風流尸解記 (講談社文芸文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061960947

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  • 金子光晴の全小説7編を収録。戦後間もない東京の風土を舞台に、身を持ち崩した人間の刹那的感情と、死へと棚引く霧靄の如きロマンチシズムがねっとりと絡む。知っての通り金子の日本語は超絶に美しい。特に表題作においてはこの世のものとは思えぬ妖艶色めく言葉が寸断なく連なり、魔物に魂抜かれたような気怠さが残った。辞書によると「尸解」とは《人がいったん死んだ後に生返り離れた土地で仙人になること/死体を残して霊魂のみが抜け去るものと死体が生返って棺より抜け出るものとがある》とあり、いかにも金子は仙人の風体だと得心した次第。

    戦後の国民の、手の平を返した民主主義の流行をユーモア散りばめ揶揄しているのがまた金子らしい。

  • 金子氏の日本語を自在に操り、妖艶な世界や幻想的な世界を描き出す手腕にいつも感服する次第です。日本語の持つ美しさや表現の可能性を自覚させられます。「赦免状が三分おくれたために 胴から首が離れた例もある。 ましてや、七日間と言えば なにごとがあっても不思議はない。」このようなフレーズを私も吐いてみたい。

著者プロフィール

金子 光晴(かねこ・みつはる):詩人。1895年、愛知県生まれ。早稲田大学高等予科文科、東京美術学校(現・東京芸術大学)日本画科、慶應義塾大学文学部予科をすべて中退。1919年、初の詩集『赤土の家』を発表した後に渡欧。23年、『こがね蟲』で評価を受ける。28年、妻・森美千代とともにアジア・ヨーロッパへ。32年帰国。37年『鮫』、48年『落下傘』ほか多くの抵抗詩を書く。53年、『人間の悲劇』で読売文学賞受賞。主な作品として詩集『蛾』『女たちへのエレジー』『IL』、小説『風流尸解記』、随筆『どくろ杯』『ねむれ巴里』ほか多数。1975年没。

「2023年 『詩人/人間の悲劇 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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