ゲルマン紙幣一億円

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062102872

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  • 幕末から明治維新にかけての歴史は中学校・高校ともに時間をかけて習うこともなく、素通りしてきたのが実情です。明治維新の後に、版籍奉還や廃藩置県、その前後に貨幣を統一した出来事(新貨条例の制定)があったことを、この小説で理解しました。

    鎖国を続けていた日本にとっては、為替相場の設定がとても難しかったようですね、金と銀との交換比率が違っていたことが、日本から富が流出してしまう原因ともなったようです。

    当時の設定レートは、1ドル=1円=1.5グラムの金だったようですが、日本では金と銀の複合本位制だったのが根本原因だったようですね。

    この本では、小説という読みやすいスタイルで説明してあるので、明治初期の通貨にまつわる新政府が苦労した点がよくわかりました。

    以下は気になったポイントです。

    ・お上が布告(維新年の閏4月)した銭相場では、1両=銭13貫696文なので、1朱=856文、天保銭が96文通用、寛永通宝=12文、文久銭=16文とした(p67)

    ・慶応4年5月の銀目廃止で、貨幣の単位は、両・分・朱の金目と従来からの文に統一された、銀何匁という銀の重さで流通した丁銀や豆板銀は出回っていない(p82)

    ・当時の東京でのコメの値段は、1両=9升6合、明治2年に新政府が見込んだ年貢米の歳入量は、320万石、当時の1億円(新政府が発行しようとした新貨幣の総額)は新政府の3年分という金額となる、当時出回っていた藩札は3765万両であった(p104,190)

    ・長州や薩摩出身の政府高官の暗殺事件は起きていてが、犯人が逮捕されていなかった(p178)

    ・新貨条例では、両・分・朱の貨幣単位を、円・銭・厘とし、金貨1円(1.5グラムの金含有)を旧1両にして、アメリカドル1ドルに等しいものにすると決めた(p186)

    ・小判や二分金と、新貨幣との交換は、その金の含有量で価値を決めて引きかえればよかったが、幕藩体制が続いた間に260諸藩が発行してきた藩札の処理が難しかった(p187)

    ・廃藩置県の布告に続いて、各藩が蔵元、札差、両替商に負っている内国債、外国商人からの外国債はすべて政府が引き継ぐという布告がでた(p190)

    ・藩札の相場の高そうな藩は、尼崎・彦根・大垣・津・群上・豊橋・福知山・和歌山など(p193)

    2012年6月10日作成

    (以下、2011.5.8作成分)
    明治初期に版籍奉還があって新貨条例が出された頃を時代背景とした小説です。幕末に各藩で発行されていた藩札を回収してドイツから輸入したお札(ゲルマン紙幣=明治通宝)で置き換えるときに実際に起きた偽札事件をベースに、時代背景を考慮して書かれた小説です。

    小説とはいうものの、実際に起きていたであろう話がベースになっているので興味深く読めました。時代が動いているときに機転を利かすことができた人が、現在では大企業の創業者になることができたとイメージすることができました。

    また、この小説を読んで感じたのは、現在各自治体が財政難になっている状況が、明治初期の状況に酷似していることです。特に、負債の処理の仕方=外国や銀行への負債は完全に引き継ぐが、それ以外は割り引く(p190)は、何かの時に役に立つと思いました。

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