本日は大安なり

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  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048741743

感想・レビュー・書評

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  • ウエディングプランナーの多香子が勤めるホテルで行われる4つの結婚式にまつわるお話。

    11月のある大安の日に、4組のカップルが結婚式をとりおこなわれた。
    1組目は、双子の美人姉妹の妹と、眼鏡の奥の瞳に冷たい光がさす男性(どうやらずいぶんややこしい性格の持ち主らしい)の物語。
    この一卵性の双子である姉妹は、顔はそっくりなのだが、性格がずいぶん違うようだ。
    華やかで積極的、存在感があり仲間内の意思決定に常に関わる姉。
    子どもの頃のある日を境に、地味でおとなしく、姉に庇護される立場を甘んじて受け入れるしかなかった妹。
    どちらもこの立場を求めて落ち着いたわけでなく、そのようにふるまうことで絶妙なバランスを保ち、あたかもそれが正解であると生きてきた。
    誰よりも仲良く、太陽と月のように対となってどちらも決して欠けることなく、分かち難い2人。けれど、実際はそれぞれがお互いを強く意識し、自分が相手を出し抜き、自分こそが絶対の愛を手に入れたことを相手に突き付けたいと思っている。
    その企みは、結婚式当日に予想もしない形で実行された・・・。
    表向きの振る舞いとは違う心の奥の奥に気づいているのは、結婚相手の映一さんだけ。それは、最後に明かされるのだが。

    うーん。
    兄弟、親子の人間関係って難しい。
    いい話ももちろん多いけれど、複雑で依怙地になって、ひりひりした辛い感情を含むものも、あれこれ思い浮かぶ。
    (最近読んだ本では「ビブリアシリーズ」にもありましたね)
    なにしろ、長年にわたってじわじわと環境を変えずに既成事実化していくわけだから、何か雷に打たれてショックを受けるようなことでもなければひっくり返りにくいんだろうね。

    3組目の話に登場してくる甥っ子の真空くん。
    情報の混乱により、誤解が生じ、末端にいた彼は一人苦しむことに。
    ボタンのかけ違いからくる思い込みや勘違い、間違った方法で点と点をつなげて事実をゆがめてしまうことの恐ろしさ。
    真空くんのお母さんも妹のことを思っているからこそなんだけど。

    だんだん年をとり、敬語で話しかけられることも多くなってきて
    つい経験から決めつけてしまうこともあったと反省。
    視野を広く。知らないことの前では、謙虚にならねば。

  • 3.4
    一部の人の話は合わず、その人の話は読み飛ばしながらでした。

  • バタバタバターっとサラサラサラーっと読めた1冊。何が真実かって一方向からじゃわからない。

  • 久々辻村さん(「名前探し(略)」以来読んでいなかった)。
    幸せで華やかそうなタイトルと装幀の色遣いだが、中心にいる女性はなぜかちょっと翳があり冷めた目をしている。本文を読み進めていくうちにこの来る神の女性が思い浮かんだ。あるホテルで繰り広げられる4つの結婚式を中心にしたヒューマンドラマ。
    作者の転換期に書かれた作品といった印象。

    あらすじ;
    女性が憧れる結婚式会場の上位に選ばれる、ホテル・アールマティ。大安のこの日は結婚式の予定でびっしりだ。
    結婚式を行う妹・妃美香と姉の双子ゆえのやっかいな問題、ウェディングプランナー多香子の過去、彼女が担当する玲奈の挙式、伯母の結婚式を心から祝えない真空少年、曖昧な態度をとってきたせいで結婚式を挙げる羽目になってしまったことを後悔する陸男。
    それぞれが各々の親族やホテルの従業員を巻き込んで歪なドラマを展開させ、それはホテル全体を包んでゆく。
    大きな買い物となる結婚式は大安に行っても果たして本当に掛け値なしに幸せなものなのか――。結婚に問題を抱える人々や関係者の気持ちが左右する。

