単純な生活 (講談社文芸文庫)

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  • 講談社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (438ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061960367

感想・レビュー・書評

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  • 特別なことは何も起きないのに面白い。「私」が自分のペースでものを考えて暮らしてる様子が心地いい。話題の変わり方が融通無碍で、ほんのり笑ったり泣いたりしながら語り手の二年半を追体験できる。

    別に「私」が神様の特別待遇で単純な生活ができているわけではない。慌ただしくくたびれる実生活に流されずに「単純」を目指そうとすること、そのための場所を自分の中に作っておくことが肝心なのだ。自分は睡眠や食事に気をつけるだけで精一杯だけれど、もうひとつ、ときどき立ち止まって物思うこともできるようなりたいと思った。

  •  めちゃくちゃおもしろかった。こんなにおもしろいユーモア小説を読んだのははじめてで、久しぶりに本を読みながら声を上げて笑ってしまった。「文学」なんて構える必要はまったくなくて、おもしろいなあと思いながら読んでいたらいつのまにか終わってしまう感じ。ほんま好き勝手やってんなぁ。

     とまではさすがに思わなくて、作者も書いているように、書かなくてもいい部分、書いてはいけない部分はちゃんと書かずに終えている。ここら辺はさすがに心得ていて、読んでいて不愉快にならない「日常」、つまりは「単純な生活」を見事に表現している。

     実際を描写することなくして、そのなかから生まれてくるフィクション的な「抜粋」をなすことはできない。この場合、作者のやろうとした「抜粋」というのは「生活」を通して見えてくる人々の営みであって、固有名詞を出していることは、決して普遍性を阻害しない。

     単純な生活とはなにか。考えてみるとちょっと皮肉やなぁという気がする。

  • 自身と家族にまつわるエッセイ集。阿部昭さんを知ったことは私にとってラッキーなことでした。
    繊細でそれでいて面白い!ちょっとした時間に拾い読みしても心に残る珠玉のエピソードがいっぱいです

  • うまい表現を知らないから、こういう文章になるのだけど、私はこの著者と根本のところに共通点があるように思っている。
    世代はまるで違うんだけども。
    何が、というのもまたうまく書き表せない。あの夏の日のことや、父親のこと、人生の捉え方…。頷きながら読み進める。

    そう、「だよねー!」と思いながら読んでいるんだけど、落ち着いて考えると、これらが書かれた時代は遥か昔なのだ。この時こうなら、今どうなっちゃうの、と思いつつ、私がうなずけるのなら、きっと根っこの不快感は「変わってない」のだろうとも思う。

    劣化はひどくなっているのかもしれないけども。
    あの夏を境に。

  • 300 馬場北

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著者プロフィール

小説家。1934年広島県に生まれ、翌年より神奈川県藤沢市鵠沼で育つ。東京大学仏文科を卒業後、ラジオ東京(現在のTBS)に入社。62年に「子供部屋」で文學界新人賞を受賞。68年に処女短編集『未成年』を刊行。その後、71年にTBSを退社し、創作活動に専念する。73年『千年』で毎日出版文化賞を受賞。76年に『人生の一日』で芸術選奨新人賞受賞。幼少より暮らした鵠沼を舞台にした作品が多く、また、短編小説の名手として知られ、数多くの作品を残している。

「2019年 『March winds and April showers bring May flowers.』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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