その構造の点では単一の類型に属する
ジョセフキャンベル「千の顔を持つ英雄」
物語の構造の論理性は心理学的に解説される vs.プロップ
出立、イニシエーション、帰還=ジュネップの通過儀礼の三段階説、分離、移行、統合
第1幕 出立
①冒険への召命
②召命の辞退
③超自然的なるものの援助 庇護者(母性) 主人公に超自然的な力やアイテムを与える
④最初の境界の越境 境界守がいる
⑤鯨の胎内
第2幕 イニシエーション
①試練への道
②女神との遭遇 母殺し
③誘惑者としての女性
④父親との一体化 父殺し
⑤神格化 母と父を象徴的に殺すことで成人になる 変身
⑥終局の報酬 霊薬(エリクシール)
第3幕 帰還
①帰還の拒絶
②呪的逃走 物語の前半で受け取っていたアイテムが役に立つ
③外界からの脱出
④帰路境界の越境
⑤2つの世界の導師
⑥生きる自由
物語とは、「一つの論理構成」つまり因果律
世界が複雑化すればするほど、その世界を理解する煩雑さに耐えかね理解し易い物語論的因果律は支持され易い ex.小泉総理
手塚治虫 絵を象形文字、記号という最小単位の組み合わせからなるものだとした
クリストファー・ホグラー「神話の法則」
①日常の世界
②冒険への誘い
③冒険への拒絶
④賢者との出会い
⑤第一関門突破
⑥仲間、敵対者/テスト
⑦最も危険な場所への接近
⑦'複雑化
⑧最大の試練
⑨報酬
⑩帰路
⑪再生
⑫帰還
ストーリーメーカー
主人公の内的な領域を設計する
欠けているものは必ず主人公の内的な欠落感の反映であり、象徴
→欠けているものを考えるとき、それらが何故欠けているのか、主人公は何故それを欲するのかという「内的」な理由を考えること
主人公の欠落を「内的」なものと「外的」なものの2つの面から定義するシナリオ作成技術(ニールヒックス「ハリウッド脚本術」)vs.プロップは外的欠落のみ
外的な物語が内的なものの象徴
ex. 理想の恋人を手に入れようとする主人公は、実は子供の頃に手に入れられなかった幸福な家庭を夢見ている
欠落を①個人的なレベルで主人公が欠落させている具体的な事柄 ②内的なレベルで欠落させている事柄 ③ストーリーラインの中で主人公が回復を具体的に依頼される事柄 ①と③が一致する場合もある
「外的」に得るもの/失うものと「内的」に得るもの/失うものは、一致しないこともある
この組み合わせが主人公や物語に分かり易い形で「奥行き」を与える
ex. シンデレラストーリーとしては主人公は失敗するけど、本当に身近に大切な人はいて、主人公が「内的」に求めていた幸せな家族は手に入った
プロップの言う助手は、しばしば主人公の前に贈与者や門番として現れ、自分自身を主人公に助手として贈与する形をとる。相棒は物語の構成上の助手としての機能だけでなく、実際に脚本や映像の形をとる時の観客の視点を代行していく「アバター」と呼ばれる役割を果たす時がある。例えば、あまりに凡庸な主人公が、しかし、主人公として何か特別な資質を持っていることを観客の視点から見ても分かり易い形で語る。
キャラクターは複数の属性を兼ねてもいい ex.レクター博士は、賢者であり敵対者 -
かっちゃいました
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興味深かったのが第二部の質問に回答していくうちに自分の物語が作られるという実用書的な部分。
著者の考える物語の構造論に、理屈的には同意できなくても質問にさえ答えていけば結果的に自分の作ろうとしている物語の構造を考えるきっかけとなると思った。
逆に実用書として読まない場合、著者の考えが押し付けられている感じがしてあまり気分がいいものではないかもしれない。 -
シナリオ学校の教材を新書にした感じ。あとハリウッドのシナリオソフトのアルゴリズムを新書にするとこんなんでしょうか。久々にお買い得感ある新書です。
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08mmdd読了