冬の旅人

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 119
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (526ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062112567

作品紹介・あらすじ

十九世紀末、帝政露西亜。十七歳の川江環は、日本人で初めて画学生として留学をゆるされる。がんじがらめの女学院を抜け出し、混沌のペテルブルグ、流刑地シベリアと憑かれたように彷徨い、それぞれの土地で絵筆を執り続ける環。露西亜という船に運命を託した環は、やがて革命の大きな渦へと呑み込まれてゆく-。

感想・レビュー・書評

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  • 19世紀末に修道院で聖像画の画法を学ぶためにロシアに渡った主人公・環(タマーラ)の半生を描いた物語。
    タマーラの身の内にある様々な感情、感覚の表現が、目に見えるものじゃないのに視覚に訴えてくるように迫ってきた。
    没頭しつつも終始冷静でいられて、心が搔き乱されることはなかったのだけど、読み終えて充実感が広がっている。

    タマーラはロシアに馴染んでロシア人と同じ様に暮らしても、ロシアを祖国とするロシア人ではない。
    ある意味浮世離れしているというか世間体に関心がないというか、理性よりも直感に従っているようなところが、変わりゆくロシアという国に身を置いて揉まれているにも関わらず、どこか自由だと感じる。
    歴史上の人物も出てきて、労働者目線ではない革命を傍観した気分だ。

    ひとつの時代の終焉を目の当たりにしたからといって、簡単に燃え尽きたりはしない。
    清々しい余韻を感じられた。

  • 五章(最終章)で、ロマノフ王朝最後のロイヤルファミリーに出会うあたりが、主題……?

  • 素晴らしい体験でした。
    ありがとうございました。

  • ふむ

  • 幻想小説でもあり、ある一人の女の一代記でもあり…
    皆川先生がロシア舞台で大長編書くとこんな風になるんだな…

  • 帝政ロシアの末期。日本人留学生の一生。

  • 初読

    な……長かった…
    帝政ロシア末期、17歳の日本人女性がロシアをひとり、
    生き抜く話。

    この時代のロシアの、暗くて不潔で濃厚なムードはたっぷり。
    ロシアについて書かれたものには必ず描かれる迷信深い、
    土着の何か…。革命に至るムード、気配もたっぷり書かれてる。

    ただ、環(タマーラ)は私にとってあんまり興味がわかないタイプでw
    花乃視点の話の方が読みたかったかも?
    フェージャも結局なんだよ、とまぁ、わかったようなわからんような。
    ラスプーチンもあのラスプーチンだよなぁ、
    いつからあのラスプーチンになるんだろと思ってたら
    わりとあっさりなった上に急に歴史ファンタジーの様相で
    タマーラがアレと皇女を見付けたくだりはちょっとシラけてしまいました。

  • ロンドのような。浮かんでは沈み、浮かんでは沈みを繰り返す。この儘ならない感じが、重くて深い。

  • 19世紀末のロシア帝政時代。聖像画を学ぶために留学生としてペテルブルグの修道院に来た川江環(タマーラ)を主人公とする小説。

    中盤までは芸術小説なのかと思って読んでいたのだが、後半になってラスプーチンが登場したり、皇帝ニコライ2世の一家との交流が、中心になり、がぜん歴史小説っぽくなる。

    個人的には、芸術家の狂気じみたところをもっと最後まで出してほしい感じがあったが、作者の意図はそうではなかったのだろう。とても面白かったのではあるが、そのズレがちょっと残念だった。

  • お、重・・・・ッ
    革命期のロシアですね。・・・暗い・・・。油断してると胃もたれ起します。主人公は天才型なのか、本当に一緒にいたら耐えられないだろう困ったちゃんだな。あの女の子よくついてったな。

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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