妖怪の理妖怪の檻 (怪BOOKS)

著者 :
  • 角川書店
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感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (526ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048839846

作品紹介・あらすじ

"妖怪"に不思議なことなど何もない。本当はみんな知っている。"妖怪"とは何なのか。誰もが知っているけれど、誰も語れなかった不思議のすべて。

感想・レビュー・書評

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  • 京極夏彦が、雑誌「怪」に連載していたものをまとめたもの。妖怪という言葉が、何を示しているかということを、言葉、なりたち、形から考察を進めていく。
    まずは言葉として、先人や学問の中でどう定義されてきたかを考察する。井上圓了、柳田國男などの定義を持って検討していく。そしてなりたちとして、水木しげるの出現と展開していく人達を元にどう妖怪が捉えられてきたかを述べる。そして民俗学の定義とは、ちょっと違うという点が語られる。形では、コトであることに、形が与えられることで妖怪と捉えられていくことを、時代の画像などを元に説明していく。
    この妖怪の捉え方を通俗的妖怪という言葉で示しているように、民俗学などの視点での定義とは異なる捉え方をし、定義自体は広く置いているのは、最終章の公園で語られているように、娯楽であり娯しむものだからだろう。
    コトに形が与えられることとに水木しげるの影響が大きく、そのやり方によって、妖怪というイメージができてきたという感じで、改めてすごいと感じた。
    一章の学問的な位置付けの考察は興味深いものの、明治後半から昭和初期の本から持ってきているコトもあり、中々難しいが、2章以降、水木しげるを中心として作られていく過程は楽しく読める。
    柳田國男の文章に表れる現象(コト)の表現から、そのイメージを持って形作られるヌリカベ、人形のカシラなどのイメージが複合して、現象(コト)からモノになった油すまし。そもそも大元の現象(コト)が違っていたような感じだが、完全にモノとしてイメージが確立した子泣き爺というように、様々なパターンがあり、だからこそ妖怪というところが、おもしろい。
    妖怪と感じられるためのイメージとして、懐かしく怪しいと述べられている。例えばトイレの花子さんは、前近代的ではないものの、妖怪と認識されてはじめている。そして出現時には大体和式になるあたりに、懐かしさがあるからという話は興味深い。時代が経つにつれ、懐かしくというポイントだと、ドンドン増えていくことになるが、やはりそこには万人に根付くようなイメージ付けが必要で、果たして、それは今の時代、どこまでできるものなのか?と感じた。
    本書の後に妖怪ウォッチのブームが発生している。ゲームのバージョンアップのために、偉人やら神様やら含まれていく様相は、1章や2章で対象が混沌していくところににている。全ての怪しいことは妖怪のせいというのは、コトからモノになる話と逆転しているものの、現代に発生するコトについて、モノとして形を与えているのは、なりたちとして繋がっているところがあるのだろうか。ここに懐かしさが入ってくれば、どう変わっていくのか。引き続きの考察で取り上げられると面白いかと思った。

  • 実に読み辛い本です。 まるで教科書です。 しかもその昔尤も苦手とした科目「古典」の教科書の様な。 読み始めるとすぐに眠くなります。 読んでも意味がとれないといつしか意識は跳んでしまって落ちています。 でわなぜ読むのでしょう。 それは我が趣味は能動的読書だからです。 なにも面白いから楽しいから読むだけが「読書」でわないのです。 こんな感想ではそのうち「落ちる」でしょう。 でも、本当はもの凄く為になるいわば「学術書」です。 もちろん強い意志の力による能動的読書しか歯が立ちませんのでご注意を。 誠にすまぬ。

  • 妖怪の定義であったり、妖怪という言葉がもつ意味であったりが500ページほど。
    結局こたえはないのだけど、こたえがないということを説明するのにこれだけのページ数が必要なんだなと。
    著作権フリーというのがキモな気がする。

  • 妖怪のことを考える前に
      ”妖怪”ブームはあったのか/”妖怪”的なモノゴトとは何か

    妖怪という言葉について

      学問の言葉を巡って/黄表紙を巡って/辞書を巡って/京の地誌を巡って/鳥山石燕と様々な百鬼夜行を巡って/井上圓了の妖怪学を巡って/江馬務の妖怪変化史を巡って/藤澤衛彦の風俗研究を巡って/柳田國男の妖怪談義を巡って/黎明期の民俗学を巡って/明治の雑誌などを巡って/郷土研究の社告を巡って/再び柳田と民俗学を巡って/様々なコトバを巡って

