初音怪談 私と小さなおじさんのこと

  • 角川グループパブリッシング
3.33
  • (2)
  • (2)
  • (2)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 40
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048738903

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 昔から怖いものが見えたり不思議なものが見えたりする私は、普通の人では考えられないような体験を色々してきました。
    これからお話しするのは、私が実際に見て、聞いて、感じたことです。

    ***

    「帰らない」

    小学生低学年だった著者はある日教室に忘れ物をしたことに気が付いた。冬という事もあって学校についた時にはすでに暗く、ひっそりと静まり返ってしまっている。不気味に思いながら、無事忘れ物を見つけて教室を後にしようとしたが、隣の教室から女の子の話声が聞こえる。暗い学校から聞こえる女の子の声に怖がりガリながらも、好奇心に負けた著者は隣の教室をのぞいてみることに。すると4人のクラスの女子たちが暗い教室の中でコックリさんをやっていたのであった。何やら必死な様子で帰ってほしいとコックリさんにお願いし続ける4人。どうやら呼び出した霊が帰ってくれないらしい。コックリさんが非常に危険なことを知っている著者は何とか助けようと奮闘する。

    著者が小学校の時に体験した話。著者自身は騒ぎの渦中にいたわけでは無く、第三者であったがそれでも十分に恐ろしい話だった。著者がこういう展開に慣れているのかあんまり大事!という感じに語られていないが、当事者たちからしたらだいぶ怖いし大事だった。
    軽い気持ちでコックリさんを始めたはいいが、終わろうとしてもコックリさんは帰ってくれない、しかしコックリさんのルールで10円玉から指を離せないので帰ることもできない。そうこうしている内に冬の早い日の入りであたりは暗くなっていく……。不安で不安で仕方がなかったことだろう。著者の登場により一応は事なきを得た、という形になったが円満解決とはならず。後日譚の方がなんというか怖かった。あと、最後の最後の著者の言葉がなんというかずれていてそれも怖かった。
    ちょいちょいこの手のちょっとずれた発言が逆に怖いわ。

    「狐の嫁入り」

    小学生の頃マンションに住んでいた著者。住んでいたマンションの近くには小さな祠があった。祠はどうやらお稲荷様の祠のようだが、いつも障子紙が張ってある格子戸がしまっており、祠の中を覗き見ることはかなわない。戸を開けて中を見ることは可能だったが、母から中をのぞくと狐にされると脅かされていたため、それを実行するには至らなかった。
    そんなある日、なんとその狐の祠が壊されてしまい、たっていた土地に一軒家が建つ。
    その家にはちょうどN君という同い年の男の子が引っ越してくる。N君とクラスメイトになった著者であったが、そこであの土地に越してきた影響としか思えない状況にN君が巻き込まれていくのを目の当たりにする。

    お稲荷様の祠を壊して家を建てるなんてなんとも罰当たりな話。越してきたN君一家はどうやらこの土地の前の姿を知らないようで、すんなり越してきた。(土地の持ち主がちょっと悪質かも)祠を破壊して軽トラで持っていくという雑な作業をやったのだから、おそらく祠にいたお稲荷様の扱いもぞんざいだったのだろう。N君はその因果に不幸にも巻き込まれてしまった形になっているので不憫で仕方がない。
    転校当初は明るく元気だったN君も、じわじわむしばまれていっていた。
    この事件も著者の活躍でN君は無事であったが、土地との因縁は断ち切ることができなかったのか、その後N君一家は離散するような形に。どうであれあの土地から遠ざかれたことを喜ぶべきだが、その後また新たな不幸な入居者が現れ、この問題はすぐに解決しそうにない。ちゃんとした人を連れてきて正しい手法を行えば丸く収まる自体なのか、はたまたもう手遅れなのか……。それは分からないが、この土地が持っている因果はまだ諦めていないようである。

    いろいろな話が載っていたが、怖かったと感じたのは上記の二つ。この本に載っている話の大多数が、怖いが不思議だったり、切なかったりという話だった。
    不思議だと感じた話は「足袋」、切ないなと思ったのは「ゆうこさん」という話。

    また、この本のサブタイトルにもなっているが、都市伝説の小さなおじさんのようなおじさんと一緒に暮らすという奇妙な日常の話も面白かった。本の半分ぐらいがこの話なので、著者は結構長い間このおじさんと母親と一緒に暮らしていたようだ。
    最後はなんとなく物悲しい終わり方だった。

    他にもいろいろな話が載っていたので、興味がある方はぜひ読んでもらいたい。

松嶋初音の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×