虚構推理 鋼人七瀬 (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 661
感想 : 110
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061827684

作品紹介・あらすじ

「そんなの推理じゃなくて、欺瞞じゃない!?」真実を求めるよりも過酷な、虚構の構築。自身もまた怪異的な存在である岩永琴子の推理と知略は本物の怪異が起こす事件を止めることができるのか。

感想・レビュー・書評

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  • 本格ミステリの進化の一形態、あるいは突然変異。

    不可解な死を遂げたアイドルの亡霊が、夜な夜な街を徘徊するという都市伝説。
    大きなリボンにフリルのついたミニスカート、極度に胸を強調されたステージ衣裳を身にまとい、肩には3メートルを超える鉄骨を担いで人々を襲う、顔のない怪異。その名は『鋼人七瀬』

    『鋼人七瀬』は存在するんです。
    河童や化け猫が普通に存在する設定の中で、それら妖怪の理も逸脱し力を増してゆく『鋼人七瀬』を倒すために、特殊能力を持つ者達が立ち上がります。その対抗手段というのが、『鋼人七瀬』が存在する状況に現実的に整合性のある嘘をぶつけて消滅させるというもの。
    怪異なんて無いという説得力のある『虚構推理』を、積み上げては崩されるというバトルの応酬。それは多重解決ミステリの変形でもあります。

    序盤の持って回ったようなセリフ使いやアニメ的なキャラクター造形は、正直読み進めるにはしんどかったですが、だんだんと物語に引き込まれていきました。

    読み終えてみれば意外に正統派。このスタイルはミステリにおける一種の『発明』だと思います。

  • 鋼人七瀬は真倉坂市の都市伝説。
    黒い噂に東京を追われたグラビアアイドル・七瀬かりんが真倉坂の工事現場で鉄骨に潰され事故死したことから、かりんの亡霊が現れるとされていた。
    それは頭に大きなリボンをつけフリフリのドレスを着た顔の真っ黒な巨乳の姿で鉄骨をふりまわすというもの。
    そんな鋼人七瀬を退治するためやってきたのは岩永琴子と桜川九郎。
    自らも怪異である岩永と九郎は、同じく怪異である鋼人七瀬を葬るために虚構を構築してゆく。

    という、あらすじだけでは一体どんな物語かと思ってしまいそうな城平さんの新作ですが。
    私はとても面白く読みました。
    ただ、あやかしと漫画に耐性がないと辛いかもしれません。
    かっぱや人魚、くだんなどが普通にあるもの、いるものとして話がすすんでいきますので。
    岩永にしても一眼一足、あやかしに片目片足をとられた少女になっています。
    城平さんは漫画の原作を書かれていたそうで、漫画のノベライズと思って読むとしっくりくる感じです。
    とにかくキャラがとてもたっていて愉快でした。

    厳密にはミステリではないのかな?とも思ったりしましたが。
    なにしろ謎がない。
    かりんの事故死や警官殺しなどありますが、これらは現場を見ていたあやかしたちの証言で全てが判明してしまいます。
    この作品のメインは鋼人七瀬を葬り去るその手法。
    作り出した人物と岩永との虚構争奪戦が最大の見どころです。これはすごかった。
    いまどきのネット掲示板ならさもありなんという。
    そして推理ってこうやって構築するんだなぁ、と。今さらながら勉強になりました。

    これってシリーズ化するのかな?
    でもこの設定で次は一体どう闘わせるのか、難しそう。
    それでも、できれば続きを読みたいです。

  • 主人公の岩永琴子がネットの掲示版に最もらしい嘘の推理を書き込み、巨乳でミニスカートを履いたアイドルの亡霊・鋼人七瀬が鉄骨を持って人を襲うという都市伝説の沈静化を図る…という筋ですが、前置きのキャラクター紹介がかなり冗長に感じられました。琴子、桜川九郎、弓原紗季の三角関係などは割愛して欲しかったです。
    終盤に展開される怒涛の多重解決は非常に読み応えがありましたが、最終的な答えが一番つまらないもので不満が残りました。

