エリカ 奇跡のいのち

  • 講談社
4.06
  • (31)
  • (30)
  • (24)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 308
感想 : 58
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (25ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062124850

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  平和を願うための絵本として手にした作品になります。1944年の第二次世界大戦中、主人公は生まれて2~3カ月程度の女の子の赤ちゃん、ユダヤ人強制収容所に向かう汽車が村を通過中、車窓から母親は赤ちゃんを放り投げ…ドイツ人に拾われた赤ちゃんは、エリカと名づけられ成長し家族を持てたというストーリーです。

     ヒトラーのユダヤ人虐殺において600万人もの尊い命が犠牲になっています。そんな中、少しでも生き残れる可能性があるのなら…と、赤ちゃんを汽車から放り投げる母親…その気持ちを思うと、いたたまれない気持ちになります。そして、赤ちゃんをエリカと名付けて大事に育てたドイツ人の彼女も、そしてエリカの夫となった彼も…そこにあるのは、尊い命を守りたい…その気持ちだけだったのだと思います。

     戦後、そして今の時代でも変わらないのは、命はどんなこと、どんなものよりも尊い…!!絵本だけれど、メッセージ性の強い内容なので多くの人に読んでもらえたらいいなって感じました。

  • 表紙を見てすぐに強制収容所に行く列車とわかった。そして兵士の横にある白い乳母車。当時、列車に乗せられた人たちはどうなるのか、多分知らされていなかった。それでも、母親は子供を救うため、列車の外へ投げた。誰かに助けてもらえるかもわからなかったのに。そして、危険を冒して養母は育ててくれた。エリカと名付けて。
    ユダヤ人虐殺に加担したのも、危険を顧みず助けたのも人間。戦争によっておかしくなってしまう人もいるし、そうならない人もいる。運かもしれないが、助ける側の人間になりたい、と思う。

  • 奇跡の物語、そして悲しいのは、彼女を生かそうと決意した彼女の両親は、彼らの死を同時に悟っていたという事実である。

    幸いにも、彼女は自分に課せられた使命の大きさを知り、感じながら生きることができた。それが本当に幸運で、そのために彼女の両親たちが報われている。

    このような彼女の境遇ではなくても、私たちは多くの命のその先に生きている。それを実感するには、やはり歴史を知るしかない。歴史を学ぶことは、いまの自分の使命を明確にすることにもなる。

    どんな人でも、これまでの自分たちの家族、民族、国の成り立ちの軌跡をたどるべきである。それは、同じ過ちを繰り返さず、過去の彼らの思いを引き継ぐために。偏った考えや過ちに気付けるように。

    私たちが生きている時代は今であり、過去を変えることはできない、なじったり、謝ったり、嘆いたり、それは本質ではないと思う。

    歴史をたどると、作り話みたいにあり得ないくらい馬鹿馬鹿しいことが当然のようにまかり通っていることに気づく。

    それは古い時代だから起こった、ということではないと思う。まったく同じことは信じられないかもしれないけれど、他のことでやはりあり得ないようなことが、きっとこれからも当たり前のように起こる。

    ある具体の歴史的出来事だけが仰々しく、まるでそれだけがおかしかったかのように取り上げられるのは、リスクがある。戦争に駆り立てたものは何か。迫害はなぜここまで強まったのか。それを考えたい。

    昔はこわかったんだね、で終わらせては意味がない。むしろ、今の時代は安全ですよ、という宣伝のような気もしてなんか不安になる。時代の過ちのその一部は、きっと消化されないままに、今の時代にも生き続けているだろうから。

  • ハース・バンダー・ジー(米)・文、ロベルト・インノチェンティ(伊)・絵、柳田邦男・訳 「エリカ 奇跡のいのち」、2004.7発行。1944年、汽車がユダヤ人強制収容所に入る直前、「死」に向かう母親が生後2~3ヶ月の赤ちゃんを(「生」に向かって)汽車の窓から外の草むらに放り投げ、それを目撃した村人に助けられ奇跡的に生きのびたエリカの物語です。著者(米国、中学校の教師)は1995年、エルサレム(夏の研究)からの旅でドイツローテンブルグに寄った時、エリカに出会い、エリカから聞いた話を物語にしたそうです。

  • 実話。1944年。ユダヤ人は強制収容所に送り込まれ、毒ガスなどで大量虐殺された。生まれて間もないエリカは強制収容所に送り込まれる貨物列車の小さな換気用窓から、母親によって投げられた。「お母さまは、じぶんは「死」にむかいながら、わたしを「生」にむかってなげたのです。」ユダヤ人の子どもをあずかるという危険をおかしてでもエリカを立派に育てた女性は凄いと思った。

  • 誕生日も本当の名前も、本当の両親も知らないユダヤ人のエリカという女の人が語る。
    第二次世界大戦中、強制収容所に送られる汽車の窓から、一人の赤ん坊が投げ出された。
    汽車がカーブに差し掛かってスピードが緩んでいたのもあり女の子の赤ん坊は助かった。
    ユダヤの赤ん坊をかくまうことは罪になると知っていたはずだが、赤ん坊を拾った女の人はきっとエリカという名前だったに違いないとして、育てたのだった。
    エリカの本当の母親は自分が死に向かっていると知った中で、少しでも生の可能性のある方へ娘を向かわせたのだった。
    通常なら窓から投げすてるなんて殺人に問われるものだが、その状況では窓から投げすてらてることが生への道だったのだ。
    ユダヤは600万の星になったとエリカは語る。

    もしかしたら、打ち所が悪くて死んだかもしれない。
    投げ捨てられてそのまま誰にも拾われずに死んだかもしれない。
    きっと他にもそういう例はあったのだと思うけれど、生き残れるかは運、としか言いようがない。
    「死」が支配す強制収容所の話の中の「生」の話。

    関係ないけれど、柳田国男と柳田邦男の違いがやっと分かった。
    紛らわしい…。
    柳田邦男という人を正しく理解していなかった。

  •  その女性は自分の誕生日も生まれた時につけられた名前も何も知らない。知っていることは、強制収容所に入れられる直前に助けられた時、生まれてやっと2~3ヶ月の赤ちゃんだったということだけ。収容所に向かう貨車の小さな窓から外に投げ出された赤ちゃんは、村人に助けらエリカと名づけられ育てられた。
     落ちた時の衝撃で死んでしまうかもしれないし、ユダヤ人だからと助けてもらえないという可能性だってあったのではないだろうか?けれど、そのまま強制収容所につけば待っているのは、「死」。かなうことなら生き延びて欲しいと願い、我が子を窓の外へ放り投げたエリカの親御さんの気持ちを考えると悲しい。

  • 死を直感した両親が、列車から一縷の望みを託して、強制収容所行きの列車の窓から我が子を投げ出した。多くを語らない絵本から、その思いが滲み出す...

  • 戦争を勉強した後の6年生に読みました。(10分)時間短縮のため、出会いのところは省略して説明だけ少ししました。あとがきも少し抜き出して読みました。

  • ユダヤ人の彼女の身の上に起こった奇跡を思うととても切ないです。

柳田邦男の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×