姑獲鳥の夏 (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061817982

感想・レビュー・書評

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  • 読書(主に小説)週間続行中。
    今まであまりの厚みに怯んで敬遠していましたが、踏み込んでみました京極作品。
    題名の字面や重量に内容そのものも読みにくさを感じさせるのかと思いきや、これがまた連続ドラマ一気観!というくらいの、やめられないとまらないかっぱえびせん感。
    先がまだまだある厚みが逆に、楽しみがまだまだ残されているという高揚感になりました。

  • 2019/5/20読了(再読)
    ’98年7月頃から、講談社ノベルズ版の『京極堂シリーズ』を『塗仏の宴』まで順次購入した。稼ぎのない浪人時代、なかなかの出費だった筈――というか、何をしていたのやら。兎も角、当たり前と思った現実認識を揺さぶったこのシリーズで、何か少し賢くなった気もした20代の初めであった。

  • ※作品のネタバレを含みます。各自で自衛願います※


    ミステリーやエンタメとして読めば面白い。
    推理小説として読むならふざけんな。そんな本だ。

    まず推理小説とは何かを定義する必要があるが、私は『作者が提示した事象に基づき犯人と犯行手順を推察する』小説だと考える。この辺はWikipediaにも項があるので、興味ある方は検索してみて欲しい。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8E%A8%E7%90%86%E5%B0%8F%E8%AA%AC

    読了済の方ならご存じだろうが、この本は読者の視点役である主人公が精神を患っており、見たくない物は見ないふりができる。つまり『作者から提示された事象が嘘』なのだ。
    ホームズで例えるならワトソンが嘘つき、テストで例えるなら問題文が間違っている。こんな話を推理小説と呼ぶのはあんまりではなかろうか。

    私は推理小説という触れ込みで読み始めたため結末に憤ったが、ミステリーとして読んでいれば楽しめたと思う。だがどこのサイトでも推理小説として紹介されているし、作家ご本人も日本推理作家協会代表理事を務めるぐらいなので、これは推理小説なのだろう。
    鈍器と呼ばれるほどの厚みがある『嘘の本』など二度と読みたいとは思わないが。

  • 学生時代に読んだものを再読。ぐいぐい読ませてくれます。20年以上経っているから新鮮な気持ちで、寝るのを忘れて読みふけりました。

  • 1/30 1:38 仮書き
    冒頭100頁ほどは、現代においては、もはや陳腐化が進みすぎた題材を衒学的に語られ続けるもので並行してしまった。量子力学の下りなどは、この内容を訳知り顔で語られては却って共感性羞恥(これも使うには恥ずかしい語だが)に駆られるというものだ。
    壮絶なプロット。榎木戸が噛ませでしかなかったことや、若干本格ミステリではなかったことが気にはなるが、トリックとしても、対句的表現としても完成されていた。
    とんでもない筋書きのプロットに加え、冒頭に示され、最後まで首尾一貫した論旨として描かれる脳と仮想現実といった(今でさえ陳腐化されているが、1994年においては先進的だったであろう)科学じみたトピックと、民族学と呪いと信仰というオカルトの交差点上に、体外受精に想像妊娠、無頭児に多重人格に媚薬と少女性愛といった、性と妄想と好奇心が綯い交ぜになるような爛れた湿気が1950年代の梅雨明けの埃っぽい夏の熱気に充満している。
    何にしたって、要素の詰め込み過ぎで、しかもそれがきっちりと絡められた上で、何ならちゃんと回収しましたという次元ではなく、互いを引き立て合うレベルで層状の構造で相乗効果を生むように練り上げられているのだから恐ろしい。

    執筆の手順としてはきっと、まずトリック(死体消失の謎掛け)が合って、それが科学とオカルトの結節点にあることから、恐らくは詰め込みたい要素を全部詰め込んだ恐ろしい久遠寺の背景を作り上げた。
    そしてそこに主人公を介入させる余地を手紙の渡し役に見出し、あらすじが立ったのではないかと思う。
    だが、そうにしてもこんな話どうやって書き得るのだと思う。

