青春ブタ野郎はナイチンゲールの夢を見ない (電撃文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
4.19
  • (22)
  • (33)
  • (8)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 508
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784049129021

作品紹介・あらすじ

 突如咲太の目の前に現れた、霧島透子を名乗るミニスカサンタ。彼女が「思春期症候群をプレゼントした」という学生たちのなかには、咲太の中学時代のクラスメイト・赤城郁実がいて――。
 書き込んだ夢が正夢になる、と学生たちのSNSで話題の都市伝説『#夢見る』。郁実がそれを利用し、「正義の味方」として人助けしている姿を目撃した咲太は、彼女の身体がポルターガイストのような現象に襲われていることを知る。しかもその原因は過去の咲太にあるらしく……!?
「ねえ、梓川君。ひとつ勝負をしない?」
 鍵をかけていた過去の扉をあける、シリーズ第11弾。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 思春期症候群という不思議な現象に巻き込まれた高校生たちの物語の第11巻です。今回の主役は赤城郁美という咲太の中学時代の同級生で、正義感が強く人助けをすることが好きな女の子です。しかし、彼女は自分の過去に対して深い罪悪感を抱えており、それが思春期症候群として現れます。彼女は自分が本当にやりたいことやなりたいものが分からないまま、他人のために生きているような感じです。そんな彼女に咲太はどう接するのでしょうか?

    この本は、赤城郁美のキャラクターに焦点を当てていますが、他の登場人物も活躍します。特に麻衣さんと霧島透子という二人の女性が重要な役割を果たします。麻衣さんは咲太の恋人であり、思春期症候群に詳しい天才科学者です。霧島透子は思春期症候群の元凶を自称する謎の女性で、咲太に興味を持っています。この二人は赤城郁美の思春期症候群に関わっていくことになりますが、その過程で衝突したり協力したりします。この二人の関係は今後どうなるのでしょうか?

    この本は、思春期症候群というファンタジー要素を含みながらも、現実的なテーマにも触れています。例えば、自分探しや自己肯定感や他者理解などです。赤城郁美は自分が何者か分からないという悩みを抱えていますが、それは多くの若者に共通する問題だと思います。彼女は自分の過去に対して責任を感じていますが、それは本当に必要なことなのでしょうか?彼女は自分の幸せを見つけることができるのでしょうか?この本はそんな彼女の成長と変化を描いています。

    私はこの本を読んで楽しめました。赤城郁美のキャラクターに感情移入しましたし、咲太と麻衣さんのカップルも可愛かったです。霧島透子の正体や目的も気になりますし、次巻では麻衣さんに危機が迫るという展開も見逃せません。このシリーズはまだまだ面白くなりそうですね。

  • 新章が始まってからいくつか張られていた伏線の内、赤城郁実の話。
    これは、実に思春期症候群になりやすい性格と状況だよなあ。
    なりたかった理想の自分と現実の自分、それに納得できない時、人はどう折り合いを付けるのか?
    このテーマは例えば理央やのどかも被っているけれど、ここまで真っ正面なのは初めてだな。
    それにしても郁実の性格の難儀なこと。自分自身すら許せないとは。でもそれだからこそ、咲太にある意味救いを求めることが出来たのだ。本人は救いとは思ってなかったかもしれないけれど。
    そしてそれを放っておけないのも咲太らしい。
    後半、解決したと思ったあとに起こる延長戦の緊張感にはドキドキした。

    そして物語は今後あっちの世界も関係して複雑になっていくのだろうか?

    それにしても咲太が理央に言われる「名探偵が行く先々で事件に遭遇する」発言は笑った。メタか!

    さて次は霧島透子回か? ランドセル麻衣さん回? それとも? 楽しみだ

  • 第二部になってから咲太の内面に注目したエピソードが多いね。
    それだけ第一部において咲太という主人公は奇々怪々な状態に置かれたヒロインたちを救う存在として機能していた。一方でヒロインを救う必然性が減り思春期もいい加減卒業しなきゃな、という段になってくると咲太が置き去りにしてきた過去の問題が顔を見せる構図になっているように感じられる

    この巻ではいつか登場した赤城郁実がメインとなると共に中学時代の咲太が学校という空気に絶望するきっかけとなったエピソードに再注目されているね
    中学時代のあれやこれやについて、咲太は全てを納得出来たわけではないのだろうけど、それでも高校に入ってから麻衣と出逢って翔子を救おうと藻掻いて他にも何度も足掻いて……
    そうした日々の中で咲太は中学時代の絶望とまあまあ付き合っていく方法のきっかけを見つけられた。でも、肝心の中学時代の同窓達は……というのがこの巻の主題となっているね


