- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784049141641
作品紹介・あらすじ
紅玉いづきデビュー15周年記念・3ヶ月連続刊行【第3弾】
学園祭の真っ最中、恋人に別れを告げようとしている橘ほたる。彼女に呼び出された梶くん。憧れ、戸惑い、すれ違い。恋の最後の15秒に交差する二人の想い――『15秒のターン』
大学受験を控えているにも関わらず、趣味の漫画執筆に夢中な19歳で浪人生の須和子。中途半端な自分の気持ちに落とし前をつけようとして――『2Bの黒髪』
ソシャゲという名の虚無にお金も時間もすべてを投じたフリーターのチョコとあめめ。1LDKアパートで築いた女二人の確かな絆――『戦場にも朝が来る』
書き下ろし『この列車は楽園ゆき』『15年目の遠回り』の2篇も収録。
感想・レビュー・書評
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『戦場にも朝が来る』が一番好き。たかがソシャゲのランキングイベントで一位を取る、そのために課金する、っていう、傍から見たら馬鹿丸出しの話。作中ですら、世界で一番空虚で馬鹿な戦争と表されていて、その気持ちはよくよく理解できるのだけれど、チョコの『せっかく、あなたが一番をくれたのに』の一言でやられてしまった。例え部外者から見てしょうもない、些細なことだったとしても、そこに意味が在ってしまうのが人々の感情だし、文学だよなと、なんか負けた気分になった。最後まで息が苦しくなるような、いい一本だった。
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以下ネタバレ含む注意。
「15秒のターン」
ああもう「別れよう」って思って、いや、思うしかなくて、身を引くみたいな自分をイメージして、でも、そんな決意が一瞬で変わってしまう出来事。
分かっていないことから、分かりたいことへの変化がスローモーションに詰め込まれていて、なんだかドキドキした。
「2Bの黒髪」
自分が考えていることを重ねながら、でも自分が満たせないものを満たしてくれる「主人公」。
浪人中の須和子がなんとなく描き続けているウェブ漫画は、彼女の一つの居場所だった。
けれど、家族は彼女の漫画を丸めてゴミ箱に捨ててしまう。
そうして彼女は「ハルカ」を終わらせて、須和子としての現実を全うする。
こんな、あらすじだけでは伝わらない、須和子の機微を、ぜひ文章に触れて味わって欲しい。
文章や漫画を書いていた人にとっては、分かるーって悶える人がいると思う。
自分で自分の世界に、区切りをつけてしまうことの、なんだか寂しいような気持ちが。
「この列車は楽園ゆき」
自分を大切にすることを、伝え続けてくれる存在って稀有なものだと思う。
友情なのか、恋愛なのか、分からなくて、曖昧で、でもずっと見放さないでいてくれる、高根くんみたいな存在が、もっとありふれたものであればいいのに。 -
紅玉いづきさんの「15秒のターン」、これはフアンタジーじゃなくて現代が舞台の短編集なのだけれど、なんというか私たちが普段なんとも思わないような気持ちや感覚や思い出を掬って大事に物語にしていると思った。
1番好きなのは「戦場にも朝が来る」っていう女の子同士の絆のお話でした。 -
うーん、私には短編集より長編の方が合うかもしれない。これはこれですごく面白かったけど、長編の方が好きだと短編集は物足りないかも?
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作者がデビューしてから15周年ということは、自分も読者15年目ということか…と考えながら読みました。
最初に読んだのがそれこそミミズクだったので、自分もずいぶん大人になったなーと思い、書かれている少女少年たちともずいぶん年が離れてしまって、あの年代のキラキラした痛々しい感情には共感ができなくなっていて、悲しいというか拍子抜けしてしまった。
それでも作者の愛とも恋とも形容しがたい感情の描写はとても好きで、「この列車は楽園ゆき」は心に残った。 -
紅玉いづきさんの全5話構成の少女+αの短編集。
「15秒のターン」:前後半15秒の高校生カップルの心の機微。悩んで迷って、踏ん切りつけて次に進む。感情の疾走感が心地良かった。
「2Bの黒髪」:浪人生そのものを見事にまとめた話。やりたくないけどやらなきゃ、でも息抜きしなきゃ頑張れない。それが人からしたらはなんの価値がなくてもそれで自分は救われる。
「戦場にも朝は来る」:共依存、1人が覚めれば一人きり。覚めた方の罪悪感、残されたものの孤独感。
「この列車は楽園ゆき」:リアル中二病少女とそれを危惧する少年。頭にそれぞれが浮かぶならそれはもう恋だと思う。
「15年目の遠回り」:妹が15秒で決着をつけ、姉は15年という月日をかける時間差の対比。気づくのにかかった時間が人によってこんなに違う。
紅玉いづきさんが書く少女たちに共感して涙していた私。今ではリアル中二病が多いと感じてしまう程度に年をとった。それが良いことなのか悪いことかは分からないが、読み終わった後のあの純粋な気持ちがなくなったのは寂しいと感じる。 -
短編集5編
瑞々しく悩み多い青春時代。みんなキラキラしていて良かったけれど、1番好きなのは「この列車は楽園ゆき」 -
ランキングボーナスのために走っていたソシャカスだったことがあるので、あまりにも胸に痛かった。ランキングが近い人間の生活を把握し始めるんだよね、本当に。虚無でもいい、誰かとつながっていたい、その道具としてのソシャゲがリアルだった。