柔らかな頬

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062079198

感想・レビュー・書評

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  • 決して軽いわけじゃないし、むしろページ数もかなりあるのに一気に読んじゃいました。すごい。桐野作品は本の厚さが厚ければ、そのぶん内容も濃密な気がします。
    北海道って広々してて自然豊かで食べ物が美味しいところっていうイメージかもしれませんが、個人的には鬱々としたイメージ。太平洋側地域に生まれたからかもしれないけど、どこか空もどよんとしたグレーな空気と引きずり込まれるような暗さを持つ冷たい海というイメージなんです。
    主人公であるカスミがその雰囲気にぴったりです。
    カスミは曇った空が映った海の色のように陰鬱な女だと思いました。でも嫌いじゃないです。
    人と違うことがしたいカスミだけど、実は淡白で風のゆくまま流されるままに生きてるような気がしてならないのです。自分が特別で、自分から捨てたと思っていたのに捨てられたのは自分だったという事実にあっても、打ちのめされたりせずにただ受け入れたように見えました。この女、どこでも生きていける。
    正直犯人が分からないまま終わったことなんて全く気にならなかったです。それよりも今後のカスミの行く先のが気になる。この女の人生をもう少し知りたいと思いました。
    カスミをこんなに長く描ける桐野さんは体力と精神力がすごいですね。良い意味で、女流作家の持ってる独特の繊細さが感じられないです。
    息苦しさが気持ちいい作品でした。

  • 直木賞受賞作。北海道の別荘地を舞台とした幼女行方不明とその母の不倫。退職警官のボランティアでの子供探し・・・。不倫の高くて重い代償。そして、一体誰が犯人か、最後まで飽きません。心理ドラマが続きます。最後の1ページになってやっと真相が・・・。面白かったです。

  • あいかわらず暗くて救いがない(笑)結局犯人は誰だったのか?気になって読み終わった後に検索してみた。「柔らかな頬」と入れたら「柔らかな頬 犯人」が検索候補上位に。やっぱりみんな気になるんだなあ。もやもやしなくもないけれど、この終わり方、私は好きかな。

  • 北海道の別荘地で5歳の少女が突然消えた。
    少女の母親はその後、神隠しにあったように消えた長女を何年も探し続ける。
    それが彼女の生活のほぼ全てになってしまった。
    そしてその出来事を機に、彼女たち家族、別荘の持ち主であり彼女の不倫相手とその家族、別荘の管理人家族など、周囲の人間は大きく変わっていく。
    やがて死期の迫った元刑事がこの事件の事を知り、消えた少女の捜索を申し出る。

    この人。変わってる・・・。
    読みながら少女の母親であり、この物語の主人公の女性の事をそう思いました。
    美しく頭の回転が早い、決断力も行動力もある女性。
    だけどその行動も考え方も突拍子もなくて、他人を容易に受け入れるかと思うと、あっさり切り捨てていく。
    故郷と生家を捨て、家族を捨て・・・。
    そんな彼女に周囲の人間は置き去りにされてゆく。
    そして考え方がどこか現実的でない。
    行動力があるから生命力にあふれているかというとそんな事はなく・・・。
    死んでるように生きている人のような・・・まるで人生を漂っているような・・・。
    そんな印象を受けました。
    それがそのまんま、私のこの本の印象です。

    置き去りにしする側と思われた彼女は実は切り捨てられていた。
    そして全ての原因は彼女の心から生まれたもの。
    人はどこかで過去と未来の折り合いをつけて、今を生きていくものなんだろう。
    そんな事を読み終えて思いました。
    タイトルとは全然違い、まるで北の海のように冷たく、どんよりとしたイメージの本です。

  • 母親だったり女だったり、一人の女性の色々な姿を生々しく見せられます。
    欲しがりすぎるとだめなんだろうなと感じつつ、線引きは自分でするのは難しいものでもあるなと思った。
    娘が一番救われないわ。

  • わたしの人生に大きな影響をもたらした一冊。
    少なくとも親と子の関係については考え方、価値観を
    決定させた。
    おそらく自分の中に生涯生き続けるであろう。
    さわやかで心地よいものではない。
    義務感、使命感、生きる理由。再読はないと思う。
    重すぎる作品。

  • 不倫相手の別荘で自分の娘が行方不明になる。いつまでも娘探しにこだわる主人公。娘でてこない、犯人わからず。

  • 人のネガティブな面を描く最後まで暗く重いお話。最後にはいろんな束縛から解放されて自由になるのだけどそれが必ずしも明るい未来の様には描かれない。

  • 人に進められて読んだ。
    娘が行方不明になってしまった女性とその周囲のお話。
    事実が明るみになってみると、想像と全く違う。
    そんなお話。

  • 幼女の失踪事件をきっかけに、変わっていく人々の人生。暗くて重くて恐ろしくて、嫌な嫌~な話だけど、読み始めたら止められない。
    最後の章がゾッとする。

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著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で「江戸川乱歩賞」、98年『OUT』で「日本推理作家協会賞」、99年『柔らかな頬』で「直木賞」、03年『グロテスク』で「泉鏡花文学賞」、04年『残虐記』で「柴田錬三郎賞」、05年『魂萌え!』で「婦人公論文芸賞」、08年『東京島』で「谷崎潤一郎賞」、09年『女神記』で「紫式部文学賞」、10年・11年『ナニカアル』で、「島清恋愛文学賞」「読売文学賞」をW受賞する。15年「紫綬褒章」を受章、21年「早稲田大学坪内逍遥大賞」を受賞。23年『燕は戻ってこない』で、「毎日芸術賞」「吉川英治文学賞」の2賞を受賞する。日本ペンクラブ会長を務める。

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