恋人たち

著者 :
  • 講談社
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感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062147491

作品紹介・あらすじ

画家の彩夏を、優しく包む大貫。盲目の舞子を、さりげなく支える恭一。一枚の古い写真とマチスの画集が四人を出会わせた。二組の恋人たちの間に、はぐくまれる絆と優しい時間。あなたと一緒に眠りたい。でも、こんなに幸福なのだから、ひとりで眠るのもわるくない。どこまでも凛とした恋の形を描く長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 歳の離れた大貫と彩夏、事故で失明した舞子と恭一。2組の恋人たちがマチスの画集と古い写真に導かれ、それぞれの未来に向かって歩き出す物語。生活臭のない物語だけど、登場する人物はみな透明な空気を持ち、気持ちよい人に描かれていて、好きです。

  • 久々に好きな文体の作家さんを見つけた!!

    違う形の恋人達2組が偶然の導きで出会い、お互いの関係性に影響を与えていくお話。
    最後の方は、予め終わり方を決めていてそこに残り数ページで帳尻を合わせていくような性急さが気になったけど、トータルして読みやすく寝る前の時間に読んで3日程で読了出来るボリューム感もよかった。

  • 大人の物語
    みんなカッコいいし
    素敵だった
    含みを持たせて終わったから
    まだ続きそうな気もする

  • しっとりと静かな縛ったり縛られたりしない関係。
    共依存してないのが心地いい。

  • 主人公の彩夏は絵を書いていて、広告代理店の十五歳上の大貫さんと2年ほど同棲中。
    でも、ふたりの間に明確なもの何もなくて、
    『そばにおいてくれない?』
    という彩夏の言葉で始まった生活。
    恋人と言い切れる関係ではなく、
    『でていきたくなったら、でていけばいいよ』
    そんなゆるゆるしたもので繋がっている。
    (こういう設定は好き。でも、主人公の彩夏の感じがあまり好きにはなれなかったな…)

    それから、もう一組。
    大貫さんの昔の恋人に似ている恭一さんと、その盲目の恋人、舞子さん。
    (舞子さんも苦手な感じ。このお話に出てくる女性陣が苦手なのか…)

    この二組のカップルが些細なきっかけで知り合い、お互いの家を行き来するなかで仲良くなっていく内に、それぞれの恋人へ気持ちを深めていく…
    進むことを恐れてしまい、一つのところにとどまってしまった人たち…そんなお話でした。

    正直、感情移入はあまりできませんでした。
    けれど、野中さん独特のふんわりした世界観は味わえました♡

  • 表紙のマティスの金魚の絵がだいすき!

  • 978-4-06-214749-1 251p 2008・5・27 1刷

  • 空気中の埃が、光を受けて、きらきらと光っているように見えることがある。
    あるいは、雨上がりに、道端の草が水滴をはじいて輝いている、とか。
    そんな、はっとするような感覚を、持続的に描くのが、この人はうまい。

    主人公の彩夏は絵描きで、広告代理店の十五歳上の大貫さんと二年間、同棲している。
    とはいえ、ふたりの間に明確なものはなにもない。
    そばにおいてくれない?
    でていきたくなったらでていけばいいよ。
    こんなゆるやかなもので、二人は繋がっている。

    彩夏はふと彼の部屋で、マチスの画集に挟まっていた一枚の写真を見つける。
    若かりしころの大貫さんと、その彼女の写真。
    食事した店先で見かけた男性が、その彼女に似ている。しかもマチスの画集を持っている。
    きわめつけに、一緒にいる女性、舞子に、彩夏は一目惚れに近い感情を抱き、絵のモデルになってくれるよう依頼する。

    舞子は盲目だけれど快活な女性で、すこし強気で、恋人である恭一を翻弄する。
    結婚しようと言えば笑って受け流す。
    それは、彼女と恭一の過去のせいだった。舞子の恋人であり恭一の友人だった彼を舞子の運転する車の交通事故で亡くしてから、ふたりは、ふたりだけで構成される繭の中で生きてきた。

    彩夏のことばを借りるならば「他人を不在にするような」空気感をつくって。

    この物語は、どういう方向に転ぶのか途中まで全く読めなかった。
    予定調和的な筋運びというよりは、神さまのさじ加減のように新しい波紋が落ちて進む形になる。
    ギリシャ神話の巨人、アーガスの眼。

    読み終えてタイトルを見て、あ、と思った。
    「すでに恋人である人たち」というよりも、
    「これから恋人であるべく進みだすひとたち」の、
    恋人たち、ではなかろうか。

    進むことを恐れてひとところに留まってしまった、
    二組の男女。
    野中柊さんの表現は抒情的で好きです。

  • 画家の女と年上の恋人、盲目の女と彼女を支える恋人。2組のカップルが出会い、穏やかに激しく変化していく。お互いの恋人同士を好きになっちゃうのかと思ってたけど、そうじゃなかった。いい雰囲気の小説。読者数が少ないけど結構素敵な作品だと思う。2013/181

  •  しっくりいっているようで、綱の上を慎重に進んでいるような危うげな調子だったり…。そんな2組の恋人同士を見守るようなおはなし。野中さんの、この空気感すきです。

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著者プロフィール

野中 柊(のなか ひいらぎ)
1964年生まれ。立教大学卒業後、ニューヨーク州在住中の1991年に「ヨモギ・アイス」で海燕新人文学賞を受賞して作家デビュー。小説に『ヨモギ・アイス』『小春日和』、『銀の糸』、『公園通りのクロエ』、『波止場にて』『猫をおくる』など、エッセイ集に『きらめくジャンクフード』など、童話に「パンダのポンポン」シリーズ既10巻(長崎訓子 絵)、『ようこそ ぼくのおともだち』(寺田順三 絵)、「本屋さんのルビねこ」シリーズ既2巻(松本圭以子 絵)、絵本に『赤い実かがやく』(松本圭以子 絵)など著書多数。『すてきなおうち』(マーガレット・ワイズ・ブラウン 作/J.P.ミラー 絵)など翻訳も手がける。

「2020年 『紙ひこうき、きみへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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