来たれ、野球部

著者 :
  • 講談社
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感想 : 49
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062172851

感想・レビュー・書評

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  • 鹿島田真希がラノベ?!
    と思いきや、もちろんそんなわけはなく。
    既存作品とのギャップに読み進められないのではないかと危惧しましたが、なんの、一気読み。甘い!ほんとに甘い。自意識過剰がもう、ほんとに甘酸っぱくって。
    心の中のぐるぐるうずうず、どろーんとしたものを淡々と、ぼやーっと?
    語るのが鹿島田作品かな、と思ってたのですが、喜多、奈緒、小百合先生、それぞれの思いが解しやすい一人称で語られていて読みやすく、また喜多が落ちた後のまとめもあるから、読後感はさわやかでした。

    「怖い」「恐い」「残酷」って、前半喜多からも奈緒からも先生からもよく出てきたように思う。
    強引にして嫌われること、独り占めできないこと、拒絶したら相手が壊れてしまいそうなこと、罪深い人こそ美しいと思いそれを肯定してしまうこと、喜多が他の人を好きになること、自分を好きなら言いなりになるはずだと思うこと、本当のことしか言わないこと、好きな人を盲目的に好きでいること、好きな人に拒絶されること。
    後半は、喜多から「恐い」に類する言葉が語られず、つまり自分の世界に引きこもることで恐さを克服?したんだと思うけど。逆に、奈緒はその恐い、を「喜多から独立して成長しなくては。」という風に克服していこうとしていった(んだよね?)つまり、ぬくぬくとしたとこから多少しんどくても進んでいかなくてはと。

    多分、物語全体をつらぬくテーマは、生きてくって怖い、がんばっても報われないことが多いしほんと死にたくなることもある、苦しいことからだって解放されない、そんななかで何かしら発見して、ひとは生き延びてく、って。集中治療室の前で、浅田先生と小百合先生と話していることそのもの。
    だからタイトルは「来たれ、野球部」なのかな。浅田の生き方こそこの本のテーマ。

    生きてくって怖い。のほほんと、毎日同じことの繰り返しだけど、やっぱり怖い。
    けど、なんとかなるんだよね。つらくても失敗しても。もう終わりだーって思っても。自分の力で何とかできることもあるし、誰かが助けてくれることもある。
    それを再確認した。

    ちなみに私は、抱えている恐さはさっさと吐き出すようにしているつもり。
    そのうえで、つきすすむ。かっこわるさはさっさと見せちゃう。で、助けてもらえることは助けてもらう。

    1つ気になるのは。
    「本当に好きなら、もっと残酷になるはずよね。」ってどういうことだろう。
    独占したくて、それが行き過ぎでなぐっちゃうとかそういうこと?
    相手から傷つけられる前に、相手を傷つけてしまおうとしてしまうことかな。。。残酷って、具体的にはどういうことだろう。

    • bk2skyfsさん
      図書館でふと手に取って、読んでしまいました。話のツボが見えず ずーっとフシギな感じがしていましたが、kechocoさんのレビューを読んで、幾...
      図書館でふと手に取って、読んでしまいました。話のツボが見えず ずーっとフシギな感じがしていましたが、kechocoさんのレビューを読んで、幾分か腹に落ちました。感謝です。

      最後に書かれた「本当に好きなら、もっと残酷~」ですが、私の解釈は"強くなり過ぎた愛情は『独占したい・相手からも愛情を返してほしい・自分の理想の人でいてほしい』が際限なくエスカレートするものだから・・"、です。
      小百合先生はそういう体験を持っていたんでしょうか? 話の中では語られませんでしたが・・。
      あまり後半の展開にリンクしていないので、外れているとお感じになったらスミマセン。
      2012/01/29
    • kechoさん
      bk2skyfsさん>
      どういたしまして。そして、解釈ありがとうございます!
      確かに小百合先生の背景はあまり語られていなかったと思うのですが...
      bk2skyfsさん>
      どういたしまして。そして、解釈ありがとうございます!
      確かに小百合先生の背景はあまり語られていなかったと思うのですが、私も好きだからこそ残酷、というと、相手を自分の足元にひざまずかせたいというか思い通りにしたいというか、独占欲・征服欲なのかなあと感じてます。
      解釈近そうですね?!
      2012/01/30
  • 爽やかな表紙、タイトルから明るい青春ものだと勝手に勘違いして読みました。

    完璧な優等生、喜多義孝。その幼なじみの地味めな子、宮村奈緒。
    二人の担任で野球部顧問の浅田大介。音楽教師の小百合先生。
    微妙なバランスを保っていた幼なじみ二人の関係の変化と、
    その間に絡んでくる十年前に自殺した新田真美の日記が落とす波紋が
    主軸になって物語が進んでいきます。
    それぞれが自分の日常の目立たなかった影と直面しながら、
    後退なり成長なりをしていく話なので、青春ものなのは確かです。

    4人の視点がくるくると入れ替わっていく文章のため、
    読みづらいと感じるところもあります。
    ただ、違う人物がその内面ではこんなことを…みたいな引き込まれるもの
    はあるので、それはそれで私は面白く感じました。

