青春の門(第五部)望郷篇(講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (584ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061846159

作品紹介・あらすじ

屈辱感にさいなまれながら、なつかしい筑豊に帰った信介。だが、そこに待っていたのは塙組の没落と、恩人竜五郎の死だった。いまや故郷との縁(えにし)は切れた。さらば筑豊、さらば香春岳(かわらだけ)……。孤独だが、自由の身となった信介は、ふたたび新しい旅に……。青春の苦悩と息遣いを描く大河ロマン。(講談社文庫)


青春の息遣いを雄大な構想で描く大河小説。屈辱感にさいなまれながら懐かしい筑豊に帰った信介。だがそこに待っていたのは塙組の没落と恩人竜五郎の死だった。いまや故郷との縁は切れた。大河ロマン第5部

感想・レビュー・書評

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  • 第5部にあたる「青春の門 望郷篇」の単行本は1979年に発行されたとのことなので、今から40年以上前の話になる。
    私は第1部の「筑豊篇」から読んでいるが、第2部の「自立篇」から第4部までの「堕落篇」までは、あまり好きではなかった。伊吹信介という筑豊出身の青年は、正義感に溢れた竹を割ったような向こう見ずの性格であったはずであったのであるが、上京してからの信介は、まずは「頭で考える」いじいじした行動をとる人物として描かれており、そういう点が好みではなかった。
    ただ、この第5部になって、もともとの思い切りの良い伊吹信介が戻ってきつつある気がする。そういう意味では、久々に「青春の門」を楽しめた。本書は、現在のところ第9部まで発行されているようだ。あと4部、楽しんで読みたい。

  • 第4部の「堕落篇」までを読んだのは、約50年前の学生時代だったという記憶。
    最近、書店の店頭で文庫の最新版である第9部「漂流篇」がふと目に止まって、あれ?まだ続いていた。読もう!となったが、その前にブランクを埋めなくっちゃということで本書を購入。

    ほとんどストーリーは覚えて無くて、登場人物の名前を断片的に記憶にある程度であったが、学生運動を白けた気分で眺めていた時代の空気を思い起こされた。

    最新刊にたどり着くまで、まだブランクはたくさん残っているが、それまで持ちこたえられるかどうか・・・

  •  織江は高見沢タエの芸名で歌手の道を。信介はアルバイト、読書、ボクシング、遊び、政治活動・・・。塙竜五郎重傷の新聞を読み、急遽福岡の飯塚に。故郷田川の空気も。竜五郎は没し、東京に。信介と織江は時々出会うが、川筋で育った男と女、すっきり伴侶にとはいかず、会ったり離れたり。信介は林三郎という実業家の車にはねられて入院という事故をきっかけに、林三郎宅に住み込みで仕事を助けるという新たな展開に。五木寛之「青春の門 第五部 望郷篇」、1990.2発行、583頁。

  • 相変わらず面白い。人との出会いや再開がちょっと都合良すぎる気がするが、長編小説なのだから無理筋の展開もやむを得ない。

  • 織江の曲がヒットすることを願った。
    塙竜五郎が、亡くなり、信介の飛躍を願う、無駄なケンカやツッパリがなくなると
    人生が動き出す。

  • 歌手になることをめざす織江は、老作詞家の宇崎秋星にその才を見いだされ、夢へ向かって進みはじめます。他方、東京へもどったものの、虚無感に苛まれていた信介は、故郷の竜五郎がケガをしたことを知り、筑豊へ向かいます。久しぶりに再会した竜五郎には、往年の覇気は見られず、塙組は資金繰りが苦しくなっており、解散の危機に瀕していました。

    そんな故郷を目にした信介は、帰郷の途中でいっしょになった山本というライターのことばをヒントに、プロレスを興行するという考えを実行に移します。織江の知人のつてを頼り、無事にプロレスが開催されますが、試合のさなかに竜五郎の容態が急変し、やがて彼はこの世を去ります。のこされた信介は、塙組の後始末をつけたあと、ひとり東京へともどります。

    父親代わりとなって信介を庇護してくれた竜五郎をなくした信介ですが、いまだ彼のあゆむべき道は見えず、まだまだ彼の青春時代の葛藤はつづきそうです。

  • 山崎ハコの織江の唄をまた聞いてしまった。五木寛之の織江像は一貫しているが毎回新たな魅力が見えてくる。恩人が亡くなり故郷とのつながりもなくなってしまった。

  • オリエは、歌手を目指して、生活を始める。
    作曲家の家に住み込みで、レッスンを受けるが、ていのいい女中だった。
    そこで、宇崎秋声にあう。
    宇崎は、オリエの歌の中に何かがあると思い、応援することに。
    この飄々とした姿。そして、戦争への深い反省。
    そういう人もいるのだね。
    生命のある歌と生命のない歌。の違い。

    新宿で、竹田という男に絡まれるが、
    それが縁で、自堕落な生活を始める信介。
    ダメな人間として、自分を認識する。
    先が見えないのだ。
    塙竜五郎が怪我をしたということで、九州に帰る。
    塙は、めっきりと老いていた。
    長太はおらず、春男が中心だった。
    お金が回らない状況だった。

    九州に行く汽車の中で 山本というルポライターにあう。
    彼が、語るゴーリキー論がいい。
    劇に関しては、深く語れないが、文学については、
    五木寛之は、深い洞察がで来る。

    そんな時に、織江と会う。織江は、高見沢タエという名前で、歌っていた。
    プロレスの興業をする。それは、織江から、宇崎に紹介された
    花田がとりしきった。花田の弟子の清川が、プロレスを成功させる。
    そして、塙竜五郎は、死んでしまい、信介と筑豊を結ぶものは、
    織江だけとなる。

    信介は、中途半端な自分に嫌気をさす。
    カオルと中井の睦まじい姿が、
    オリエと信介に影響を与える。
    事故にあった信介が、転機をむかえる。

  • 大長編なので、だらだらして若干飽きてくるが、主人公に新たな展開がありそうなので次回に期待したい。

  • 福岡、江差などを舞台とした作品です。

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著者プロフィール

1932年、福岡県生まれ。作家。生後まもなく朝鮮半島に渡り幼少期を送る。戦後、北朝鮮平壌より引き揚げる。52年に上京し、早稲田大学文学部ロシア文学科入学。57年中退後、編集者、作詞家、ルポライターなどを経て、66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門筑豊篇』ほかで吉川英治文学賞、2010年『親鸞』で毎日出版文化賞特別賞受賞。ほかの代表作に『風の王国』『大河の一滴』『蓮如』『百寺巡礼』『生きるヒント』『折れない言葉』などがある。2022年より日本藝術院会員。

「2023年 『新・地図のない旅 Ⅱ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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