    主人公がそうであるとように、読後にも涼子の妖艶な魅力が頭を、いや胸を離れない。それほどまでに彼女の人物造形は、このまだ古く、近代化されきらない昭和中期の日本の風景と、森深くに位置する廃墟のような医院に閉じ込められたような情景に映え、まさに荒れ果てた庭園で唯一手入れされた白いダチュラのように脳裏に焼き付いてしまう。
    作者の性格の悪いことに、度々彼女の蠱惑的な表情に、胸の白く豊満なこと、それから主人公による凌辱を描かずほのめかすことは、かえって彼女の美しさを高めている用に感じられる。
    最後の最後で駄目押しのように彼女の浮腫の話を書き残すのは本当に悪い夢のようだ。
    結局、彼女には獣の記憶しかなく、主人公に助けを求めている涼子は、本当に無垢に被害者であることが何よりいたたまれず、救われない気持ちになるのである。
    まぁ、これすら京極堂に言わせれば、残った者にかけられた呪いなのだが。
    話は変わるけれども、そう、よく衝撃的な作品に触れたときに、呪いだと感じることがある。
    小説ではなく恐縮だが、マクロスプラスを見たら快晴を見てそれを想起しない人生はなくなり、天気の子を見れば、かなとこ雲を見て陽菜を見ない人生はなくなる。とある飛空士の追憶を見れば、飛行機に乗って雲の上に登ったときに同作を回想しない人生はない。
    同じように、森と病院というつがいから、本作を回想しない人生はもはや望めない。

    さて、この後は柳田國男を読もうと思った。こういった知見や物の味方はもう少し広げたい。
    それから、西尾維新の物語シリーズの源流はこれだろうかと感じる。
    同郷の講談社ノベルスであるし、それほどまでに京極堂と忍野メメの造形は類似している。
    が、話のえげつなさはこちらが10倍上か。

    以上、蛇足では合ったが読み終えての当座の感想である。

  • 読んでいて「えっ?」と、何回かリアルに声が出た。
    「答え」に対しそんなことある?、とつっこみたくなる気持ち、関口君含むやや気持ち悪い一部男性陣、そして京極堂がスーパー安楽椅子陰陽師すぎる点にもつっこみたくなるのだけど、そんな些細なことは捻じ伏せてくれる面白さ。没入感。分厚いのに苦にならず、ワクワク読める。読書、楽しいー!と思える。読後感は単純に「面白かったー!」というより、なんだ、不思議な満足感…。沢山のファンがいる理由が分かった。

    たびたび感傷的またはヒステリックになる関口君の語りと、簡潔な場面説明(地の文というのか?これも関口君を通しているので信用ならないが)、そして京極堂の台詞回し、これらが絶妙に組み合わさりストレスなく読めた。
    京極堂の論文みたいな説明はとても分かりやすく、私の現実で考えると「あり得ん」のだけど彼の理屈上だと「なるほど」と納得でき気持ち良いのでこの世に不思議なことはなく、起き得ることは起き、起こらないことは起こらないんだろうと読後は心から思えてしまう。脳みそってスゴイな。
    そしてこの本を書いた作者さまもゴイスーです。どんな頭をして生まれたらこんなものを書けるのでしょうか。

  • 記念すべき1冊目

  • 高校生の時に読んで以来、25年ぶり?の再読。
    なんとも楽しい読書。
    シリーズを再読したくなりました。

  • ご存じ京極堂の語りに注目。全てはここから始まった。

  • 序盤の京極堂の一人演説が長い。長くて難解で心折れそうになり、君はおバカさんだねと、と京極堂に罵られる関口君の気分になった。
    だが、中盤から俄然面白くなり、ページを捲る手が止まらなくなる。どんでん返しに次ぐどんでん返しで、何度かページを巻き戻り、あ~この時のこれはそういう意味だったのか!と確認する。
    序盤の京極堂劇場の、一見話の本筋とは関係ないと思っていたうんちく(なんでこんな関係無さそうな話が延々続くんだ…と思いながら読んでいた。)が、後半活きてくる。
    とても良かったので、京極堂シリーズの続編、是非読んでみたい。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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