- 講談社 (1988年1月27日発売)
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感想 : 60件
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Amazon.co.jp ・本 (296ページ) / ISBN・EAN: 9784061960084
作品紹介・あらすじ
妻の情事をきっかけに、家庭の崩壊は始まった。たて直しを計る健気な夫は、なす術もなく悲喜劇を繰り返し、次第に自己を喪失する。不気味に音もなく解けて行く家庭の絆。現実に潜む危うさの暗示。時代を超え現代に迫る問題作、「抱擁家族」とは何か。<谷崎潤一郎賞受賞作品>
みんなの感想まとめ
家庭の崩壊を描いたこの作品は、家族の絆が音もなく解けていく様子をリアルに表現しています。主人公は、崩れゆく家族の中で自身を見失いながらも、何とか立て直そうと奮闘しますが、コミュニケーションの不通が物語...
感想・レビュー・書評
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私はこの手の不愉快さは好みではないが,「父」が崩れ去る過程は家父長制に興味のある人なら見る価値はあるか。
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代表作ではあるけれど、ブラックな滑稽さを含んだ奇妙な空間や関係を描き出す初期と、類をみない破茶滅茶で自由な文体で文学史に残る後期の仕事に比べると、過渡期的な中途半端さがあって、他の筆者の作品ほど面白くは感じなかった。
家庭内の不和が延々と続く様を描いているけれども、その内容は他の有体の私小説とは全く異質で、人間対人間の間で常に起きているコミュニケーションの不通が一切の物語的な装飾がなく描写されていて、一読しただけでは何について話しているのか、それが会話になっているのかさえ分からなくなるような感覚を覚える。そもそも、主人公の感情の種類や動き方が全く不明だ(おそらく筆者もよくわかっていないというか噛み砕いて安易な解釈やカテゴリに入れないまま物事を書いているんだと思う)。吉本隆明か誰かが、小島信夫という人間は実生活では人が嫌な気分になるようなこと、普通だったら言わないまま心に秘めておくことをあけすけに本人の前で言い出すような社会不適合な人間だと評していたけれど、それがそのまま執筆の時の態度にも向かっているような感じがする。 -
『アメリカンスクール』の煮詰まった文体から力が抜け、以降小島信夫の作品を彩るのはのらりくらりと抽象的でどこか滑稽な語り口。
転換点とも言える本作の、シリアスな内容なのに笑えてしまうギャップが最高に面白い。 -
フェミニズムやジェンダーに興味があった頃に、なにかの本で紹介されていて購入した本。
H31.4.30再読。
平成最後に読み終えた本となった。
もう、早く読み終わりたくて仕方がなかった。
文章自体は読み易いので、すぐ読了できたけれども、読んでいて始終苦痛だった。
奇妙で不愉快。
当時まだ主流であった(今だってまだまだ拭い去れない)「家父長制」の崩落が描かれているように感じた。
崩れゆく「家族の形」とか「絆」のハリボテを躍起になって支えている或る家族、という印象。
各々役割を演じながら、そんな自分や家族を相対的に観察して、修正を施そうとしてもどうにも上手くいかない。
綻びは広がり続け、ついには決壊してしまう。
家は欠陥だらけ、妻の病気は進行して死に至り、狂っていく主人公、出て行く息子、噛み合わない歯車があったことで全てが狂ったのか、あるいは全ての歯車がそもそも微妙にズレていたのか。
「主婦」という部品を求めて早急に再婚相手を探す俊介や子供達が恐ろしかった。
いちいち煽るようなみちよも怖い。
こんな複雑な感情を喚び起こす、奇妙な読書体験を提供してくれる本はそうない。 -
戦後の空気が色濃い日本のある家族。
アメリカ人と関係を持ちながらも悪びれることもなく、ただただ唯我独尊であり続ける妻。
なんやかや葛藤しながらも、それを受容し続ける夫。
勝手気ままに振る舞う息子と娘。
そして、クセの強い家政婦。
脆いような、実は意外にタフなような家族の関係。
これも一つの家族の形か。 -
家に出入りする米軍士官への嫉妬から
家族は仲良くあらねばならないという理想を引っ張り出して
妻を拘束しようとする夫の話
しかし所詮それはプライドを守ろうとする行為でしかなかった
ゆえに道化にはなりきれず、お大臣の夢を語るでもなく
なにより敗戦国の美徳観念が抑制をかけるのか
何をやってもかっこつけに見えて
妻のみならず、みんなに馬鹿にされてしまう
ところがその妻も
米軍士官の誘惑を受けた負い目があるのか
あるいは貞節を傷つけられた恥の意識に苛まれてか
どうもヒステリーで支離滅裂になっており
そのことが小説を悪文に見せてわかりにくくすらしているのだった
それでも家長の威厳を保つため、主人公は
家をポストモダンに新築するが
まもなく癌で妻が死に
新しい結婚相手を探すうち
要するにわれわれは自由主義と封建主義のダブスタで生きてるのだ
進歩的とはそういうことだ
そうわかってきて、生前の妻の偉大さが身にしみると
家政婦の誘惑も目に入らないのだった -
妻の浮気から少しずつ家庭が崩壊していく、不気味な小説。はじめは妻のわがままさが目につくが、徐々に、夫の俊介が狂っていることに気付く。何を考えているのか分からず、行動が読めない。
