- Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048838283
作品紹介・あらすじ
王位を継ぐ代わりに、祖国解放の独立運動に身を捧げたクォンデ。革命家ファンボイ・チャウとの運命的な出逢いによって、一九〇六年日本を訪れる。犬養毅や玄洋社の頭山満、新宿中村屋相馬愛蔵・黒光夫妻ら、留学生を支えた日本人との交遊、そして満州国建国に奔走したアジア主義者大川周明、松井石根の暗躍-。「僕らの王子は日本に殺されたようなものなのに、どうして日本人は誰もそのことを知らないのですか」ひとりのベトナム人留学生の呟きに導かれ、日本に憧れて翻弄されつづけた王族の数奇な生涯が鮮烈に甦る。
感想・レビュー・書評
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ベトナム
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史実と小説が混じって書かれている。あの時代にこんなことがあったのか。知らなかった。フエに行ってみたくなかった。
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再読(2011/04/03)
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正直、タイトルを見て期待した内容、イメージしたベトナムのラストエンペラーの人物像と実際の内容には乖離があった。志は確かだが革命家として不可欠な行動力に乏しく、情勢を読む目も持たない。
読後のクォン・デに対するイメージはあまりに頼りなく不運な男。
しかし、祖国独立のために日本に亡命したベトナムの皇族に対しての日本の扱いはあまりにひどい。自国の情勢によって利用したり、見捨てたり、また利用したりと。
それはそのままクォン・デを崇拝し、クォン・デによる祖国解放、独立を信じ続けたベトナム国民に対する扱いでもあると思う。
最後の最期までベトナムを裏切り続けた日本でこの人物、この事実を知る人はほほんどいない。
そして祖国ベトナムでもクォン・デの存在が忘れさられようとしている。
著者の言う「無自覚に忘れさる日本人」の一人に自分はなりたくない。 -
森氏の著作はどうしてこうも個人の感傷に満ちているのか。そこがどうしても馴染めない。
学生時代にベトナム史と浅からぬ縁はあったものの、「最後の皇帝の弟」のことは知らなかった。その存在を知ることができたことは大きい。当時の日本の政策を絡めて推論していく筆致は楽しめる。
とはいえ著者個人にひきつけた記述が多すぎる。それが著者のスタイルなのだとは承知しているものの、本書に関してはもう少しドライな内容であってほしかった。 -
もう一人のラストエンペラーというタイトルに惹かれて手に取った。
日本で客死したベトナム王朝の末裔であるクォン・デを取り上げた一冊で、今まで知ることの無かった近代史中のエピソードに触れることができる。
越南国の皇帝になるはずだった男、クォン・デ。王族の身ながらベトナムの独立を志し日本へ渡った。歴史に埋もれてしまった軍部の謀略と、彼の波乱万丈な人生を掘り起こす。そんな内容を期待して読み始めた。しかし、本書で彼の人生は中途半端な物としてしか描かれない。
本書で描かれるクォン・デにはそれほど人間的な魅力を感じられない。彼は何をどうしたかったのか。日本に来れば即それが革命へと繋がると信じていたのか。その部分は本書の中でも「日本に依存しすぎた」という表現で幾度と無く語られる。
そうだろうか。彼は日本に依存していたというよりも、独立を求めるベトナムの王族だということに依存していたのではないだろうか。そして、そこから先に進むことをしなかった。神輿であることに甘んじて革命家になろうとはしなかった、そう思える。酷な言い方をすると、彼は何もしなかった。
すばらしく魅力的な題材だが、資料の少なさからも本著自体も中途半端なものとして終わっているのが残念。どこまでが史実でどこまでが創作なのか不透明な構成や、突然入り込む作者の主観や紀行にも最後まで抵抗があった。単行本として出す以上、主題ははっきりするべきだと思った。