主人公のナオには、死んでしまった家族が見えた。それは幽霊なのかもしれないし、もしかしたら彼の妄想かも知れない。しかし、彼はそれに臆したり、怯えたりせず、ただ受け入れる。そうして家族と、従姉妹のアイと、絵を描きながら日々を過ごしていく。淡々とした語り口で、全て達観したように、物事を受け止めている。でも本当は辛かったのかもしれないと思う。死んでしまったはずなのに、家族が見える。それは彼が家族を愛していたからではないか? 死んでしまったことを受け入れることが出来ずに、自分でそれを作り出してしまったのではないだろうか。彼は小さい頃、死ぬことが怖くて、空想の友達を作り上げた。それと同じで、家族を甦らせてしまったのだと僕は考える。彼は世界の内側へ内側へどんどん沈んでいく。それが美しくて、儚い。奇麗で、脆い。それはまるで、蝶のよう。