悲劇の風雲児 (講談社文庫 す 1-27)

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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061855953

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  • 記紀に題材を取ったものは二篇収録。

    「瑪瑙の鳩」

    司馬康は、かつて大陸は晋の王族だった。しかし、王家の崩壊後、倭の国に渡り、大和朝廷に食客とも王子たちの遊び相手ともつかない地位で身をよせていた。
    熊襲の叛乱鎮圧のため橿日に軍を進めていた足仲津彦天皇の宮へ、籠坂・忍熊の二皇子に従って来ていた康は、天皇と皇后の不和を耳にする。皇后の父・丹波主君は半島の財宝を得たいがため、娘と示し合わせて自分に有利な神託を捏造しようとしていた。
    神おろしの場で、その神託をぶち壊そうとした天皇は闇の中で謎の死をとげる。
    「下手人は神ではない」天皇の死を、そう確信した康は、二人の皇子をつれて大和へ脱出した。
    半島での略奪を成功させた皇后らは、天皇が死んでから十三ヶ月後に産まれた誉田別皇子を立てて、二皇子と対立する。

    「太子の恋」

    「そなたが欲しい。そなたが好きだ」稚鷦鷯太子の何十回、何百回くりかえしたかもしれない求愛に、その想われ人・影媛はついに返事をくれるという。
    待ち合わせ場所は世に名高い海柘榴市にて。指定されたのは歌垣の行われる夜だった。
    期待に胸をふくらませる太子。しかし、影媛の返事とは、恋をあきらめてもらうこと、自分の愛する人・平群の鮪を見せることだった。
    歌垣に集まる若者たちにはやしたてられ、太子は歌での勝負を鮪に挑む。勝負に太子が勝つと思われたその時、影媛が鮪をかばって歌を詠む。
     衆人のなかでの屈辱に身を震わせる太子に、大伴金村がささやく。
    「討って、お恨みをはらすべきでしょう」
    自ら甲冑をまとって広高宮を走り出る後ろから、病の億計天皇が必死に止めようとするが、平群真鳥の邸宅に火の手があがったのを見て驚き、ついに天皇は崩御する。

    影姫は死んだ。鮪が斬り死にしたところから百歩もはなれていない沼で水死体として発見されたのだ。
    恋を失い、即位した稚鷦鷯天皇の、狂気の日々がはじまった。

  • 4061855956  282p 1994・2・15 1刷

  • タイトルロールが義仲の短編小説。15分で読めるくらいの短さでお手軽。内容に特に際立ったところはないかな。

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著者プロフィール

杉本苑子

大正十四(一九二五)年、東京に生まれる。昭和二十四年、文化学院文科を卒業。昭和二十七年より吉川英治に師事する。昭和三十八年、『孤愁の岸』で第四十八回直木賞を受賞。昭和五十三年『滝沢馬琴』で第十二回吉川英治文学賞、昭和六十一年『穢土荘厳』で第二十五回女流文学賞を受賞。平成十四年、菊池寛賞を受賞、文化勲章を受勲。そのほかの著書に『埋み火』『散華』『悲華水滸伝』などがある。平成二十九(二〇一七)年没。

「2021年 『竹ノ御所鞠子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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