魔球 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 499
  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061849310

作品紹介・あらすじ

9回裏二死満塁、春の選抜高校野球大会、開陽高校のエース須田武志は、最後に揺れて落ちる"魔球"を投げた。すべてはこの一球に込められていた…。捕手北岡明は大会後まもなく、愛犬と共に刺殺体で発見された。野球部の部員たちは疑心暗鬼に駆られた。高校生活最後の暗転と永遠の純情を描いた青春推理。

感想・レビュー・書評

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  • 全く先が見えない、予想もつかない、メークドラマが私は大好き。
    どれ程に実力があって、
    敵う者など無い、と誰もが認める強豪が相手だとしても、
    『球』の行方だけは最後の最後までわからない。

    九回二死満塁。
    ピッチャーの手を離れた瞬間、その『球』にどんな奇跡が起こるのか?
    序章からぎゅっと心を鷲掴みにされてしまった。
    すでに物語の中心である、
    ピッチャーマウンドに立っている天才『須田武志』は
    眩しいほどの光を輝き放っている。

    東野さんは、
    ここからどんな魔球を魅せてくれるのだろう?
    そう期待し始めた途端、
    天才が死んでしまった。

    筋書きの無いドラマが好き、と言いながら、
    まさか、ここで主人公級のエースの存在を失うなんて予想だにしていなかった。

    序章はスカッと晴れた爽やかなゲームで上がった幕であったが、
    読み終えてみると、
    ぽつり、ぽつりと振り出した雨が、
    最後にはどしゃぶりにでもなっていた様な、
    あまりにも悲しい結末。

    することがなくて、
    でも、何か考えたくて、
    表紙をじっ…と見つめ続けていたら、
    『魔球』のなかに潜んでいた
    『鬼』を見つけてしまった。

    (こいつが、真の犯人じゃないか?)

    私はそう思う事にした。

  • こういう作品も書いてたんだなぁ。
    切な苦しかった。
    武志が気の毒で。
    そして何も殺さなくったっていいじゃないか、と。

    グローブ事件も、武志じゃないと思ってた。勘違いかなんかじゃないかと。
    でも、ラストでの、約束に拘泥するという点が語られたら、まぁ、わからんでもない、という…


    作品としては、やっぱり、素敵ですよ。
    東野さん。

    ただ、舞台をわざわざ昭和39年にした意味はあったのかなぁ。
    王さんとか野球界を語りたかったのか?
    違うよなぁ。
    同じ時代を描いたものとしては、奥田英朗の罪の轍が秀逸だから、あの作品ほど時代を描いてはいないから、なんであの時代を舞台にしたのか。物価も現代の感覚的だったしなぁ

  • アニキはいつも一人だった。
    なんて悲しい言葉なんだろう。
    それでも、最後の弟の日記に、少しだけ救われた気がします。

    推理小説のネタバレ記事は気がすすまないけど、私の心の整理のために書きます。
    以下ネタバレ。

    選抜高校野球に出場した高校球児(野球部捕手の北岡)が殺された。
    同じ頃、ある会社で爆弾事件が起き、社長の誘拐騒動が起きる。
    警察はふたつの事件をそれぞれ捜査する。

    しばらくすると第二の事件が起きる。
    北岡とバッテリーを組んでいた天才投手と呼ばれている須田が死体で発見される。
    須田は右腕を切り落とされ、右腕は見つからない…。

    須田は母子家庭で、母、弟と暮らしていたが、本当の親子ではない。
    須田は、現在の母の亡き夫の妹が産んだ子供だった。妹は未婚のまま須田を産み、4歳頃まで一人で育てていた。
    その須田の本当の父親というのが、爆弾事件、誘拐騒動のあった会社の社長だった。
    この会社の社長は、須田の実の母と結婚するつもりでいたが、仕事で世話になっている人から娘婿にと可愛がられ、須田の実の母とその子供を結果的に捨てることになった。
    須田の実の母は、須田家に子供共々引き取られた後に自殺して死んでしまった。
    須田は、そのまま須田家の長男として育てられた。
    しかし、須田家の大黒柱である父親は職場の爆発事故で死亡。母子家庭として貧しい生活を送っている。
    須田兄弟は、母を助けるために、兄は野球で、弟は勉強でお金を稼ぐことをきめる。

