野中広務 差別と権力

著者 : 魚住昭

• 講談社 (2004年6月29日発売)

感想・レビュー・書評

[コギーさんの感想 · 2023年10月16日]

古本、2004(平成18)年刊行。
早いもので、野中が亡くなってもう5年も過ぎた。野中が政界を引退してから、20年になる。
野中の政界引退については、同和地域(被差別部落)出身という出自が取り沙汰されたことが大きい。その際、麻生太郎が、「野中ら(麻生は、野中の他の有力議員についても、実名を挙げたとされる)部落の人間が総理大臣になるべきではない」と発言したという。その麻生は、自らの首相時代に自民党を下野させてしまうという、世が世ならば切腹となるようなことをしてしまった政治家なのだが、自民党の政権復帰と同時に副総理という要職に返り咲き、現在も80歳を超えてなお、自民党副総裁という要職で政権に影響を与えている。その間、自由民主党という政党は、民主党政権下での野党経験もあったが、野中が影響力を持っていた時代と比較し、確実に劣化してしまっていると言わざるをえない。

[gakudaiprofさんの感想 · 2023年6月4日]

差別について記載している場所はほんのわずかであり、ほとんどが野中の政治での手腕についてであった。
　差別の説明はあまりないので、学生にとってはわかりづらいかもしれないが、政治家とのやりとりについてはわかりやすい。

[晴曇雨読さんの感想 · 2017年9月17日]

2017年9月19日読了

[lacuoさんの感想 · 2015年11月6日]

魚住昭はさすが。
野中を差別した麻生太郎は許し難い。

[モリゾウさんの感想 · 2013年12月23日]

野中広務という政治家を通して、差別や人権、金と権力という現代日本の政治システムを陰に陽に動かした力を描く。差別はいけないという通り一遍のタテマエではなく、本書の執筆自体を当事者である野中自身に問い詰められながら、それでも書くことを「業」として選ばざるを得なかった著者の気迫がにじむ。
あまりに情報収集とその処理という実務能力に長けていたため、権力への階段を駆け足で上がっていった野中は、一方でその師である角栄のような「大きな構想力」はなかったと著者は言う。いつしか目の前の仕事を誰よりも早くこなすことに自らの存在意義を見出し、所謂「一番病」となって官僚機構に操られてしまう。そして最後には「総裁」という大きな壁の前にまたしても自らの出自が立ちはだかる様を見せつけられ、永田町を去る。

[ざき★やまさんの感想 · 2013年8月12日]

野中ってすごい･･･
でも所詮二流だわ。思想がねぇ。
→差別からくる闘争心・権力欲

[水源地さんの感想 · 2011年6月28日]

政局の鬼、部落出身者、差別に関して厳しく、そして温かい野中広務の本。

野中広務の半生とともに、情報収集能力、脅しや弱者へのまなざしから、総理候補までになった人間である。と同時に、政局のみであって、パイプ役までしかできないことが限界でもあった。

特に政策では、親共、反小沢と政局のためには自説を曲げる人でもあった。

[take_funさんの感想 · 2010年10月15日]

追悼番組で故人・後藤田正晴さんが野中広務さんを非常に信頼されていたことを知り、興味が湧いて読んだ。さっと政治の世界から抜けられたのも印象に残っていた。そのバックボーンを知り、氏に対する印象が大きく変わった。

[NOさんの感想 · 2005年7月31日]

部落出身の政治家の野中さんのパワフルな半生。共感できる部分も確かにあった。蜷川さんとのやり取りは興味深かった。

著者プロフィール

魚住　昭（うおずみ・あきら）
1951年熊本県生まれ。一橋大学法学部卒業後、共同通信社入社。司法記者として、主に東京地検特捜部、リクルート事件の取材にあたる。在職中、大本営参謀・瀬島龍三を描いた『沈黙のファイル』（共同通信社社会部編、共同通信社、のち新潮文庫）を著す。1996年退職後、フリージャーナリストとして活躍。2004年、『野中広務　差別と権力』（講談社）により講談社ノンフィクション賞受賞。2014年より城山三郎賞選考委員。その他の著書に『特捜検察』（岩波書店）、『特捜検察の闇』（文藝春秋）、『渡邉恒雄　メディアと権力』（講談社）、『国家とメディア 事件の真相に迫る』（筑摩書房）、『官僚とメディア』（角川書店）などがある。

「2021年 『出版と権力　講談社と野間家の一一〇年』 で使われていた紹介文から引用しています。」