    そこよりも、ちょっと主観になる登場人物たちの誰にも一寸共感というか
    理解がしづらかったです。
    なので、展開に追いつかないというか、なにがどうしてそうなったというか…。特に喜多くん。
    青春の一面だと思いますが、死や自殺などのテーマが絡んでくるので
    薄暗いですし、その割には何かすんなり落ちてきませんでした。
    面白いとも思えるのですが、終盤で超展開にしか感じられなかったからかもしれません。
    ちょっと人には勧めがたいかなぁ、と読み終わって思いました。

  • 心の表裏。

  • 私も表紙とタイトルに釣られたクチですが、重かった…。思春期ってこんなもんかなと思いつつ。野球は最後しか出てこないです。

  •  何故にこのタイトルとイラストなんだ?と思いましたが、あぁこれは齟齬なんだなと、噛み合わない気持ち、表面から窺えない心、自意識の葛藤、そういった他人と分かち得ない自分だけの感情を生々しく書きながらも、傍から見たらきっと爽やかな高校生活。そんなギャップを象徴してる訳なのね。

  • タイトルからの想像とはかけ離れた内容。タイトルで爽やかさが全面に出ている分、それぞれの病みっぷりに少々酔いました...。好みの問題だと思います。

  • 優等生で人気者の少年と平凡な幼なじみの少女の青春恋愛小説、に見せかけて、彼ら(主に少年)の自意識と、思春期の暴走と残酷さを描いた作品。
    孤独感と周囲への恐怖に怯えて、幼なじみの奈緒に異常なまでの依存と愛情を抱いている喜多が、昔自殺した女子高生の日記に共鳴して、どんどん過激な思想に陥っていく。その様がまさに猪突猛進で暴力的で、思春期の生きにくさ、気持ち悪さが上手く描かれている。

    いわゆる中二病的な痛々しさを持つ優等生と、冷静で大人びた幼なじみ、永遠に明るい世界で生きるかに思われた担任教師、思春期の残酷さを冷静に見つめる音楽教師の4人の対比がきれいで、同じものを見ながらもそれぞれの捉え方がちがうのがおもしろい。

    表紙・タイトルと中身のミスマッチさは評判(批判?)通りだけど、外から見ればキラキラしている高校生の青春と、依存や残酷さに満ちあふれた思春期の心の闇という対比に、装丁と小説本体のギャップが一致している。
    でもやっぱり、この表紙はラノベ慣れしていない人間からするととっつきにくい。タイトルもラストは野球を題材にまとめていくからミスマッチとは言いがたいけど、タイトルから彷彿させるほどの野球っぽさはないのも確か。

    途中あまりの話が暗くて薄気味悪くなっていって、このまま喜多の凋落で終わっていくのかと心配したけれど、最後には救われた様子が提示されて、小説冒頭のようなさわやかな青春小説に引き戻されたからよかった。

  • メンヘラ主人公の高校生活

  • 野球小説だと思って読むと最悪。野球なんかほっとんど関係ないのにこんなタイトルをつけるのは詐欺に等しい。つまり、これ恋愛小説。しかもちょっぴりオカルトめいた恋愛小説。喜多が壊れていくさまが怖い。自分が特別だとか思いこんでるような感じで鼻もちならない。喜多は好きになれないけどストーリー展開としては悪くない。ただタイトル詐欺。2012/302

  • だいたいある本を読むときはその作家が好きだから、とか好きな人が紹介してたから、というので2点とか1点とかはよほどのことが無い限りつかない気もするので、ブクログで平均3点以下はあんまりつかないと思うんですが、
    ・賞を取ったりですごい話題作でその作家を知らない人がいっぱい読む
    ・表紙と中身が余りに食い違っている
    ・その作家の中でも余り良い作品ではない
    とかが重なると3点以下の悲惨な点数になるわけです。
    何が言いたいかというと、そう、これは表紙詐欺です!
    鹿島田真希が爽やかな青春ものなんて書く訳が無いじゃない!分かってたことでしょ!
    しかしこの可愛らしい表紙で「来たれ、野球部」なんて青春ものっぽいタイトルでこの内容は余りにあんまりでしょう。鹿島田作品に慣れてる自分でもさすがにちょっとって感じでしたよ。
    文体は普段の感じとは違って軽めで、『二匹』とかこんな感じだったかなーとも思うんですがもう読んだのが7年前とかだから覚えてない。
    内容もなー思春期の暴走する優越感というか絶対感というのが書きたかったんでしょうけど、登場人物の言ってることとかやってることが突飛で、ちぐはぐな感じ。
    ってな訳で微妙でした。

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著者プロフィール

1976年生まれ。1999年、「二匹」で第35回文藝賞を受賞しデビュー。2004年、『白バラ四姉妹殺人事件』で第17回三島由紀夫賞候補、2005年『六〇〇〇度の愛』で三島由紀夫賞受賞。2006年「ナンバーワン・コンストラクション」で第135回芥川賞候補。2007年『ピカルディーの三度』で野間文芸新人賞受賞。2009年「女の庭」で第140回芥川賞候補、『ゼロの王国』で第5回絲山賞を受賞。2010年『その暁のぬるさ』で第143回芥川賞候補。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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