食卓にあがった死の灰 (講談社現代新書)

  • 講談社 (1990年2月発売)
4.00
  • (2)
  • (0)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
  • 本棚登録 :14
  • レビュー :2
  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061489844

作品紹介

史上最悪のチェルノブイリ事故は、深刻な汚染を、再び世界中にまき散している。食肉、乳製品、パスタ類、香辛料、チョコレート…。放射性物質セシウムによる食品汚染だ。輸入チェック体制や原発事故への備えの実態、市民グループの測定データをとおして、食生活のあり方、脱原発への道をさぐる。

食卓にあがった死の灰 (講談社現代新書)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • セシウムの汚染牛の広がりを見せ、今何を食べたらいいのか迷います。

    チェルノブイリ事故後のヨーロッパ各国の対応、食の汚染の広がりは、今後の日本の食生活を考える上でもとても参考になります。

    チャルノブイリ事故後のドイツ政府の対応を日本人の目から描いた『ベルリンからの手紙』(八月書館)もお薦めです。

  • 【東日本大震災関連・その⑩】
    (2011.07.11読了)(2009.07.22購入)
    積読の山を移動していた時に見つけた本です。購入したことをすっかり忘れていました。見つけた時にいま読むべき本だと思い、読んでみました。
    福島原発の事故で、放射物質がまき散らされ、食品の放射能による汚染が問題になっています。この本は、チェルノブイリ原発事故の後の周りの国の対応、国による食品の安全基準の違い、日本の対応などについて書かれています。
    現在の日本の安全基準などは、本とは別に調べないといけませんが、最終的には、国の基準は、物の調達の可能性と経済的な部分との兼ね合いで決めざるを得ない面があるので、あくまで各人は、参考値として考えることになるでしょう。放射能は人体に有害なことは確かなので、それぞれ自分の懐具合と将来的な障害の可能性の許容量を勘案して対応せざるを得ないでしょう。
    そのためにも、福島原発の放射能汚染の状況と今後の見通しの下に、放射能の放出が続くようであれば、各食品の放射能汚染状況の細かい数値の発表が欠かせないことになるでしょう。
    この本は、2011年4月に「食卓にあがった放射能」七つ森書館刊で新装版が出ています。

    章立ては以下の通りです。
    1.食品の放射能汚染とは
    2.チェルノブイリの放射能―その教訓
    3.食卓にあがった放射能
    4.輸入食品と放射能汚染
    5.日本で原発事故が起こったら
    6.放射能にどう備えるか

