- Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062068390
作品紹介・あらすじ
彫刻家の教育論。作家として、教育者としての体験をふまえていま子供たちをとりまく教育のあり方を問う。
感想・レビュー・書評
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「子どものときに、わかるわからないはべつにして、いい絵を見せる、いい音楽を聴かせるということは大切なことです。子どもだからこの程度でいいやとイミテーションや甘ったるいものを見せたり聴かせたりするよりは、はじめからいいもの、本当のものに触れさせることは、子供の将来にとって大事なことなのです。」(p153)
「繰り返しますが、人間というのは矛盾だらけのものだと思います。この矛盾を数学の公式のようにずばっと解決できるものなら、人間の歴史のなかで小説など書かれなかったかもしれません。人間の生き方において、これだという結論が出ないからのたうちまわったり、問いかけたりしているのです。私たち彫刻家の仕事も、人間のあり方への問いかけなのだと思って私は仕事を続けているのです。」(p206)
芸術とはその人の人格や哲学が出るものなんだなと実感しました。
入試でも芸術の解釈にひとつの解答をもうけて正誤を判断することがあり、芸術の感じ方は自由であるはずなのにと疑問を呈されています。
全体としては、彫刻家・芸術家という立場から、失敗や苦労が減っている分現代はかえって大変(感動や達成感などがへっているということと理解)ということが書かれていました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
私の同僚にも、大学時代彫刻をやっていた人がおりましたが、なかなか大変なようです。
そもそも力仕事だし、暑い日もクーラーは使えないし、失敗したからといって、簡単にはやり直しもできない…。
さて、この本は、著名な彫刻家である筆者が、彫刻の仕事、そして自分の人生を振り返りながら、今の子どもたちに必要なもの、欠けているものを熱く語っています。学校現場からではない教育論というのも、なかなか興味深いです。
この本を読んで、一つの道を究めるというのは大変なものだなと、改めて感じました。