- Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062176866
作品紹介・あらすじ
月曜日の夜、「ひるま美容院」の暗い店内に、あまいシャンプーの香りが立ちのぼる。まゆ子の髪を、ナオコ先生は指をすべらせるように、やさしく洗い流していく。シャンプーのやわらかな指先に、心を閉ざしていたまゆ子の心がふっくらとやさしくほどかれていく。言葉を失った少女の再生をていねいな筆致で描く、新しい児童文学の誕生。第52回講談社児童文学新人賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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タイトルは「よるの美容院」。
お店の名前は「ひるま美容院」。
ネーミングの妙の面白さもあるが、タイトルは、主人公の「まゆ子」にとって、とても大切な意味合いを持つ。
まゆ子の身に起きた異変は、シリアスに重くなりがちなテーマであるが、それを、のんびりと温かく描いているところに、この作品の良さがあると思いました。
そこには、周りの温かい人達に囲まれながらの暮らしもあるし、「ナオコ先生」のまゆ子との距離感も良い。役割をきちんと与え、見守りつつ、そっと助言をしてくれる。「しずかな魔女」もそうだったが、「気づき」を促すことが、本人にとって重要なのだと思いました。それがどんなに辛いことでも、共に寄り添ってくれる人がいれば、その時だけは、おもいっきり身を委ねれば、次から前に進める。
まあ、美容師さんのシャンプーが絶品なのも確かだということで。心地よさは分かるなあ。
ただ、別れの場面は読んでる私も悲しくなって、妙に感情移入してしまった。若い頃の、好きな人達との別れは、仮に一時的だとしても、妙に辛いものを感じる。まるで卒業式のように。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久しぶりに、児童書コーナーへ。
講談社児童文学新人賞受賞作ということで、読んでみました。
主人公、まゆ子、12歳。
友達のタケルの”事故”を目撃してしまったことや、
母の愛情と期待に応えることが苦しくなって、
言葉を口にすることができなくなってしまった。
親元を離れ預けられた親戚の家は、昭和の香りがぷんぷんする「ひるま美容院」
そこの女主人の「ナオコ先生」
大きなふさふさの毛をした赤茶色の猫「ジンジャー」
見習いのサワちゃん、タケルそっくりの颯太、
古本屋のダジャレおじさん、コロッケ屋のおばちゃん。
彼らの温かなまなざしに包まれて、まゆ子の凝り固まってしまった心が、ゆっくりほぐれていく様子がとても良かったです。
ナオコ先生の”天使の手”のシャンプー、どんなに気持ちいいんだろう…。
あと、猫のジンジャーの無愛想感(笑)がいい味です。
もっと登場してほしかったなぁ。
またサワちゃんとダジャレおじさんの不仲の理由が可笑しくて~。
”児童文学新人賞作品”…
児童と呼ばれた日は遥か昔でも、これだけ感動できたことに、
まだまだ純粋無垢な心を持っていると、ひとりほくそ笑む私です(笑)
やさしくて、温かい一冊でした。 -
まゆ子は12歳。 遠い親戚であるナオコ先生の経営する昭和の匂い漂う美容院で穏やかな日々を送っている彼女なのだけど、段々に背負っているものが知らされる…。.
タイトルの「よるの美容院」とは、休みの前の月曜日の夜、ナオコ先生がゆっくりと時間をかけてまゆ子のシャンプーをしてくれるところから。
気持ちの強張りが先生の“天使の手”でほぐされていく描写がとても優しい。(#^.^#)
まゆ子がなぜ家を離れて、「ひるま美容院」で暮らしているのか、また、徐々にわかっていくのだけど部分緘黙症であるらしい彼女のしこりの原因は?という流れが、無理なく明かされ、また、美容院の常連さんたち、商店街の人々、美容院にアルバイトに来ているサワちゃんや弟の颯太、などがみんな自然体の温かさでまゆ子にいいものを与えてくれるあれこれを嬉しく読むことができました。
ナオコ先生の物に動じないキャラもよかったなぁ。
今どきの小学生の闇、と言えば、すわ、苛めか!となるのだけど、そんな安易な展開ではないところも巧いなぁ、と・・・。
これって講談社児童文学新人賞なんだよね。新人とは思えない手練れの作品、という評が帯に載っていただけれどホントそうだなぁ、と思いました。
でも・・・欲を言えば、まゆ子とお母さんの関係がもう少し書きこまれてほしかった気がします。
娘が緘黙症ということで取り乱すのもわかるのだけど、それが少々ヒステリックすぎる、というか唐突な感じ。お父さんがいいとこ取りしてるみたいなのもなんだかなぁ、と思っちゃうし。
これは私がお母さんだからお母さんの味方をしたい、という面があるのだろうけれど。 -
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タイトルから不思議なお話なのかと思って読み始めましたが、とても現実的な話でしたね。新たに旅立つことにしたのがやはり良かったのだと思います。タイトルから不思議なお話なのかと思って読み始めましたが、とても現実的な話でしたね。新たに旅立つことにしたのがやはり良かったのだと思います。2013/05/24
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再び歩きだすために。
伝えることのできなかった言葉が、澱のようにたまっていく―。
こわばっていた心をナオコ先生の指がやわらかくとかしていきます。
言葉でみえる「やさしい」より、言葉で表現しないやさしさの方が、心の奥に届くよね。
すべての場面が描かれているわけではないし、まして、問題のすべてが解決したわけではないのだけれど、だからこそ、胸が痛いほど、心を揺さぶるのだと思います。
最後の2通の手紙。
「うそは書いていなかった。かといってぜんぶでもなかった。」
涙が止まりませんでした。 -
4/5はヘアカットの日
つらい記憶のせいで声が出ない少女。彼女と暮らす先生が営む美容院で、
先生はまゆ子の髪をやさしく洗う… -
講談社児童文学新人賞受賞作。傷ついた小学生の少女の再生の物語。登場人物が皆暖かい。
ダジャレばかり言っている古本屋のおじさんが、少女が自分の居場所に帰る時につぶやく。
「、、、じゃーにぃ」 旅。
舞台の美容院が素敵すぎる。
傷ついた少女に気を遣いすぎず、かといって見放しはしない。程よく見守る。
読後、あたたかい気持ちが充満します。 -
まゆ子の心が温かい大人や環境に癒されていく物語。昭和感もあり、大人が読むと、懐かしいかんじもある。
まゆ子モテモテで、女子は楽しく読める( ̄∀ ̄) -
講談社の児童文学新人賞受賞作品。
つらい記憶のせいで声が出せなくなってしまった主人公のまゆこは、昔ながらの美容院をやっているナオコ先生のもとで暮らす。
そこでの生活を通して、自分の傷と向き合い、人の優しさに触れ、少しずつ心を開いていくまゆこの姿や、ナオコ先生の優しさの奥にあるものが明らかになっていく展開に、ぐいぐい引き込まれて一気に読んでしまいました。
そして、作品に漂う優しさに、気が付けばボロボロと涙をこぼしていました。自分が具体的にどこに感動したのか分からない、だけど、思いやりにあふれた日常の積み重ね、そして人の優しさが、人の心を救うんだということを、じんわりと実感させてくれ素敵な作品でした。