りっぱな兵士になりたかった男の話

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062177627

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  • カスパールは、兵士の「決まり」を守ることが最も重要だと考えていた。
    毎日紙に書いた「決まり」を何度も読み返して、りっぱな兵士に
    なろうとしていた。

    ある日上官に、風の山の上にある風車小屋を監視することを命令された
    カスパールは、「疑問を持ってはならない」という決まりのとおり、
    なぜ監視が必要かを知ろうとも思わず、風車小屋の監視に赴いた。

    風車小屋の中には木箱があるだけで、ホコリだらけでベッドも机も無かった。
    カスパールは言われたとおり、風車小屋の監視を始めた。

    次の日、シワだらけのおじいさんが、大きな牝牛をつれて風車小屋の
    近くまでやって来た。
    カスパールは命令された通り、おじいさんを風車小屋から遠ざけようと
    威嚇した。

    おじいさんは、カスパールがなぜこんな風車小屋を監視しているのか
    不思議に思って聞いたが、カスパールは命令だからとしか答えない。
    それでもおじいさんは、毎日カスパールに食べ物を持って会いに来た。

    世の中の空気は戦争へと向っているようだったが、カスパールは次の命令が
    来るまで、かたくなに監視を続けるのだった。

    やがて、敵の飛行機が山を越えて、町を攻撃し始めた。
    それでもカスパールは、命令された監視を続け・・・。

  • りっぱな兵士になるための心得

    1どんなときでも命令第一
    2けっして上官に口ごたえしてはならない
    3「はい!」の返事を心がけること
    4軍服のボタンとブーツを、いつでもピカピカにみがいておくこと
    5疑問をもってはならない
    6盗み聞きをしてはならない
    7祖国を愛すること
    8勇気と犠牲の精神をもって、どんな困難な状況にも立ち向かうこと
    9いつでも銃の手入れを欠かさないこと

    カスパールは上官に山の風車小屋の見張りを命令された。
    軍の代表として、たった一人で風車小屋で、敵の動きを探り、誰も小屋に近寄らせてはならない。小屋から帰って来て良いという命令がくるまでそこにとどまる事。

    ばかがつくほど真面目に、りっぱな兵士であるように、上官からの命令を守り続けるカスパール。
    小屋近くに住む、気の良い老人や牛の事まで警戒し、かたくなに職務を全うしようとする。
    そして、敵の飛行機がやってきて、下の街はやられてゆく。戦車もやってきた。自分の隊も応戦していることだろう。しかしカスパールは自分に与えられた役目を、ただ、守り続ける。
    そして・・・


    イタリアのアンデルセン賞受賞作家が、ユーモアをまじえて描く戦争のむなしさ・・・(帯の文より)

  • 兵士であることに異常なほど誇りを持つカスパール兵のお話です。
    「りっぱな兵士」になるための9カ条のメモを肌身離さず持ち、頭に叩き込んでそのメモ通りに行動しようと誓いました。

    その9カ条とは・・
    (1)どんなときでも命令第一
    (2)けっして上官に口ごたえしてはならない
    (3)「はい!」の返事をこころがけること
    (4)軍服のボタンとブーツを、いつでもピカピカにみがいておくこと
    (5)疑問をもってはならない
    (6)盗み聞きをしてはならない
    (7)祖国を愛すること
    (8)勇気と犠牲の精神をもって、どんな困難な状況にも立ち向かうこと
    (9)いつでも銃の手入れを欠かさないこと

    (7)と(8)は一般の人でも心がけるといいと思いますが、あきれるような項目の方が多いと思います。この半分馬鹿げた9カ条を正直者で頑固一徹なカスパールは守り通します。ある日、軍の司令官の命令で密かに山の上の風車小屋を見張るように言われました。任期は次の命令が出るまで。りっぱな兵士を夢見るカスパールは喜んで山へ行って見張りにつきます。そのまま、戦争になり終戦になっても、次の命令がないので、見張りを続けているのです。

    りっぱな兵士は自分の考えで行動することができません。命令があってはじめて動けるというのです。自分の意見を言える方が優秀な兵士だと思うのですが…。命令ひとつで行動をおこす団体行動は、有事の際にはとても役立つことですが、この本の意味とはちょっと違いますね。何年かして、この9カ条に書かれた項目の愚かさにカスパール自身が気がつくことになるでしょう。早く眼をさましなさいよ、カスパール。

    りっぱな兵士に必要なのは「国とその国民を大切に思うこと」です。でもこれは兵士でなくてもできること。庶民、一人一人がこの気持ちでいれば、戦争など起こらないと思いました。

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