論集・日本文化 1 (講談社現代新書 278)

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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061156784

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  • 宦官は家畜の去勢をする大陸の遊牧民族の文化から来ているのではないか。宦官は古代ペルシア、ビザンツ、イスラム諸国で見られた。西欧でも近世まで合唱隊の少年に去勢手術が施された。エリザベス1時代のロンドンでは私刑としての去勢が行われた。中国・朝鮮でも宦官がいた。一方、日本は宦官制度を受け入れなかった。韓国の露店には角の容器が売られている。牧畜民族は先史から角型の容器を使用していた。p.17 石田英一郎

    英ではアングロ・サクソン文化だったところに、ラテン文化・封建制が外部からもたらされた。ただ、それは征服・侵略であり、異民族(ノルマン人)と共に入ってくる。しかし日本では征服された歴史がなく、異民族の侵入と関係なく、外国の物や思想だけが抽象化された形で入ってきた。p.30 増田義郎

    イギリス人の模倣文化。チョーサーなど中世文学はみなイタリア文学のアイデアを借りたもの。エリザベス朝のシェイクスピアも大体がイタリアから祖型を借りたもの。演劇の形式もスペイン演劇に学んでいる。18世紀のリアリズム小説もスペインから形を借りている。19世紀以後の学問でも、理論的な体系はたいてい外国から借りてきている。デュルケーム→ラドクリフ=ブラウン、ウェーバー→トーニー、シュペングラー→トインビー、ヘーゲル→ブラッドレー。p.49 増田義郎

    ヨーロッパ・西アジア・中国では、貴族が文化の担い手で文化を創造するエネルギーをもった。一方、農民は家畜のような存在だった。しかし日本では、貴族・農民が一体となって文化の担い手になっている。中国やヨーロッパには農民文化がないが、日本では農民などの庶民がむしろ国民の主体であり、上層と下層のあいだに常に文化的な交流がある。ヨーロッパでは16世紀のブリューゲルあたりから農民が美術に出てくるが、日本ではそれより早くから絵巻物に堂々と農民が出てくる。p.55 江上波男

    日本人は古事記や日本書紀を生み出し、自己を中心にした1つの世界を作った。しかし朝鮮には古事記や日本書紀にあたるものはなく、中国とつながってしまっている。p.64 江上波男

    重商主義的な秀吉側(西日本)が、重農主義的な徳川側(東日本)に関ヶ原で勝っていれば、貿易・商業が発展し、日本はもう少し早く近代化したかもしれない。明治維新では、西日本(薩長土肥)が東日本を打倒することにより、商業生産の重視(資本主義)に移行した。p.178 沢寿次

    ******
    拝外と排外。p.23

  • 「論集・日本文化」シリーズの第1弾。梅棹忠夫、多田道太郎を中心に、京大人文研の学者たちが日本文化について語った論考や座談会をまとめた本です。

    人類学や文明史の観点から日本文化の特色を論じたり、現代の日本が直面している問題についての見通しを語ったりしています。

    いずれも非常にスケールの大きな議論で、おもしろく感じる一方、どれほど実証的な裏づけがあるのかという疑問も感じます。

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著者プロフィール

1920年、京都府生まれ。民族学、比較文明学。理学博士。京都大学人文科学研究所教授を経て、国立民族学博物館の初代館長に。文化勲章受章。『文明の生態史観』『情報の文明学』『知的生産の技術』など著書多数。

「2023年 『ゴビ砂漠探検記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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