- Amazon.co.jp ・本 (98ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062153492
作品紹介・あらすじ
15歳で将来の夢を料理人と決め、故郷を離れた三国少年。貧しかった少年の頃、働きながら夜間の調理師学校に通った日々、料理を作ることがかなわず鍋洗いに明け暮れた修業時代。「神様はどうしてこんなに不公平なんだろう?」と思いながら、育ちや環境を恨みもせず、ひたすら壁を乗り越え前に進み、料理人として世界的な成功を収めた。しかし夢をかなえたいま気づくのは、味覚も精神力も、すべては子ども時代に培われていたという自分のルーツだった。豪快で飾らない語りは、次世代をつくる若者たちへの愛情にあふれている。
感想・レビュー・書評
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フランス料理のシェフ・三國清三さんが中学生を対象に自分の歩んできた道のりとその思いを誠実に語りかける1冊。
私が三國さんを知ったのは、確か、小学生に向けて味覚の授業を行っている姿をTVで見かけたのが最初だったと思います。
子どもを子ども扱いせず、対等な人間同士として人生を豊かに生きていゆく術を、優しく語りかける姿が心に残っています。
特に印象的だったのが味覚についての話。
味覚の中でも、「苦み」を知ることの重要性を強調していらしたのです。
そもそも苦みとは、動物にとって毒である可能性から本能的に回避されるもので、あえて食べる経験を通して初めて身につくものであるとのことでした。
例えばさんまのはらわた。
私が子どものとき我が家ではさんまを半分に切って焼いていたのですが、子どもは尻尾側を選んでいました。尻尾側にはほとんどはらわたがないので、苦みを感じることなく、身だけを食べられますからね。
三國さんは、子どもにも味わってみることを勧めています。経験を重ねる中で、いつしかそれをおいしいと感じられる感性が育つとおっしゃっています。
山菜についても、然り。
春先にようやく芽吹いた新芽を食べられないよう、苦みを蓄えたものが多い山菜も、子どもにとってはさほどありがたいものではありません。
しかし年齢を重ね、あるとき、そのおいしさに気づけるようになる。それを食べることで、冬の間自分の中に溜まっていたものを、山菜のほのかな苦みやえぐみによって排出できるような気分にさえなる。
食事は確かに体を作るために大事な、欠かせないもの。
けれど、ただそれだけが目的でなく、有機的にその人の生活や感性を豊かにしてくれ、耕してくれるものであると、この本を読んで改めて感じました。
それぞれの分野で、最高の仕事をする人の経験や言葉には想像もできない驚きもあるけれど、実は私たちにも実行できそうなこともある。それを手を抜かず、誠実に取り組み、期待以上の成果を出し続けるところに難しさがあると強く感じます。
大人でさえ(大人だから?)、その生き方に感銘を受けるので、当初予定された多くの若い読者に手に取ってもらいたいと思うのです。感受性の強い世代にこそ読んで、感じてもらいたい。
私たちが悩みや困難にであったとき、あれこれ迷うばかりでその一歩を踏み出せずに躊躇しているところを、三國さんは勇気や機転、決断力などをもって、立ち向かっていく。
自分の進むべき進路に迷ったり、立ちすくんでいたり悩みの多い世代には考えさせてくれる何かを見つけられると思います。
また、三國さんが経済的には貧しかったけれど新鮮で旬の食材に囲まれていた少年時代の豊かな食を回想し、それを与えてくれた両親に感謝して、自らの原点に思い至る場面がありますが、私も同様に子どもの頃の食事に想いをめぐらせることができたのも、大きな収穫でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
一気に読ませながら読み応えのある本。JRの終着駅から札幌→東京→パリへとひたすら前に進む姿に共感できる15歳はまずいないだろうけど、読めばどこかに残るだろうな。
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シェフ三国が歩んできた道のりがよく分かります。
本の中に、思いを達成するためのヒントがあります。
ときどき くすっと笑わされました。
この15歳の寺子屋シリーズ、おもしろいです。 -
貧しい少年時代を過ごしてきた著者は、料理人になれば暖かい場所で働くことができて、食べ物に困ることもないのではないかと考え、15歳のとき料理人になろうと決心します。
高卒でないと雇ってはもらえない札幌グランドホテルの料理人として、どのようにして就職できたのか。またその後、帝国ホテルでの修行時代、どのようにして壁を乗り越えていったのか。本書を読んでいただくと目標へ向かう「前進力」の大切さを感じることができますよ。 -
行動力がすごい!
日本で超一流のシェフとなる人の半生だから、もっと教訓臭いかと思っていたけど、かなりうなずきながら読みました。
特に、今の子供たちはファストフードで育っていて、味覚が危ないというところ。日本人の繊細な舌を維持しないことには、日本食の未来はないですよね。 -
★★★★☆
北海道の貧しく厳しい幼少時代から、料理人を志す。
味にも、生きることにも、ひたすら貪欲で自分に妥協を許さない姿勢がうかがえます。
いずれも先輩や両親、お客様への敬意と感謝の気持ちが土台となっているから、まっすぐ立っていられるんだなあと。
(まっきー) -
作者の幼少時代から現在に至るまでが描かれています。最初から何でもできたわけでなくむしろ、貧しさの中で「神様は不公平だ」と思いながらもしっかりと自分を持ち続けた気持ちが伝わります。
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志は平等だ!