    須田が魔球を練習していたことをキッカケに、警察は爆発事件があった会社の野球部に所属していた男に行きつく。
    その男は、会社の事故が原因で足が不自由になり野球ができなくなっていた。その上、その事故の原因も会社に隠蔽された。
    男は、会社に復讐するためにダイナマイトを持って会社に特攻しようと考えた。しかし、須田にそんなことはしなくていい、俺が爆弾をしかけてやる、と言われる。
    しかし、須田は爆弾が爆発しないように細工をして仕掛けた。結果、爆発せずに大騒ぎになって終わっただけ。男の復讐心について、須田は、「自分のせいでだれかかわ死んだらどうしようって思ったなら、その程度ということ」と。
    爆弾騒ぎの真相はこういうことだった。

    殺人事件の真相はというと、北岡殺しの犯人は須田だった。
    須田は「約束を破る人を許さない」という強い考えを持っている。
    これは、須田の実の父親が「必ず迎えに来る」と言ったのに結局迎えに来ることはなかったこと、須田の実の母はこの父の言葉を信じ、須田を連れて毎週駅で終電まで待ち続けたという幼い頃の記憶が深く影響しているのだろう。
    須田自身、プロ入りして育ての母を助けることを目標にしていたが、須田の体はプロ入りに耐えられないほどに故障していた。そして北岡は、須田の故障に気付いていた。
    須田は北岡に強く口止めして、北岡も口外しないことを約束するが、北岡は須田の故障について監督の教師に相談しようとした。
    須田は、北岡の大切なもの(愛犬)を殺すことで、約束を破ろうとした北岡への報復を果たそうとした。
    しかし、愛犬を殺した時に北岡と須田がもみ合いになり、結果的に北岡も殺してしまった。

    須田は、その後、実の父である会社社長に会い(これが誘拐事件の真相)、自分と母がいかにつらい思いをしたかをぶちまける。
    そして、その社長に、育ての母への援助を約束させる。
    その翌日、須田は自ら命を絶った。
    須田は、弟に、自分が死んだら右腕を切り落として発見されないようにしろと指示を出していた。弟は、兄の指示に従った。
    これが、ふたつの殺人事件の真相です。

    須田は、自分の体が野球に耐えられないこと、チームメイトの北村を殺してしまったことに絶望しながらも、母と弟を助けるために、自分がいなくなった後のことまで考えて。
    高校生の男の子に、ここまで背負わせるか…って、すごく悲しい気分になった。

    うまく言えないけれど、現実の世界でも、若い天才アスリート達は同世代の若者とは比べられない様々なものを背負っていると思う。
    そして、きっと凡人達には理解できない感情も持っている。
    この物語に出てくる須田少年は、何度も「天才」と形容されている。
    須田少年の考え方や、自ら死を選び弟に腕を切り落とさせたことについては、多くの読者には理解の範疇を超えているだろう。
    須田少年が「天才」と何度も形容されていることは、その点に対する筆者の伏線なのかもしれない。

  • 物語の主軸となる高校生エースピッチャー「須田武志」という人物のカリスマ性に惹きつけられる。常に冷静でストイック。孤高のエースとして自らを厳しく律し、他者とは違う次元で物事を見据える。嘘を嫌い、約束は必ず守る。まるで武士のような志を持つ高校生男児。ミステリーと青春小説が見事に融合しており、物語に惹きこまれて一気読みしてしまった。

  • 2020.8.13

    読み終わったあととてもせつない気持ちになった。

  • 【東野圭吾作品のなかで、読後感マイベスト】

    読み終わり、何とも言えない切ない気持ちになった。しばらく作品から魂が離れず、東野作品は多数読んでいるが、読後感としてはマイベストかもしれない。

  • まさかの展開。
    一途な想いとも言えるし
    でも狂気を感じるところもあり・・・。
    読後は複雑な気持ちにもなりました。

    • GOTOさん
      すごくわかります。
      殺害方法がなんとも言えない
      すごくわかります。
      殺害方法がなんとも言えない
      2021/02/03
  • 「兄貴はいつも一人だった」と言った弟は、兄貴が選んだ道を尊重して役割を果たした。しかし実際、彼ら兄弟がやったことは異常だ。側から見たらその一言で片付けられるだろう。私としては、武志の捧げた青春と人生を真っ向から否定することはできない。

  • とても悲しいラストでした

  • 少年たちの凄まじいまでの覚悟と精神力。読み終わってみて、心から共感することは難しかったけれど、文字を追っている最中には胸が締め付けられるような苦しさを味わいました。面白かったです。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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