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読んでいてこんなに不愉快になる本はないかもしれない。感情と行動がちぐはぐで、それは周りとのコミュニケーションも同様、噛み合わない。
人生なんてこんなものかも。他人からみたら滑稽なのだ。
この不愉快さはリアルだ。 -
3度目か4度目の再読、は再読とは言わないか。
何度読んでも少しも減らない、この凄さと面白さはなんだ。
読んでいる時間は自分の時間なのに、
その流れも変えてしまうような不思議な時間感覚が生まれる。
小島信夫は天才なの? -
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ものすごく奇妙な文体。妻の不貞がきっかけで…というプロットは濱口竜介っぽくもある。易しい言葉遣いでするする読めるのに意味がわからない。登場人物の思考回路はまったく予想がつかずあれよあれよと別人のように豹変していく。いきなり時間軸が飛んだりするので余計に厄介。
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時子が浮気をし、病気でいなくなって初めて彼女が妻の存在を持っていたことに気づき、自分は家庭の中の夫、父になろうとして「なろう」としている時点で本物ではなく妻からも子供からも空回りして、でも自分の家族は紛れもなくここにしかないという喜劇。(後書きにも喜劇という文字があったけど、読んでて疎外感とかもがく悲しさしか感じなかったけど、思い返してみるとそれは喜劇と呼ぶしかない)
私小説なのかしら。
時子の乳癌が、大丈夫、病室の◯◯に比べればまだ大したことないと思ってる間にあっという間に容体が悪くなって衰えて死んでしまうのが怖かったな。 -
面白いことは間違いないのだが、その面白さが一体どこからくるものなのか、今ひとつ上手く言葉にできない類の小説だった。
ただ一つ言えるのは、主人公である三輪俊介の内省がめちゃくちゃリアルに感じたいうこと。
そのリアルさというのは、だれもが思っていても敢えて言葉にしないような、でも意識するかしないかのギリギリのところで確実に思っていて、それが明文化されたときに、思っていたことに初めて気がついたように感じるような、そんなリアルさである。 -
何だか何がしたいのかよく分からんおっさんは、ある意味シンパシーを感じないこともない。突然怒ってみたり、と思ったらいじけてみたり、妻とも文句を言ったり言われたり、本当に、実にどうでも良いことばかりで、これが2000年後に未来人が戦後の日本人のおっさんがどんな暮らしをしてたかを調べる際には、映画や小説や、はては素人の日記なんかに比べてもリアリティがあるかもしれんけど、言うても面白いかっって言ったらつまらんにょ。
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私小説
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興味を持つきっかけは、福田の採点本。その後もあちこちで賞賛のコメントを見かけ、これは是非読んどかないと、ってことで。『仮往生~』のことがあったから、読むまではちょっと不安だったけど、こちらは良かったです。家父長たる威厳を示したいけど、だんだんそういう風潮でもなくなってきている父親の葛藤とか、一歩下がって支えたい願望もありながら、米人の乱入とか自身の闘病とかでそれどころじゃなくなった母親とか。あくまで会話分を中心に、そこから色んな情景が浮かび上がってきて、読み心地も良好。なかなかに素敵な読書体験でした。
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小学生のような文体で、結構アダルトな内容を書いている。そのギャップが面白いと言えば面白い。
みちよさん、というお手伝いの人を女メフィストフェレスにしたいという意図はわかる。けれど、もう少し描写にリアリティがないと、難しいんじゃないかなとおもった。
それにひきかえ、奥さまの方は実在のモデルがあるのか、結構リアリティがある。この人はがんばりやさんで、若い頃はとっても魅力的な人だったのだろうな、と感じさせる。
あともう少しガラス張りの変な建築であるという新築の家の描写がもっと詳しいとよかったのかもしれない。この家がなぜお手伝いさんを入れないと回っていかないのかというのは
、おそらく家の作りが合理的でないせいもあるんではないかなと思う。
それにしても、この家はもう子供二人とも大きいのだし、そうあせって後妻などいれなくとも、家族だけで家を回していくことは通常なら可能なはず。あせって後妻を探しても、縁のものだしいいことはないような気がするのだが。どなたであっても、(たぶん大変優秀であっただろう)前の奥様、前の妻の代わりはなかなかできそうもないと感じる。 -
タイトルとはほど遠い、じわじわと家庭が崩壊していく様子を描いたもの。ちょっとしたアクシデント、病気、思い違い、仕事、店員など、なんでもない小さなことが家庭に入り込んで少しずつ歯車が合わなくなっていく。「問題」を無くしていくと最後に残るのは自分だけという不幸。
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主人公がほとんどわけのわからぬ周囲の言説に振り回され、さらに自身の言動に対してすら実感が薄くなる、この愉快な狂気が実に優れている。
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