青春の門(第一部)筑豊篇(講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061845954

作品紹介・あらすじ

誰もが1度は通りすぎる、そしてただ1度しか通ることの許されない青春の門。熱い血のたぎる筑豊の地に生を享けた伊吹信介。目覚めゆく少年の愛と性、そして人生の希望と旅立ち……。ひたむきな青春の遍歴を雄大な構想で描き、世代を超えて読みつがれる不滅の大河ロマン。【1975年2月、1981年1月公開映画 原作】(講談社文庫)


青春のあり方を雄大な構想で描く大河小説。荒々しい気風の中にも、人間味が息づく筑豊に生を享けた伊吹信介。躍動する民衆の侠気の中に目覚めゆく少年の愛と性、そして人生への希望を描く大河小説第一巻。

感想・レビュー・書評

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  • 「青春の門」は物語自体も長いが、非常に長い期間をかけて書かれている小説である。1969年、というから今から50年以上前に「週刊現代」で連載が始まっている。1970年に「第1部筑豊編」の単行本が発行された後、1980年の「第6部再起編」までは定期的に単行本の形で発行がなされている。その後、発行のペースがゆっくりとなり、1993年に「第7部挑戦編」、2016年に「第8部風雲編」、そして、2017年からは第9部に相当する「新・青春の門」の連載が書かれ、2019年に「新青春の門第9部漂流編」の単行本が刊行された。ネットで見ると、作者の五木寛之は、第10部の構想をインタビューで話しており、少なくとももう少し話は続くようである。
    私は高校生の頃に読んだ記憶がある。何部まで読んだかは忘れたが、少なくとも、この第1部の筑豊編、および、大学生活を始めた第2部自立編は読んだ記憶がある。今回、私の方も40年以上ぶりに読んでみた。
    私は筑豊ではないが九州出身である。私の故郷の方言と筑豊方言は異なる部分も多いが、そんなには遠くなく、懐かしく読んだ。本筑豊編では、主人公の伊吹信介の父親や母親の世代の登場人物には劇的なことが起こるが、信介自体には特に劇的なことは起こらない。思い切りの良い性格をしている反面、普通の若者の限界を超えるような経験はしていないし、それが物語として語られるわけでもない。しかし、それはそれで、「普通の」若者である大部分の人間にとって、ある種の共感を感じる部分もある。

    劇的な、手に汗握るようなストーリーではないので、すぐにでも続くを読みたい、という類の本ではないが、第2巻以降も、ゆっくりと読み続けていきたいな、と思わせる物語だ。

  • 五木寛之
    青年は荒野をめざすが無い?

    青春の門、30数年前に初版本で読みました。
    伊吹信介の勝手極まる行動が思いでがあります。

  • 一気に読めておもしろかったが、主人公が作者から愛されすぎていて、勝者の物語という印象を受ける。これから先はどうなるのか、読み続けたい。

  • これは、昔ドラマ化されたりして知っている方もいらっしゃるかもしれませんが、少々長めの小説です。しかし、比較的読みやすいのでぜひ!

    戦後から高度成長期にかけての九州の筑豊を舞台としながら、地元で語り継がれる英雄を父に持つ伊吹伸介が、さまざまな人たちにもまれ立派な大人へと成長していく過程を描いた小説です。なお、筑豊編からシリーズとして何冊か続いていきますが、筑豊編が一番面白いです。

    この小説は、昭和という時代と筑豊という無秩序な空間を必死に生き抜いていく登場人物からパワーを貰える作品です。いわゆる「男は度胸」の世界ですが、この活気は現在のアジア諸国に通じるものを感じますね。「日本にもこんな時代があったんだー」という団塊の世代たちが過ごした青春を肌で感じるのにもうってつけですし、「こじんまりと固まっている今の日本人(自分もその一人)ってどうなの?」っていうことなんかも感じさせてくれます。ぜひとも、今の日本にはないパワーを感じ取っていただきたい作品です。

  • 高校時代、親父の本棚から何気なく手に取ったのが始まりで続篇を次々に読んだ。だめだめな伊吹信介と自分を思わず重ね合わせてします。それは肯定でも否定でもない。青春てのはきっとそんなものなんだろう。

  • 田川にもこんな時代があったのだなあ。
    知ってる地名がたくさん出てくる。
    人間の良いところも悪いところも書いてるし最後まで退屈せずに一気に読めた。

  •  五木寛之さんの大作「青春の門」。20代にテレビ・ドラマを見ました。江藤潤さんと秋吉久美子さんの共演でした。「青春の門 第一部 筑豊篇」、1989.12改定新版、559頁。幼少から高校まで伊吹信介を取り囲む愛すべき筑豊の男たち、女たち。父重蔵は鉱山の30数名を救助するため殉死(信介5歳)、重蔵に助けられた朝鮮人金山朱烈、タエ争奪で重蔵と死闘を演じた塙竜五郎。10歳まで抱いて寝てくれた義母のタエ、幼なじみの牧織江、音楽教師の梓旗江。信介は高校卒業、タエ病没、梓旗江が待つ東京の大学へ。

  • こんな長いシリーズとは知らずに読み始めてしまったがBOOKOFFに続きがあれば買おうと思う。

    大事な人に対しても思ってしまう周りからすれば酷いと思われるような感情を抱えてしまう気持ちがよく分かる。

  • 初めての時代小説への挑戦。言葉の意味や時代風景を理解できるか不安があったが何ということはなかった。
    伊吹信介の成長過程における複雑な心境の変化を的確に表現する五木寛之さんの文章力に感動した。 自分にもそんなことがあったなぁと感じる場面、特に性への異常なまでの執着に共感。信介と同じように、「自分は変なのだろうか?大丈夫だろうか?」と不安に思っていた時期があった。