    初めの方に書いた通り、作家辻村深月のキャリアの中でも転換期に書かれた印象がある。結構普通の人たちが多いし、ズレた美人や王子様的イケメン、超能力も出てこないんだもの。双子ちゃんたちはやはり辻村さんと言った感じで少し笑えたけどね。
    多香子の嫌々感は嫌な客だからという理由以上にマイナスなイメージだったが、とある事実が打ち消してくれるのは巧い。こういった後々に響く伏線というのがいくつかでてくる度に、小さな驚きを与えてくれる。これは推理小説作家としてデビューし、数々の作品を生み出してきた彼女の手腕が輝いてるからだ。
    それぞれの人物たちが関わる式について少々。
    玲奈:この手の客って多いんじゃないかと思ってしまう。玲奈の性格は決して褒められたものではないし、振り回されるたびに腹が立ってしまう気がするがどこか憎めない。いるよいるよ。一方で多香子には嫌いなら嫌いと言え、と「いい子ちゃん」な内心に少し反発を…。玲奈と多香子の事情で難産になった結婚式だが、多香子のマリアヴェールのエピソードなどを交え、何か信頼関係が築かれていく過程に微笑を浮かべてしまった。困難を乗り越えた時の達成感はやはりいいものだ。
    双子ちゃん:一番いないだろうな、というのがこの二人だった。ここまで「ややこしい」人たちはなかなかいないだろうに。姉の執着は恐ろしいほどだ。想像しやすい展開だが、やはり面白い。
    真空君:伯母さんの結婚に反対している理由は、東君は本当はちがうからだ、というもの。少年の思考回路は想像がつくが、それに起因しているのは――。幸せな結婚式を迎えるためにはやはり両親や親族からの祝福っていうのは最上位事項だ。真空少年の思考まではいかなくても、周りの人の話を聞いて影響を受けることはある。結婚という一大イベントを舞台に、核心的なところにも触れている。
    陸男:ダメ男参上。ミステリ的な展開と陸男の不穏な計画。馬鹿じゃないのか、と何度心の中で罵倒したことか…。馬鹿な陸男だからこそその後の展開にはやれやれといった微笑ましさも付きまとうのだが。馬鹿野郎よかったじゃないか! 大切にしろよ!

    デビューからは少年少女の繊細な心理描写が評価されていた作者だが、大人が読んで放たして楽しいのだろうか、という疑問を抱いていた。ところが数年前からより幅広い世代へのアピールを続けているなという気がしてきた。私自身は彼女の作品から「卒業」してしまってからは数年間、読んでいなかったのだが大きくなっているだろう予感と装幀に惹かれて本書を手に取ってみた。
    辻村さんは確かに成長していたと思う。
    美少女や美少年や超能力や殺人なんて起きないけれど、繊細さからなにか骨太さそして温かさがある。この本ではまだ少しもがいている感じがしたけど。
    万人に受けるストーリーを丁寧に編んできたからこそ、直木賞受賞までつながったんだろう。そんな感じ。

  • ホテル・アールマティのウェディングサロン。
    ここで働くウェディングプランナー。
    そして、大安のその日、式を挙げる4組のカップルたちの群像劇。

    お互いを意識しすぎている双子の姉妹。
    クレーマーでトラブルメイカーの新婦。
    疑惑の新郎と白雪姫の新婦。
    どうしても式を挙げたくない新郎。

    結婚式ってただでさえ大変なものなのに、ここに集まったカップルたちはややこしい人たちだらけ。
    幸せなハレの日のはずなのに、溢れ出す色んな負の感情。
    怒り、苛立ち、疑惑、嫉妬…。


    双子姉妹と映一さんの物語が好きでした。彼女たちよりもややこしいって彼には一体何があったのでしょう…(笑)
    後日談で彼女たちのこりない様子を読んだ時には、映一さん以上にこっちが「勘弁してよ」でしたが。


    色々あったけれど、結婚式ってちょっといいなぁと思いました。
    2人は来てくれる招待客のことを思って大変な準備をして、お金もかかって。招待客たちは2人の幸せを祈って…。


    お客さまたちは、料理や飲み物にお金を出してるわけじゃない。自分の満足や、これからの誓いをこめて、目の見えない「縁起」に払っているんだ。
    高価なドレスも豪華な料理も節目の儀式だから。それが慶事にかける人間の願いだから。
    というプランナーの言葉に、確かにそうかもなぁと思った。

  • どうなるかと、ハラハラした場面もあったが
    結論としては、少し作り過ぎ感が否めない
    落とし所としては仕方がないとは思うが

  • 途中まで、話がこんがらがって、うまく読み進められなかった。後半は、いろいろ見えてきて、面白くなった。
    陸雄みたいな男は、もう少しこてんぱんにやられてほしいなー

  • ある結婚式場の4組のカップルとウェディングプランナーをめぐるストーリー。
    時系列にそって、次から次へと語り手が変わっていく。
    多少「出来すぎ感」は否めないが、後から後から思わず「へ!?」と思うような意外な展開に、読んでいて飽きない。
    どのカップルもハッピーエンドなのがよかった。さすが大安吉日(笑)
    2016/08

  • ひとに薦められて

    こういった題材の小説読んでなかったから純粋に面白かった
    この構成がおもしろさのひとつなんだろうけれど、なかなか
    慣れず少々読みづらかったかな

    ストーリーは良かったです、
    双子の話に関しても…言いたいことや思うところはあるけれど
    流石、見破ってくれて本当に良かった

    もうちょっとしたらまた読み返そうと思う

  • 語り手がコロコロ変わるが、テンポが良く読みやすいコミカルな作品だった。
    途中でオチが読めるものばかりだったけど、飽きずに一気に読めた。

著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻村深月の作品

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