    妖怪のなりたちについて

      水木しげるの登場/通俗的妖怪の完成/モノ化されるコト/匿名という手法/通俗的妖怪の展開/通俗的妖怪の戦略/通俗的妖怪の増殖/通俗的妖怪と怪獣/通俗的妖怪とは何か

    妖怪の形について

      受け継がれるスタイル/伝えられるもの、創られるもの/キャラという仕掛け/リアリティの罠/怪しくて、懐かしいカタチ

    講演録 通俗的妖怪と近代的怪異

      はじめに/ヌリカベを例にして―民俗学的妖怪/小松「妖怪学」の妖怪と
    通俗的妖怪/キャラとしての通俗的妖怪/民俗学的妖怪と小松「妖怪学」の妖怪/妖怪学から怪異学へ/通俗的妖怪と近代的怪異/妖怪は研究できるのか

    妖怪のことを考えているうちに

    書誌一覧
    妖怪年表

  • 帯表
    本当はみんな知っている。
    “妖怪”とは何なのか。
    誰もが知っているけれど、誰も語れなかった不思議のすべて。
    帯背
    “妖怪”に不思議なことなど何もない。

    本書は「怪」Vol.11~Vol.18、Vol.20~Vol.23に連載したものを再構成し、大幅に加筆いたしました。
    なお、「講演録 通俗的妖怪と近代的怪異」は「大阪大谷国文」第37号(平成十九年三月刊)に掲載されたものです。

  • 著者:京極夏彦
    装画:加藤円正(風眠庵)
    装丁:片岡忠彦

    【メモ】
    ・『怪』の連載が元。
    ・2011年に文庫化。〈https://booklog.jp/item/1/4043620101


    【目次】
    目次 [001-003]

    妖怪のことを考える前に 005
    “妖怪”ブームはあったのか 
    “妖怪”的なモノゴトとは何か 


    妖怪という言葉について 027
    学問の言葉を巡って 
    黄表紙を巡って 
    辞書を巡って 
    京の地誌を巡って 
    鳥山石燕と様々な百鬼夜行を巡って 
    井上圓了の妖怪学を巡って 
    江馬務の妖怪変化史を巡って 
    藤澤衛彦の風俗研究を巡って 
    柳田國男の妖怪談義な巡って 
    黎明期の民俗学を巡って 
    明治の雑誌などを巡って 
    郷土研究の社告を巡って 
    再び柳田と民俗学を巡って 
    様々なコトバを巡った後に 


    妖怪のなりたちについて 227
    水木しげるの登場 
    通俗的妖怪の完成 
    モノ化されるコト 
    匿名という手法 
    通俗的妖怪の展開 
    通俗的妖怪の戦略 
    通俗的妖怪の増殖 
    通俗的妖怪と怪獣 
    通俗的妖怪とは何か 


    妖怪の形について 351
    受け継がれるスタイル
    伝えられるもの、創られるもの
    キャラという仕掛け
    リアリティの罠
    怪しくて、懐かしいカタチ


    講義録 通俗的妖怪と近代的怪異 449
    はじめに
    ヌリカベを例にして――民俗学的妖怪
    小松「妖怪学」の妖怪と通俗的妖怪
    モノとコト――妖怪と怪異
    コナキジジを例にして――通俗的妖怪
    キャラとしての通俗的妖怪
    民俗学的妖怪と小松「妖怪学」の妖怪
    妖怪学から怪異学へ
    通俗的妖怪と近代的怪異
    妖怪は研究できるのか


    妖怪のことを考えているうちに(世界妖怪協会・全日本妖怪推進委員会幹事 京極夏彦) [504-509]

    書誌一覧 [510-516]
    妖怪年表 [517-526]


    【抜き書き】
    ・巻末の初出情報(527頁)。
    本書は「怪」Vol. 001〜Vol. 0018、Vol. 0020〜Vol. 0023に連載したものを再構成し、大幅に加筆いたしました。なお、「講演録 通俗的妖怪と近代的怪異」は「大阪大谷国文」第37号(平成十九年三月刊)に掲載されたものです。

  • 妖怪を学問として研究した本。
    現在、皆が妖怪と思い描くもののほとんどは水木しげる作で、見た目で判断されているそうでう。納得できます。

  • 妖怪の語源やら歴史やらとても読みやすくまとめてくれている印象。あの京極さんが書いてるってのも興味深いです。また雑誌の「怪」購読しようかなあ。
    京極さん、よっぽど水木先生好きなんだなー。半分ぐらい水木先生の功績を読めるので水木しげる好きにも良い本でした。

  • 妖怪とは何かという素朴な疑問に京極夏彦が考察を行っています。
    妖怪馬鹿、妖怪大談義、豆腐小僧双六道中と読んでから読むとすんなりと飲み込めました。京極氏の妖怪愛の集大成的な感じがします。

    妖怪好きなら押さえておきたい書籍が引用文献としてどんどんでてきますので、読了後は読みたい本が増えてしまいました。

  • 結構書いてあることが難しくて、なかなか読み進まないのよね・・・。
    面白いんだけど。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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