妖しの民と生まれきて

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 7
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062091350

感想・レビュー・書評

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  • 読むに至った経緯
     暇つぶしが電子機器ばかりな状況をマシにするべく、読みたい本を探していたときにピンときて図書館で借りた。彼を説明したネット記事から、生きづらさが封入されてるイイ本なんじゃないかと思ったから。
    借りてきた当初は、総合的に堅苦しいッ!って感じて置いたまましていたが「読みたいとこだけ読もう」と気持ちを切り替え、パラパラとページをめくってみた。すると、ググッと引き込まれるフレーズ群が目に飛び込んできたので、そこから読み始めることにした。
    そこからは作者の語りの美味さにのせられてホイホイと読んで行けた(といいつつも つまみ食いだが)。この本を好きになれたことは幸せだったと振り返る。
    〜〜〜
    ひっちゃかめっちゃかな家庭環境に生まれたらしい彼。アダルトチルドレン カルチャー(??)の先人との出合いにワタシ心震えた。心強いというかなんというか、深く刻み込まれるフレーズが複数登場。異端児の伝記っていいもんだね。
    戦争体験者の心象風景的部分でもかなりおすすめです。

  • 図書館。中島かずきリコメンドがきっかけ。

    半生が既に小説かなにかのよう。波乱万丈であり、人との機微があり。
    昭和史の一面が垣間見えるのも楽しい。

  •  遅れ馳せながら、映画『仁義なき戦い』を観て感動する。この第1部から第4部までの脚本を書いた笠原和夫とは一体どういう人物だったのかが気になってくる。
     「事実は小説より奇なり」というが、この半生記を読むと、その壮絶さに圧倒され、笠原が脚本家であっただけに、「事実は映画より奇なり」と感じられてくる。
     『仁義なき戦い』を彷彿とさせる場面が印象に残る。長岡中学での猛者Tとの友情は、『仁義なき戦い』での刑務所内での、広能と若杉の血をすすりあう兄弟盃のシーンを想起させる。また、大竹海兵団特別幹部練習生の時代には、赤犬を捕まえて殺して食べたという体験も記されている。『仁義なき戦い』でも、やはり子分が親分に肉を食べさせてやりたいが金がないので赤犬を殺して振る舞うシーンがあった。笠原自身は犬の肉を食べたせいで翌朝高熱を出して診療所で診察を受けていたが、ちょうどその時に広島に原爆が投下され、40キロ先のキノコ雲も見たという。しかも、この直後、高熱は嘘のように消え去っていたと不思議な体験を記している。
     生い立ちから東映入社に至る20代後半までの半生がユーモアと深い内省を交えながら、見事な筆致で描かれていて、文体は最後まで緩むことがない。
     そして、あとがきに「それから(東映入社後)は、私の生活は業界人としての色合いが濃くなって、もちろんさまざまに悪戦苦闘は連続したものの、私固有の起伏とは言い難いものとなった。従ってとくに伝えたいと思うものもない」と記した後、「昭和72年(平成9年)師走 笠原和夫」と付している。裏を返せば、この著書にこそ、『仁義なき戦い』の脚本家笠原和夫の「仁」と「義」が凝縮されているということになる。私は姿勢を正してこの本を閉じた。戦中を苛烈に生き抜き、戦後の日本の変貌に忸怩たる思いを懐き、平成という時代に異和を感じつつ、昭和という時代を見事に生き切った笠原の姿を反芻しながら。

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著者プロフィール

昭和2年(1927)東京生まれ。新潟県長岡中学を卒業後、海軍特別幹部練習生となり、大竹海兵団に入団。復員後、様々な職につき、昭和29年東映株式会社宣伝部に常勤嘱託として採用される。昭和33年、脚本家デビュー。美空ひばりの主演作や時代劇、『日本侠客伝』シリーズ、『博奕打ち 総長賭博』をはじめとする東映任侠映画、『日本暗殺秘録』、『仁義なき戦い』四部作、『二百三高地』『大日本帝国』、『226』等を執筆。平成14年死去。

「2018年 『笠原和夫傑作選 日本暗殺秘録――昭和史~戦争映画篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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