ナ-ジャ希望の村: チェルノブイリ、いのちの大地 (学研のノンフィクション)

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  • Amazon.co.jp ・本 (119ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784052012440

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  • チェルノブイリ原発事故、人の幸せ暮らしとは、改めて考えさせられる

  • チェルノブイリ原発事故で汚染され,閉鎖された村の少女が,美しい村,やさしい村人を想いながら,いのちの豊かさとは何かと問う。 (日本児童図書出版協会)

    「この村は豊かだろう。春はいっぱい花が咲き小鳥がさえずり、秋には白樺が黄金色になるのだから」
    「みんな同じ命を持っている仲間。そのひとつひとつの命はすべての命につながっているんだよ。豊かっていうことは、命あるみんなが気持ちよく生きられることなんだよ」
    (ナージャのおばあさんのはなし より)

  •  1986年、ウクライナで起きたチェルノブイリ原発事故。
    この事故で影響が出たのは、ウクライナ国内だけではなかった。
    チェルノブイリはウクライナの北の国境に近い場所にある都市。
    ウクライナの北に位置するベラルーシ共和国でも、放射線汚染の被害をうけた。
    事故当時、100種類もの大量の放射線物質が、綺麗な自然が広がる地に降っていた。
    ベラルーシの汚染地域の住民に知らされたのは数ヶ月後のこと。

     地図から村の名前が消され、立ち入り禁止地区になった「ドゥヂチ村」が舞台になっている。
    ドゥヂチ村はウクライナの2番目に大きいゴメリ市から約100km。
    この話が書かれた時に、村で暮らしていたのはたったの13人。
    村の最年少で事故後に生まれたナージャという女の子の日々の暮らしが書かれている。

     家族のこと、村の人たちのこと、引越しをした後のこと、農作物のこと、寒い冬の暮らしのことなど。
    特に、ドゥヂチ村で暮らす人たちの人間模様は詳しく書かれている。
    書籍の終わりの「ゆたかさということ」という話の中には、原子力発電所の必要性について書かれているので、ここは必読してほしい。

     印象的な文章を「あとがき」から引用します。
    「60億をこえた地球の人間たちの中で、豊かさの恩恵を受けているのは、わたしたち日本人をはじめ、ほんのごく一部なのです。そしてその一部の人たちの豊かさが、逆に人間本来の豊かさをこわし、多くの人たちを住みにくくさせてしまったのです。」

  • メモ

    ◯p19
    人間は毎日、たくさんのいのちあるものを食べて行きているんだよ。牛、ぶた、にわとり、さかな、それに野菜やくだもの、だって、みんないのちがあるだろう。ナージャの好きなかぼちゃの種もにわとりの卵もそうだよ。でも、人間だけは、ほかの生き物に食べられることがない。オリガおばさんはぶたのいのちに感謝しているから、かわいがるんだ。ナージャもぶたのお肉が食事にでたら、残さず食べてあげるんだよ。それがぶたに感謝するってことなんだ。かわいがるってことなんだよ。

    福島原発の問題を考えさせられる。
    原子力発電の恩恵をうけてない人にも大きな影響を与える。
    一生、ふるさとに帰れない人たちの気持ちが伝わってくる。
    日本の今後。

  • 東日本大震災以降、原発についてもっと知りたい気持ちが高まっていました。
    まずは前から読みたいと思っていた児童書作品から。

    主人公は1986年に起こったチェルノブイリ原子力発電所の事故後に生まれた少女ナージャ。
    事故はお隣のウクライナ共和国で起こったんですが、ナージャのいるベラルーシ共和国のドゥヂチ村まで汚染は広がってしまいました。
    政府から引っ越す命令が来たのは事故から5年後でナージャ一家が引っ越したのは1996年。
    美しい自然は事故以前と何も変わらないのに放射能に汚染されてしまった村。

    穏やかな日々の暮らしが突然の原発事故で一変してしまう・・・現在の福島県の状況が重なります。
    ナージャの言葉からは村での楽しかった思い出が語られるのがほとんどですが、だからこそ原発の話がふっと出てくるたびに苦しい気持ちになりました。

    >「草木も、生きものも、人間だって、生まれたところで育つのがいちばんいいんだよ」

    >「みんな人間と同じいのちをもっている仲間。そのひとつひとつのいのちは、すべてのいのちにつながっているんだよ。ゆたかっていうことは、いのちあるみんなが気もちよく生きられることなんだよ」

    チャイコフスカヤおばあさんの言葉が心に沁みます。

    >にわとりだって、ぶただって、虫だって、りんごだって、いのちあるものみんなと気もちよくすごせることが、原子力でたくさん電気をつくって、便利なものをふやすことよりも、ゆたかだと思うのです。

    ついつい便利さを追い求めてしまうけれど・・・このナージャの言葉がきっと本当の豊かさ。

    ナージャの正式な名前はナジェージダ。
    ロシア語で希望という意味だそう。
    希望を持ってこれからの日本や世界が「いのちあるみんなが気もちよく生きられる」方向に変わっていくことを強く望みます。

    映画「ナージャの村」も見てみたくなりました。

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著者プロフィール

東京生まれ。1968年「炭鉱〈ヤマ〉」で第5回太陽賞受賞。1995年 写真集「無限抱擁」で日本写真協会賞年度賞、写真の会賞を受賞。1998年「ナージャの村」で第17回土門拳賞受賞。同名の初監督ドキュメンタリー映画作品は文化庁優秀映画作品賞を受賞したのをはじめ、海外でも高い評価を受ける。2002年映画2作目の「アレクセイと泉」で第52回ベルリン国際映画祭ベルリナー新聞賞及び国際シネクラブ賞ほか受賞。2013年写真集「屠場〈とば〉」「上野駅の幕間(新装改訂版)」で日本写真協会賞年度賞を受賞。主な写真集に「サーカスの時間」(河出書房新社)、「上野駅の幕間」(平凡社)「無限抱擁」(リトル・モア)、「ナージャの村」(冬青社)、「アレクセイと泉」(小学館)、「バオバブの記憶」(平凡社)、「昭和藝能東西」(オフィスエム)、「屠場〈とば〉」(平凡社)などがある。

「2015年 『炭鉱』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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