    次巻からは東京での生活になるのだろうか? 信介と梓先生、牧織江との関係性がどうなっていくのか楽しみだ。

  • 主人公の伊吹信介は、義母のタエから、死んだ父の伊吹重蔵の思い出をくり返し聞かされてそだちます。重蔵は、鉱山の落盤事故で閉じ込められたひとたちを救うために、みずからの命を犠牲にしたのでした。父の立派な生きざまに恥じることのない、男らしい少年になることを心に誓う信介は、

    かつてタエをめぐって重蔵と争った塙竜五郎は、のこされたタエと信介の庇護をすることを重蔵に約束し、信介は彼から大人の男たちが生きる世界をかいま見ることになります。他方で彼は、幼馴染の少女の牧織江や、快活な音楽教師である梓旗江に心を惹かれ、少年らしい性のうずきにとまどいながら成長していきます。

    昭和のエンターテインメント小説らしい内容で、たのしんで読むことができました。

  • 40年以上前に読んだことがあるが、織江のことしか、思いだせなかった。 私より、20年前の時代であり、自立編も楽しみ!
    私の時代は、赤線は、ありませんでした。
    仕送りで、3畳の下宿は、3500円で、毎日ジーンズで過ごしました。 童貞でした。

  • 筑豊の飯塚市に3年間住んでました。青春の門の筑豊ね、と言われてました。何となく青春の門は知ってましたが改めて小説を読みました。
    いい小説でした。

  • 筑豊の炭鉱のイメージはもうどこにもないですね。北九州のイメージは、田川といっしょに、ヤマのひと言。あらっぽいまちでした。

  • ★4.9(3.73)1989年改訂版(1970年初版)。なんと壮大な小説なんだろう。過去多くの人に読み継がれてきたこの小説を、漸く手に取る。映画でも何度も上映されていたが、高校生時代にでもこの作品に触れておきたかったなぁという本ですね。伊吹伸介と母親のタエ、幼馴染の牧織江、そして塙竜五郎。著者は現在87歳になるが、彼の自伝とは言わないが、性的な描写等実体験に基づいて書かれたものなんだろうなぁと。第8部まで続く大作だが、映画は第2部で制作打ち切りと。戦後の筑豊を舞台に当時の日本人の心が鮮明に描かれてますね。

  • 1969年に連載開始、2019年に第9部が刊行、青春小説の金字塔です。主人公・伊吹信介は、きょうも元気に青春に振り回されています。

  • 大学生の時に読んで、主人公の生々しい生き様(描写)に引き込まれてシリーズを一気読みしました。もう一度読みたいと思っていますが、古本屋を含め、なかなか見つけられないでいます。

  • 前半はもの凄くフックがあってよいんだけど、後半はもう炭鉱設定どうでも良くなった感じがもったいない/ ただの中高生の成長記録/ 織江が唯一の救い/ 健気でかわいすぎる/ 織江の幸せを願ってやまない/

  • 全7巻。疾風怒涛の青春の日々をあたかも自分が駆け抜けているかのように感じさせてくれる。少年から青年へと成長していく登場人物達の心理描写が巧みで感動した。生の歓びや哀しみがありのままに溢れていて切なく愛おしい。人の心という移ろいやすく捉えどころのないものをうまく表現している。久々に濃密な作品に出会った。紛れもない大作。

  • なかなか熱いお話です。

  • 学生時代に読んだが,いまの歳になって、
    この本を 読むとは思わなかった。

    伊吹信介 が 記憶していることから、
    18歳となり 大学に行く ところで、おわる。
    昭和という時代が,雰囲気として立ち上る。
    みんなが 飢えから 解放されようとしていた。
    しかし,時代の動きが あまりにも,排除されているような気がする。
    私小説的な手法になりすぎている。

    信介は 重蔵の息子であることに誇りを持ち
    父親に助けられながら,自分であろうとする。
    図抜けた存在ではないが,義理 という言葉が
    妙に似合う 若者である。

    年長者に対する言葉遣いなど いまの時代からみると
    難があるが,許される範囲であるかもしれない。
    塙竜五郎のキップの良さと重蔵との信頼関係。
    長太の直情さ、金さんの階級意識、などが絡み合うなかで
    伊吹信介は 素直に成長していく。

    最初に意識したオンナが 義理の母であるタエだった。
    そして,気がつかないが おさななじみ オリエ が2番目で、
    女性であると意識したのが 梓先生だった。

    オリエの恋心が わかるようで、わかりにくく、
    煮え切らないところがある。
    オトコとオンナは理解し合えないものだから,仕方がないのかもしれない。

    さて、伊吹信介 18歳 東京で 
    本当にしたいことがわかるのだろうか。

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著者プロフィール

1932年、福岡県生まれ。作家。生後まもなく朝鮮半島に渡り幼少期を送る。戦後、北朝鮮平壌より引き揚げる。52年に上京し、早稲田大学文学部ロシア文学科入学。57年中退後、編集者、作詞家、ルポライターなどを経て、66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門筑豊篇』ほかで吉川英治文学賞、2010年『親鸞』で毎日出版文化賞特別賞受賞。ほかの代表作に『風の王国』『大河の一滴』『蓮如』『百寺巡礼』『生きるヒント』『折れない言葉』などがある。2022年より日本藝術院会員。

「2023年 『新・地図のない旅 Ⅱ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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