ギリシア・ローマの盛衰 古典古代の市民たち (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061590809

作品紹介・あらすじ

二千年以上も昔の地中海世界に、民主政や共和政が成立し、香り高い文化が花開いたのはなぜか。その担い手となったのは、ギリシアやローマの都市国家に生れた平等な土地所有者たる古代市民だった。しかし、空前の大帝国を誇ったローマにも、大土地有制の普及と市民の経済的衰退、独立精神の喪失等により滅亡の時が訪れる。現代の市民社会にも多大な示唆に富む古代文明の栄光と暗転を描いた力作。

感想・レビュー・書評

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  •  私、より効率的に短時間で大学受験に合格するために世界史を勉強しませんでした。
     学部卒業から20年以上たち、コンプレックス?であった世界史を今更ながらに勉強しております。

     そのなかで本書を購入しました。古代ローマ・ギリシアは細切れに勉強すると流れがつかめないので本で流れをつかもうという魂胆です。
     結論を言います。おっさんがやる気を出して読んだのですが、すみません、眠くなります。

     何だろう、良くも悪くもきっと描写が細かいのです泣。
     ただ、古代ギリシア・ローマをしっかり勉強したい方にはきっとその行間から滲み出るエッセンスに狂喜するのではないかとおもいます。というのも、本書は歴史の本ではありますが、誤解を恐れずに言えば、ヘレニズムとはなにか、あるいはローマ人気質とは何かということへの答えなのです。そうした人間への興味という点では、共感するところ大でした。

     さて、そんな中でも、私が面白いと思ったのは第5章”古典古代の市民たち”です。印象的な話として生児遺棄の話があります。曰く、五体満足ではない子、育てるに値しない子は捨てられる、と。こうして死んだ者を回収して片づけるのは奴隷の仕事であり、また、死せずとも拾われて奴隷として育てられることもあったそうです。女性も男性の下位に置かれ、少年愛も盛んだったようです。

     古代ギリシアと言えば、人間賛美的なイメージがありました(もう素人の完全なるイメージ先行ですが)。しかし、古代ギリシアで賛美されたのは、純粋なもの、美しいもの、完全なもので、その範疇からはみ出るものは、意外と重きを置かれなかったのかもしれません。このような印象は、プラトンのイデア論を想起させますね。現代はむしろこれとは対極で、あらゆる価値を相対的に認めるような世の中かと思います。もし現代に、プラトンと相田みつを(「にんげんだもの」)が生きていたら、きっと大ゲンカするのでは、とくだらない夢想をしました。

    <キリスト教の歴史をささっと学びたい方は第10章を>
     もう一つ、個人的に気に入ったのは第10章”新約聖書の世界”です。キリスト教の歴史や世界史の中での位置についてはこうして一章割いて書いてくれているので、よく理解できます。属州ユダヤがローマからの圧政であえぐ中で次のメシアを求めていたとか、使途パウロの伝道の旅が図解で載っていたりとか、そういう箇所は面白かったです。

    <おわりに>
     初版1991年と書かれたのも古く、扱う内容はもっと古い。そうした中で、書き方を含めややとっつきづらさはあります。ただ、紀元前の古代ギリシアや古代ローマに興味がある方には読んでおいて損はないと思います。なかなかの情報量です。他方、高校生や浪人生が理解の足しに読むとすると余計に混乱するかもなあと思いました(効率的な知識の吸収という意味で)。ですので、お時間に余裕のあるかた、あるいは興味のあるかたにお勧めしたいところです。

  • ギリシア・ローマの通史というよりは本書の副題(元々は原題)である「古典古代の市民たち」というタイトルが、本書の特徴をよく表している。

    古代ギリシア・ローマの発展に通底する要素を、「市民」としての人々の意識、それに基づく社会・政治体制に求め、古代ローマ帝国崩壊の過程を様々な要因からこの「市民」意識が変容していったことに求める。

    曰く、第一期を前146年までを「自ら治め自ら守る市民の共同体」の時代とする。第二期を前146年から西暦235年まで、すなわちローマ帝国の拡大期であり同時に市民団の自治と自由が崩壊していく過程とする。第三期がそれ以降の時期で、この時期にはもはや能動的な「市民」は存在せず「臣民」たちの時代とし、古典古代の価値観が崩壊しキリスト教が価値観の柱に取って代わる時期と捉える。

    人々の意識と政治体制、それらの質の変容が相互に影響を与え、時代が変化していったという本書の視点は大変参考になる。
    なぜローマは共和政から帝政に変容したのか、なぜ帝政ローマはあれほど勢力を拡大できたのに、その後衰退していったのか。
    それらの理由を解き明かす一つの視点として、じっくり内容を自分のものにしていきたいと思える一冊だ。

  • 名著。日本にあってこの様な水準の書に出会えるのは幸運なこと。昔の研究者の仕事は素晴らしい。とくに一般向けにこれだけ分かりやすい概説書が書けるのだから。

  • ギリシアとローマの歴史をきっちりとしてくれる概説書。

  • 未読

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