- Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062178549
作品紹介・あらすじ
この街でなら、明日が変わる。海が見える市立図書館で働く20、30代の4人の男女を、誰も書けない筆致で紡ぐ傑作連作中編集。
感想・レビュー・書評
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何となくイイ感じのする小説。
読後感がとても爽やかだ。
とりたてて大きな事件や出来事が起こるわけでもない。
海の見える街の図書館に勤める四人の若い男女のありふれた日常を描いた物語。
四人とも、人付き合いが苦手で、うまく友達を作ることができない。
でも、ちょとした出来事で、少しずつ気の持ち方や考え方が変わっていく。
トラウマになっていたものも解消していく。
二十代から三十代の、年齢的には大人ではあるけれど、いまひとつ本物のオトナになりきれない若者たちの切ない恋物語。
四人別々の視点から描かれた連作短編集だが、それぞれが飼っているインコ、亀、金魚、うさぎ、という生き物たちの存在が物語に微妙なアクセントをつけている。
海の見える街が脳裏に浮かび、潮風の香りが鼻をくすぐるようなラストシーンも淡く切ない。
気分がほんわかとなりたい時に読みたくなるような、そんな作品でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
海の見える街の市民センターに…児童館あり、図書館あり。過去の影、最近の傷、、いまだに痛みを引き摺る男女四人の直近模様は、モヤモヤ渦巻き近すぎる息づかい。そんな感情を置いてきぼりにして、サクサク・ズケズケ進む四編は、ラスト数頁で見事検索終了!?の感あり!。かなり面白い新感覚な文体!?。
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後味の悪いハッピーエンドではあったけど、読後感は結構いいという不思議な本でした。
海岸沿いの町にある市立図書館&児童館の職員さんたちのお話です。
「国道沿いのファミレス」の時も感じたけど、出てくる人はみんなどことなく諦めたような眼をそらしているようなやる気のない感じで。
そう嫌なヤツでもないのに、なーんか好きになりきれないというか共感できないというか。
恋愛のフローチャートもいまいち納得できないというか応援しきれないというか。
主人公の男の子がいい歳して情けないのと、奔放であけすけな女の子のせいか。
そもそも男の子、女の子って歳じゃないのに、大学生くらいにしか思えないせいか。
私との噛み合わなさ感が絶えず付きまとうのですが、それでもすいすいページが進むんですな。
その齟齬こそが人間関係ってことかも。
オタクでまじめな読書家の日野さん、いい子なのになぁ。
中学生偏愛の松田さんのその後も気になる。 -
昨日図書館で借りてきました。海の見える街に地方の市民センターの図書館をめぐる4人の物語。初めの1章を読んだところで、なにやら日常を脅かす波乱が……
それぞれ前に進めない日常の中に、飛び込んできた彼女のペースに揺り動かされながら、変わっていく姿が4人の物語でつながっていきました。
インコとウサギと一緒に、海の見える街での新しい生活はまだまだ波乱が続きそうです。
畑野智美の作品は初めてです。 -
海が見える市立図書館に、産休補助職員として派遣されてきた女の子・春香。 思ったことはすぐに口にするし、当然、礼儀って何?くらいの未成熟さ。 これは面倒な子が入ってきたなぁ、というのが最初の感想でした…。
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そもそも、働くってどういうことかわかってないのでは、というくらいの幼い春香にイライラして、
このままの流れで行くんだったら、最後まで読めないかなぁ、と思ったのですが、
元からいた職員・本田君の目線で語られる図書館の日々や彼自身のキャラクターが面白くてページを繰りました。
本田くんはいわゆる草食男子。
春香が派遣されてきた理由となった産休職員の和泉さんを10年も好きだったのに何も言い出せず、(でも今も好き)、1人暮らしのアパートで飼っているインコのマメちゃんが心のよりどころ、という30代。
あれこれ思うことはあるのだけど、それが言葉にならず、でも仕事はしっかりこなしている。
そして、実は同じ司書仲間の日野さん(春香と同い年。凄い小説&漫画オタクで、年に二回、部屋で会議を開いては部屋に残す本、弟の部屋に移す本、処分する本などを決める。会議の相手はもちろん本。)が彼を好きだったりするのに、全くの唐変木!としかいえない対応。
そして、章が変わるごとに、語り手も変わり、そっか、そうだったのか、と。
で!!