    この巻にてメインとなる赤城育実だけど、その本質や動機がここまで見通せない人物だとは思わなかったというのが正直なところ
    『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』にて登場した際は咲太に淡い思いを抱く少女で、前巻ではよく判らない慈善活動をしているという印象程度しか無かった
    けれど、郁実が思春期症候群を発症しているかも知れないという情報を切り口に見えてきたのは郁実の正義感ばかり。これまで思春期症候群を発症した少女たちとも症候群に巻き込まれた少女たちのどれとも印象が異なる、という点を強く抱くような女性だった
    何というか、自分を強く持っているというか迷いがないというか…

    正義感に縋り付いている面は危うく見えるものの思春期症候群を進んで発症するような人間には見えなかった郁実。なら彼女の問題はどこに有るのかと言えば……
    ここで前述の中学時代の問題が関わってくる構図は何とも因縁めいているね。

    咲太はもう乗り越えてしまった問題。けれど、あの当時、教室に居た者達からすれば青春を台無しにされた乗り越えようがない問題
    陰湿ないじめと思春期症候群によって捻じれに捻れてしまった中学時代。それは強い正義感を持つ郁実にとって悔いとなって残り続ける1ページだったのだろうなぁ…

    解決はしないけれど、共存の道は見つけられた今回の異変。これまでも示されてきたように自分の中の問題なんて、誰かに助けて貰うなんてものではなくて、自分で付き合い方を見つけていかなければならない代物なのだろうね


    結局この巻では解決されなかったいくつもの問題。ミニスカサンタに『#夢見る』、小さな麻衣
    この巻で改めて『もうひとつの可能性の世界』がピックアップされたことを考えると霧島透子の正体もその関連かと思いそうになるけれど…
    それと咲太が新たに向き合わなければならない問題とどう関わってくるのだろうか?

  • 久々の咲太と佑真と理央の会話に和む(この三人には一生友達やっていてほしい)。翔子が元気そうで嬉しい(これからどんどん成長して翔子さんに似ていくと思うとじーんとくる)。麻衣がほぼ「梓川家の嫁」状態で、もう咲太共々早く爆発してほしい。郁実の正体に驚く(『ランドセルガール』の内容がここでつながるとは思わなかった)。咲太が中学時代を清算するには(高校生編では早すぎるから)大学生編が必要だったのかな。「向こうの世界」の咲太からの伝言が不穏すぎる。

  • 咲太の前に現れたミニスカサンタの女性・霧島透子は、自分が思春期症候群を学生たちにプレゼントしたと告げる。その学生の一人、咲太の中学の同級生・赤城郁実はポルターガイスト現象に悩まされていて…。過去の後悔を引きずる郁実とそれを断ち切っている咲太との対比が素晴らしい。それにしても、透子は一体何者なのだろう…。謎が深まりますが「思春期症候群」の核心に近づきつつあるようにも思います。次回は麻衣に焦点を当てた回になるのでしょうか。続きが大いに気になります。

  • 今回はこれまでと少し違った角度から思春期症候群とふれあうことができました。咲太達も大学生になりましたもんね。
    過去の伏線もしっかり回収してくれて楽しかったです。

  • 大学編2冊目。
    前々から登場していた赤城郁美がメインで登場。
    そりゃ見てる側だって色々思う事はありますよね…
    表面上はどう装おうが心の中は人それぞれですから

  • もう一人の自分がいる世界はどんなんだろう?
    あの時あんなことをやっていたら?
    平行世界はどこにもあるのかもしれない
    少しだけの変化になる世界と
    大きく全く違う世界になる場合と
    自分はいったい何人いるんだろう?
    それぞれの自分がどれくらいいるのか
    それぞれの自分に気づけるのか?
    自分だけが気づいている、
    誰かに気づいてもらえるのか、
    目指す自分と今の自分がどこにいるのか。
    どこを目指そうというのか
    どうしようもない出来事が何度も何度も
    忘れられない
    忘れようとしても何かが引っかかってしまうなかで
    日常をどう大切にするか
    日常を積み重ねる中で
    薄まって
    際立って
    一気には変わらないからこそ、
    少しずつ
    自分と大切な人との生活を続ける
    置き換わっていることに気づく
    慌てない
    焦らない
    誰かが見つけてくれるから

  • これで一つの謎が解けましたが、これまでの伏線が一気に解けるのか?という終わり方。ヒロインが今までのヒロイン達より入れ込みがないからそこは落ちるけど、麻衣さんと咲太君がいちゃこらしたり、これまでのヒロインがちょこちょこ出てきたりしてたので、まあ、許すか。
    青ブタはラノベを読んだこと無い人に一番オススメしたいシリーズです。

  • いつ読んでもこのシリーズは心に染み込む内容と文面。
    今回もこの世界に引き込まれ、不思議だけれど、どこか切ない気持ちになる。
    一難去ってまた一難。
    前からの伏線も残したまま……
    鴨志田先生、引っ張るのがお上手!

全14件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1978年生まれ、神奈川県出身の作家。代表作は『さくら荘のペットな彼女』、『青春ブタ野郎』シリーズなど。

「2023年 『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

鴨志田一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×