  • 小野不由美さんの、「東京異聞」と「黒祀の島」、ゲームの「逆転裁判」(1〜3)は、通常のミステリーでは否定される得体の知れないものを所与のモノという設定で推理することになり、そこで論理的ミステリーとホラーやファンタジーが融合するところに特色があると思う。この「鋼人七瀬」もそう。同じ城平京さんの「小人地獄」もややそっち系だと思われるので、本領発揮というところではないか。またある意味、今流行りのネットの「炎上」の本質に迫っているというか風刺しているのではないかという部分もあり、面白い。謎解きとしてはフーダニットの部分は弱いが、クラシックな探偵の、謎解き解説パートの鮮やかさが好きな人はこの証拠をこう使うか、というような部分が楽しめると思う。

  • 深夜、悲運のアイドルの亡霊が鉄骨を片手に徘徊するという・・・怪異が起こす事件を止めるため岩永琴子の推理と知略を巡らせる。

    怪異を扱ってるのでファンタジー要素もあるので、純粋なミステリーとは言い難いかもしれないけど、面白かった!
    クライマックスの論理は夢中になって読んだ。
    嘘で固めて事実をひっくりかえす虚構の論理・・・そこも一般的なミステリーと違ってるけど、圧倒されました。
    図書館から借りた本だけどもう一度読み返したいなぁ・・・
    続編もありそうな終わりなんだけど出ないのかしら(=_=)

  • 常識外の存在をここまでぶちこんでくるくせに、最後の解決はあくまで知恵と策略。タイトルの「虚構」の意味に唸る。

  • 読めて面白いような気がするけど面白くないんじゃないか、という本。

    結末はわかっている。
    しかし話の結末は、それを嘘と信じさせること。
    そういう本。

    とにかく論論論。
    気まぐれにキャラをわちゃわちゃ動かす。
    華はあるはずなのにキャラに華がない。なんか地味。
    カバーだけじゃないか華があるの。
    キャラ萌じゃないぜって話なのか。
    だが、キャラノベ新書だろう。

    クライマックスの論掛けは其れなりに面白かったんだけどなあ。

  • <ストーリー> ☆☆☆★★
    妖怪というオカルトとミステリーが見事に混ざった作品。妖怪達がさも当然かの様に登場してくる。しかもある現象も妖怪による行為であるという設定がなんとも。しかしミステリーの方はさすが城平 京。真実、犯人を見つけるミステリーを逆手に取り、真実をうやむやにさせる「逆ミステリー」を書いている。正に「虚構」である。

    <登場人物> ☆☆☆★★
    名前がある主な登場人物は7人である。少なさがちょっと否めないが逆に多くても困る……という作品ではないかと。キャラクター性に個人差があり、濃いのもあれば、薄いのも。もうちょっと設定が深くても良かったのではないかと思う。

    <表紙、描写、ボリュームなど> ☆☆☆★★
    表紙はラノベチックになっている。表はキーとなる登場人物。裏は主人公である。 現実とサイトという違う世界の書き込み描写が印象に残る。ボリュームも280Pと平均的な量である。

    <今後の展開> ☆☆☆☆★
    どの作品も続けようと思えば続けられるのだが、この作品を読み終えると次の展開が気になる。妖怪ネタがあれば、続けられるし、何せ主人公と相方の淡い関係が特に気になる。

    <値段> ☆☆★★★
    945円と少し高く感じる。もう100〜200円安ければ評価が変わるのではないかと。

  • さすが城平さんと言うべきですね。わかりやすいけど絶対誰も思いつかないようなトリック。それから、登場人物どうしの人間関係が、なんだかとても好感が持てました。続編を待っている人も多いと思います。彼女たちが奮闘する日々を覗ける日が楽しみです!

  • 私の好みドストライクの設定と屁理屈の応酬。この作者は漫画原作者として知り、小説も読みましたが、ここで一気に才能が開花したという事で、今後は原作だけで無くこのシリーズを代表作として書き続けてもらいたいですね。傑作。今年の私の中でのベスト10入りは間違いないです。

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著者プロフィール

【城平京(しろだいら・きょう)】
奈良県出身。代表作に漫画原作『絶園のテンペスト』『スパイラル~推理の絆~』、小説『虚構推理 』『名探偵に薔薇を』『雨の日も神様と相撲を』など。

「2021年 『虚構推理(15)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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