- Amazon.co.jp ・本 (606ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062115292
感想・レビュー・書評
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勢いでハードカバーを買い10年近くそのままに。。このボリュームはなかなか踏ん切りがつかなかった。作者は同世代だが、おっさんのヒロイズムというか、描き方がうまい。というか、昭和のアニメブームで育った人間としてはど真ん中。昔、爆笑問題の深夜番組で、太田光が作者を目の前に絶賛していたのが思い出される。
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戦争ものなので男のことばかりなのだけれど、やはり政界にも軍部にも世界のもう半数の意思があった方が良いと思った。大義や論理的思考の結末で、ある意味そこに居合わせただけの命をあんなに沢山奪ってはいけない。命とは人だけではない。大義と実践、論理と直感はどちらかに偏ってはいけないのかも。
今海戦ゲームをやっているので知ってる艦名や戦闘の陣形が面白かった。
ラストはなるべくして感があるけれど、こんな普通の生活で皆の期待に応えたんだろうかという疑問が、またこれ男性的なので両性あって良かったと実感。 -
事務的な指摘であるが、
・怪しげなドイツ語が書かれている(初歩的な文法ミスもあった)
・「B部隊」「L部隊」にそれぞれ「チーム・ブラボー」「チーム・リマ」と誤ったルビ振りだけならまだしも本文に「本来ならズールーと発音される」と書いてしまっている(これは現代のフォネティックコードで太平洋戦争時の米軍は別のものを使用)
など、話の本筋と関係のないところでノイズが多かったのが気になる。
浅倉大佐や絹見少佐について、序盤は井上成美海軍大将を「なんとなく」想起させて、期待していたのだが、まったく違って残念。
浅倉大佐は頭脳明晰という設定になっているが、彼の「未来予測」の的確さ以外はそれを感じるところがなかった。その「未来予測」もあまりに史実どおりでリアリティに欠ける(リアリティなんて求めてはいけないのだろうが)。「頭が良すぎて凡人からすると狂気」という設定の人物がほしかっただけなんだろう。
最後の戦闘シーンはありえなさ過ぎて、笑いながら読んでいた。
話はフィクションを通り越してファンタジーといったところか。そう思って読めば期待はずれということもないだろう。-
2013/10/09
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2013/10/10
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上下巻、読み終わりました!
上巻は読み始めのころの様々な「謎」がすべて解け、かつ無事に保護作戦も成功できたぜ☆という「達成感」を感じました。
謎が解けたあとに、また最初のほうを読み返すと、面白いですね^^
そして下巻。
皆に、きちんと出番があり、1人1人の心情が描かれているのが嬉しかったです。
色んなシーンがありますが、私が特に印象に残っているのは2つ。
船の中で二人が玉音放送を耳にするシーン。日本に無事に着けるんだ、という安堵感を感じたのと同時に、戦争は終わったんだという思いと、「誰の声?」「しらない」といった二人の短い会話から、感じるものがあります。(うまく表現できないんですが・・・)
もう1つは、最終章。戦後の何十年もの有様が、グワっと怒涛のように読者に押し寄せてくる。歌とともに。
それは、もはや「創作」でも「フィクション」でもなく、現実なのです。
この本は、発行が11年前なので「そこ」で止まってはいますが、「未来」である今も、世界は何ら変わってはいない、という事実を突き付けられたような感じです。
このタイミングで、この本に出会えた事に感謝。 -
出たばかりの頃に装丁に惹かれて購入しました。ハードカバー高い・・・
完全にジャケ買いだったけど、面白かった。コレの後イージスも買っちゃったし。
先入観も何の予備知識も無かったけど
なんかナディアとかガンダムとか連想するな~と思ってたら、
やっぱりガンダムの脚本?小説?書いてるっていう。
なのでそっち系が好きな人とか、あとは全然関係ないけど
沈黙の艦隊とか好きな人とか楽しく読めそう。
描写力が凄いのかなんなのか、下巻のクライマックスとか
頭にはっきり映像を思い描ける位ですが実写映画は見てない。
逆にイメージ壊されそうだし、重要人物の一人が出てこないらしいし。
それでなくても2時間なんかじゃ物足りなさそう。
ナディアとかヤマトとかのあんまり萌え萌えしないアニメで
半年位かけて見たい感じ。 -
ドイツより譲渡されたローレライを回収した伊507は、太平洋の孤島ウェーク島で新たな命を受ける。
3発目の原子爆弾を帝都、東京へ。
そこに日本降伏に向けた謀略があることに気づいた乗組員は、命に背き、自分たちの運命を自らで選択する。
目標は米海軍の大機動部隊が守る一大航空基地テニアン島。
時に1945年8月、終戦まであと数日・・・。
アメリカの大機動部隊を相手にした孤独な戦い。
小説だからこその清々しいまでの勝利。
伊507は撃沈されるも、彼らは確実に勝利を手にした。
読み応え抜群の作品でした。
13 -
涙腺緩みっぱなしの上下巻一気読み。
福井晴敏という作家は、不器用な男を描くのが抜群にうまい。今回も太平洋戦争の史実の裏側に大胆な嘘を埋め込みながら、男たちの生き様をたっぷりと見せてくれるのだが、そこに幾つかの対比の図式を持ち込んでいるのが今作のポイントだ。
例えばパウラという少女の存在、パウラの健気さが男たちを奮い立たせ、それがまたパウラの健気さを際立たせるという構図が上手い。死に行く大人たちと、生き延びる若い命という世代間の対比も実に効果的だ。
そしてラスト、海中に流れるパウラの歌声がそれら全てを一つにまとめて昇華していく。
福井晴敏の才能が遺憾なく発揮された傑作と言って良いだろう。