    ●チェルノブイリ原発事故(6頁)
    1986年4月26日にソ連のウクライナ共和国で起こったチェルノブイリ原発事故は、科学技術や環境といった面はもとより、政治、経済、文化などさまざまな側面で世界に巨大なインパクトを与え、世界中の人々を震撼せしめた。なかでも、放出された放射能によって生じた食料品の汚染は、それが人々の毎日の食生活に関係するだけに、これまでに原発とか放射能とか聞いただけで避けて通ろうとしてきた人々をも直撃した。
    ●暫定的制限値(14頁)
    食品1キロあたり370ベクレルという暫定的な制限値を設けた。セシウムの放射能がこの値を超えたものは、食品衛生法第4条違反に相当するとして輸入を認めないという方針を決めた。(1986年11月)
    ●晩発性障害(28頁)
    晩発性障害の最も典型的なものには、白血病とがんがあるが、白血病の場合で早くて被爆後約4.5年くらいから、他のがんでは10年くらいから現れ出すのが一般的だ。その他に、白内障、不妊、慢性皮膚炎、加齢現象なども、晩発性の障害と考えられる。
    身体の晩発障害と同じように、遅れて現れる影響に遺伝的影響がある。放射線が生殖細胞の遺伝子や染色体に異常を与えることで起こされる先天性の異常である。
    ●放射線被爆に対する考え方(30頁)
    放射線の被曝に対する基本的な考え方としては、「このくらいは浴びてもよい」という態度は好ましくなく、「避けられる被爆は可能な限り避ける」というのが正しい。
    ●ヨウ素の汚染(45頁)
    ヨウ素で汚染した牧草を牛が食べた場合、すぐに牛乳の汚染となって現れることが知られている。人間が飲んだ牛乳中のヨウ素はすぐに甲状腺に集まり、そこに大きな被害を与える。特に乳幼児たちは、一般に大量の牛乳を飲む、しかも、乳幼児の甲状腺は小さく、甲状腺内の濃度が高くなるため、大人よりはるかに大きな被曝となる。ヨウ素は子供たちにとって、特に要注意だ。
    ●事故情報の伝達(58頁)
    いちばん最初にすべきことで最も大切なことは、事故情報やそれに対しての基本的な備え方を、市民に的確に伝えることだ。「不用意に伝えるとパニックになる」といって、情報公開を渋る政府は多い。
    ●ソ連以外の政府の対応(59頁)
    各国はそれなりに事故情報を流しているが、そのほとんどが、「わが国への放射能の影響はたいしたことはない」と広報することで、国民を安心させようという趣旨のものだ。ところが実際には、軽視できないような汚染がいたるところで生じていた。
    最もひどかったのはフランスで、ここでは五月初めに南東部を中心に強い放射能の降下があったが、政府は「気圧配置から見てフランスには放射能はこない」といい続けた。人々が知らされたときには、すでに汚染は相当に進行していたのである。
    ●植物の汚染(74頁)
    地表へと放射能が降下してくると、まず問題になるのが植物・農作物の汚染である。
    ひとつは、降下する放射能が直接葉などに降り積り残存するもの。
    もう一つは、根からの吸収によるもの。
    ●動物の汚染(76頁)
    汚染した土地に棲み、汚れた水を飲み、汚れた草や実を大量に食べる動物は、一般に植物以上に汚染を体内に蓄積することになる。
    牧場で飼育されるウシやヒツジたちも、野生動物たちと基本的には変わらなかった。
    ●基準値370ベクレル(128頁)
    日本の暫定基準値は、1キログラムまたは1リットルあたり370ベクレルである。この基準値を決めた理由として、1986年10月、「食品中の放射能に関する検討会」では、「一般人の年間被爆許容線量は5ミリシーベルト(500ミリレム)、その約三分の一を輸入食品からの放射能に使えるとみて計算。国民一人当たりの一日の食品摂取量を1.4キログラム、輸入食品の割合を35%、食品中のセシウムからの被爆割合を約66%と仮定すると370ベクレルになる」と説明している。
    ところが1989年4月から、一般人の年間許容被ばく線量がこれまでの五分の一、年間1ミリシーベルトに切り下げられた。となると当然、370ベクレルの基準値のほうも五分の一になる、と考えたくなるところだが、厚生省は370ベクレルのまま据え置いた。
    ●日本の避難対象地域(159頁)
    チェルノブイリ事故では、300キロメートルの遠方まで避難範囲が広がった。日本国内の各原発から300キロの円を描いていくと、日本列島は奄美―八重山の琉球弧を除いてみんなその円の中に入る。チェルノブイリの経験を踏まえれば、日本のどこに住む人も、原発事故の避難対象地域に住んでいるといっても過言ではあるまい。
    (東京は、東海から110キロメートルです。)

    ☆関連図書(既読)
    「マリー・キュリーが考えたこと」高木仁三郎著、岩波ジュニア新書、1992.02.20
    「原子力神話からの解放」高木仁三郎著、光文社、2000.08.30
    「原発事故はなぜくりかえすのか」高木仁三郎著、岩波新書、2000.12.20
    「ぼくとチェルノブイリのこどもたちの5年間」菅谷昭著、ポプラ社、2001.05.
    「朽ちていった命」岩本裕著、新潮文庫、2006.10.01
    「原発と日本の未来」吉岡斉著、岩波ブックレット、2011.02.08
    (2011年7月24日・記)

全2件中 1 - 2件を表示

高木仁三郎の作品

食卓にあがった死の灰 (講談社現代新書)はこんな本です

ツイートする