抱擁家族 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 508
感想 : 50
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061960084

作品紹介・あらすじ

妻の情事をきっかけに、家庭の崩壊は始まった。たて直しを計る健気な夫は、なす術もなく悲喜劇を繰り返し次第に自己を喪失する。無気味に音もなく解けて行く家庭の絆。現実に潜む危うさの暗示。時代を超え現代に迫る問題作、「抱擁家族」とは何か。第1回谷崎賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • フェミニズムやジェンダーに興味があった頃に、なにかの本で紹介されていて購入した本。
    H31.4.30再読。
    平成最後に読み終えた本となった。

    もう、早く読み終わりたくて仕方がなかった。
    文章自体は読み易いので、すぐ読了できたけれども、読んでいて始終苦痛だった。
    奇妙で不愉快。

    当時まだ主流であった(今だってまだまだ拭い去れない)「家父長制」の崩落が描かれているように感じた。
    崩れゆく「家族の形」とか「絆」のハリボテを躍起になって支えている或る家族、という印象。

    各々役割を演じながら、そんな自分や家族を相対的に観察して、修正を施そうとしてもどうにも上手くいかない。
    綻びは広がり続け、ついには決壊してしまう。
    家は欠陥だらけ、妻の病気は進行して死に至り、狂っていく主人公、出て行く息子、噛み合わない歯車があったことで全てが狂ったのか、あるいは全ての歯車がそもそも微妙にズレていたのか。
    「主婦」という部品を求めて早急に再婚相手を探す俊介や子供達が恐ろしかった。
    いちいち煽るようなみちよも怖い。
    こんな複雑な感情を喚び起こす、奇妙な読書体験を提供してくれる本はそうない。

  • 戦後の空気が色濃い日本のある家族。
    アメリカ人と関係を持ちながらも悪びれることもなく、ただただ唯我独尊であり続ける妻。
    なんやかや葛藤しながらも、それを受容し続ける夫。
    勝手気ままに振る舞う息子と娘。
    そして、クセの強い家政婦。
    脆いような、実は意外にタフなような家族の関係。
    これも一つの家族の形か。

  • 家に出入りする米軍士官への嫉妬から
    家族は仲良くあらねばならないという理想を引っ張り出して
    妻を拘束しようとする夫の話
    しかし所詮それはプライドを守ろうとする行為でしかなかった
    ゆえに道化にはなりきれず、お大臣の夢を語るでもなく
    なにより敗戦国の美徳観念が抑制をかけるのか
    何をやってもかっこつけに見えて
    妻のみならず、みんなに馬鹿にされてしまう
    ところがその妻も
    米軍士官の誘惑を受けた負い目があるのか
    あるいは貞節を傷つけられた恥の意識に苛まれてか
    どうもヒステリーで支離滅裂になっており
    そのことが小説を悪文に見せてわかりにくくすらしているのだった

    それでも家長の威厳を保つため、主人公は
    家をポストモダンに新築するが
    まもなく癌で妻が死に
    新しい結婚相手を探すうち
    要するにわれわれは自由主義と封建主義のダブスタで生きてるのだ
    進歩的とはそういうことだ
    そうわかってきて、生前の妻の偉大さが身にしみると
    家政婦の誘惑も目に入らないのだった

  • 妻の浮気から少しずつ家庭が崩壊していく、不気味な小説。はじめは妻のわがままさが目につくが、徐々に、夫の俊介が狂っていることに気付く。何を考えているのか分からず、行動が読めない。

  • 読んでいてこんなに不愉快になる本はないかもしれない。感情と行動がちぐはぐで、それは周りとのコミュニケーションも同様、噛み合わない。

    人生なんてこんなものかも。他人からみたら滑稽なのだ。

    この不愉快さはリアルだ。

  • 3度目か4度目の再読、は再読とは言わないか。
    何度読んでも少しも減らない、この凄さと面白さはなんだ。
    読んでいる時間は自分の時間なのに、
    その流れも変えてしまうような不思議な時間感覚が生まれる。
    小島信夫は天才なの?

  • たしかに家族の話なんだけど、切り取るところがすごい独特な気がする。自分の家に変な人がたくさんいる。(変人がいるという意味ではない)〈家族としてあるべき姿〉という概念がずっと物語の中に漂っていて、まあ言い換えればそれだけが浮かび上がっているというべきか。
    主人公と妻の話だと思って読むから、妻が亡くなってもこの話が平然とつづいていくのがやっぱ変。でもだからこそ、〈家族としてあるべき姿〉が浮かび上がっている気がする。でも登場人物、とくに主人公の気持ちを追うのがむずかしい。

    一読したうえでは、おもしろい!とは自信を持って言える確固たる感触は持てていないのだけど、これを読んだ人と語りたい感じはある。

  • 面白いことは間違いないのだが、その面白さが一体どこからくるものなのか、今ひとつ上手く言葉にできない類の小説だった。
    ただ一つ言えるのは、主人公である三輪俊介の内省がめちゃくちゃリアルに感じたいうこと。
    そのリアルさというのは、だれもが思っていても敢えて言葉にしないような、でも意識するかしないかのギリギリのところで確実に思っていて、それが明文化されたときに、思っていたことに初めて気がついたように感じるような、そんなリアルさである。

  • 何だか何がしたいのかよく分からんおっさんは、ある意味シンパシーを感じないこともない。突然怒ってみたり、と思ったらいじけてみたり、妻とも文句を言ったり言われたり、本当に、実にどうでも良いことばかりで、これが2000年後に未来人が戦後の日本人のおっさんがどんな暮らしをしてたかを調べる際には、映画や小説や、はては素人の日記なんかに比べてもリアリティがあるかもしれんけど、言うても面白いかっって言ったらつまらんにょ。

  • 私小説

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著者プロフィール

小島信夫(1915.2.28~2006.10.26) 小説家。岐阜県生まれ。1941年、東京帝大文学部英文科卒。岐阜中学、第一高等学校時代から創作を始め、東大時代には同人誌「崖」を刊行。大学卒業の年に徴兵検査を受け、翌年入隊。中国で暗号兵として過ごす。46年、復員。岐阜師範学校に勤務。48年、上京。同人誌「同時代」を刊行。佐原女子高校、小石川高校を経て、54年、明治大学に勤務。55年、「アメリカン・スクール」で芥川賞受賞。57年、米国へ留学。63年、学生結婚した妻を喪い、この経験を、65年、『抱擁家族』へと昇華。翌年、同作で谷崎潤一郎賞受賞。68年から「別れる理由」を「群像」に連載。73年、『私の作家評伝』で芸術選奨文部大臣賞受賞。82年、.『別れる理由』で野間文芸賞受賞。89年、日本芸術院会員となる。94年、文化功労者に選出される。98年、『うるわしき日々』で読売文学賞受賞。99年、郷里に小島信夫文学賞が設立される。主な著書に『小銃』『墓碑銘』『美濃』『月光』『暮坂』『各務原・名古屋・国立』『残光』など。

「2016年 『抱擁家族』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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