北斎殺人事件 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061847156

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  •  浮世絵三部作・「写楽殺人事件」「北斎殺人事件」「広重殺人事件」を総括して。

     三作とも個別に独立した内容だが、通読して包括される世界と、伝わる願いがある。
     浮世絵の蘊蓄と日本近世史の動向が絡み合い、生きた存在としての絵師を浮かび上がらせる。
     基本的な構成は、三作通じて同様。
     プロローグで当該作品の紹介、本編で絵師の実態についての仮説と調査の展開、死者からの手紙による告白、贋作判明後も残される仮説の有意性。
     文化や研究の興隆よりも、私利私欲の我執に取り憑かれた愚挙に揺れ動く現実社会。
     学者の曖昧な態度への批判、学問の怖さ、名声や商売に翻弄される研究者の哀しさ。
     「北斎」で語られる観光学の土産意識や、日本と海外の色彩感覚の差異、嗜好による調整、虹彩の違いにまで言及しての比較文化論も面白い。
     そして、「写楽」と「広重」の対比に見る、探偵視点の推移と、真相吐露側が入れ替わる、位置の相似性。
     三部作読了後は、「ゴッホ殺人事件」で示唆される塔馬双太郎の過去にも思いを馳せる。

著者プロフィール

1947年岩手県生まれ。早稲田大学卒業。83年『写楽殺人事件』で江戸川乱歩賞、87年『北斎殺人事件』で日本推理作家協会賞、92年『緋い記憶』で直木賞、2000年『火怨』で吉川英治文学賞を受賞する。他の著書に『炎立つ』(全5巻)、『天を衝く』(全3巻)などがある。

「2009年 『To Tempt Heaven』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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