- Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061313835
作品紹介・あらすじ
万葉学の第一人者が多年の研究の成果を結集した第2巻。
白鳳官人の旅情の歌や無名者の生活歌、天平の人々が四季折々に詠った杼情を、あますところなく汲みあげる。
原典との照応がすぐにできるよう、原文、読み下し文、全訳、語注をそろえる。
巻6から巻10までの1500首に及ぶ和歌を収録し鑑賞する。
感想・レビュー・書評
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面白かった歌をいくつかメモ。
979 わが背子が着る衣薄し佐保風はいたくな吹きそ家に至るまで
→恋人を思いやる素直な感情。
1412 わが背子を何処行かめとさき竹の背向(そがひ)に寝しく今し悔しも
→挽歌。いつまでも続く日々と思って素っ気なく過ごしてしまった後悔は、現代人と変わらないかなしみ。
1799 玉津島磯の浦廻(うらみ)の真砂にもにほひて行かな妹が触れけむ
→すごい。この巻中で一番ぐっと来た恋歌。特別に珍しい表現は使っていないのだが、何だろう。
1011 わが屋戸の梅咲きたりと告げやらば来といふに似たり散りぬともよし
→ツンデレのような風流のような。詞書と注によれば「古体」の歌であって、民間に古くから口承された発想かという。
1990 われこそは憎くもあらめわが屋前の花橘を見には来じとや
→ひとひねりしたお誘い。1011とも似ているが、第一・二句に可愛くすねてみせる感じがある。
1022 父君に われは愛子ぞ 母刀自に われは愛子ぞ 参上る 八十氏人の 手向する 恐の坂に 幣奉り われはぞ追る 遠き土佐道を
→不義の恋で土佐に流された石上乙麿の歌。
失意と不安の旅立ちにあって「自分は両親にとって大事な子だ」と主張する発想が印象的だった。悲しみなのか、ある種のまじないなのか。
1285 春日すら田に立ち疲る君はかなしも 若草の孋無き君が田に立ち疲る
→孋は女へんに麗、読みはツマ。注によればモテない男をからかった歌とのこと。
1460 戯奴(わけ)がためわが手もすまに春の野に抜ける茅花そ食して肥えませ
1462 わが君に戯奴は恋ふらし賜りたる茅花を喫めどいや痩せに痩す
→紀郎女と大伴家持の贈答歌。ワケは若者の意。女性の方が上位にある関係でやりとりされた冗談が面白い。
2065 足玉も手珠もゆらに織る機を君が御衣(みけし)に縫ひ堪へむかも
→アクセサリーを身に着ける文化が廃れたのは、日本服飾史上の未解決の謎だと以前ネットで読んだ。
この歌に限らず手足に色々着ける歌はあり、少なくとも万葉の頃までは一般的だったのだと分かる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
齋藤孝著『大人のための書く全技術』40冊―11
こうやって日本語がつくり上げられてきて、その結果今の私たちはこういう言葉を使っているのだ、ということがわかるだけでも、非常に価値の高い読書になる。 -
明日香などを舞台とした作品です。
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巻6から巻10までの1500首
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浦野所有。
→10/09/04 田口さんレンタル
→12/10/20 返却
文庫第一巻に引き続き、原著の巻六~巻十のすべての歌を収録しています。
をとつひも昨日も今日も見つれども
明日さへ見まく欲しき君かも [第1014首]
<訳>一昨日も昨日も今日も見ているのに、
そのうえに明日までも見たいあなたよ。
…こんな感情、もう忘れかけていましたよ。悲しい。
この夕(ゆうへ)降り来る雨は彦星の
早漕ぐ船の櫂(かい)のちりかも [第2052首]
<訳>この夕に降ってくる雨は、彦星が
急いで漕ぐ船の櫂のしずくだなあ。
…ロマンチックすぎます。万葉集、最高ですね!!