実は一番気になったのは、図書館に隣接する児童館に勤める松田くん。
彼は中学生限定のロリコンで、それを本田くんは察知しながら友人として付き合っている、という設定。
私、あらゆる変態の中で幼児ロリコンだけは許容できないんだけど(変態、というか人と違った性癖を持つ人は、それを持って生まれただけなのだからそのことを非難するのはなんか違う、という気がするし、それぞれ趣向のあう人同士、平和に過ごしていればいいのでは、と思うんだよね。でも、ロリコンは相手の同意を得ないまま自分の欲望を満たす、というところで、それはもうダメ!と思うから。)
でも、この松田くん、児童館のメインの“お客さん”である小学生には何の関心も持たず、有能な職員として仕事をこなしているところや、彼の家庭環境、彼の目に映る図書館・児童館の日常が興味深いぁな、と。
また、彼が家出してきた中学生女子を見た瞬間に、もうどうしようもなく惹かれてしまうその怒涛のごとくの感情の描写には、哀れというか、だから松田君を擁護できる、というわけでもないのだけど。
どこか歪な、でも今の20代、30代には、こんな幼さを持つ人たちが多いんじゃない?という妙なリアリティを感じさせる職員たちの、ある意味固定した日々を春香はかき回し、その“効果”のために、その人、あるいは人間関係が大幅に変わっていくという話の展開・・・。
う~~ん、春香の来歴を知って、少しは寄り添う気持ちも生まれはしたけれど、
それでも、あそこまで滅茶苦茶に言いたい放題、やりたい放題だった彼女を受け入れられる職場、
には無理がありすぎるんじゃないかなぁ。
言ってはいけないことまで言ってしまっている彼女を、いくら少しずつ変化していったとはいえ、すんなり懐に入れてしまえないんじゃないかなぁ、と思うから。
春香のキャラがもう少し穏当だったら、他のメンバーがそれぞれ好きだっただけに、もっと好きな一冊になったような気がします。 -
この作家さんの本を読むのは初めて。
私は巷では人気の他の某作家さんの作品があまり肌に合わず、登場人物達にイラっとしてしまうのだが、本書はそれらとよく似ている気がするのに意外とイヤな感じが無かった。
この違いが何なのかは自分でもわからない。 -
この図書館で働きたいなぁ
金魚の夢が怖かった
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青春小説~!っていう感じ。登場人物は社会人だしそれほど若くもない人もいるけど、それぞれがしっかり青春していた。連作短編集は一遍目にやなやつと思ってた人もその人がメインになる別の一遍でバックグラウンドを知るとちょっと好きになってしまったりして面白い。最初大っ嫌いだったはるかちゃん。最後は幸せになってほしくてほしくて、すごく応援してしまった。
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海の見える小さな町の図書館を舞台にした物語だ。
女ばかりの家族で育ち自己主張が苦手で女性とちゃんとした付き合いもないまま三十路を迎えた男と、友達もなく本や映画が友人として生きてきた女、女子中学生が恋愛対象の三十男、そしてそこに新しく派遣職員として入ってきたやや非常識な天衣無縫の女。
それぞれの視点から一年間の海辺の街での日々を描いた物語だ。
ラストの顛末はちょっと都合がよすぎる気がしたけれど(あと、回収されなかったある人物のその後は結局どうなってしまったんだろう?)他愛ない人と人とのやり取りによって少しずつ人間関係や個人が変わっていく日常が何気なく描かれていて、誰かと知り合ったりかかわりあったりして距離を詰めたり離れたりしていく毎日って確かにこうだよなぁと思った。
大きな事件など起きなくても、日々顔を突き合わせているだけで人間関係って変わっていく。
カバーのイラストから湘南・鎌倉あたりが舞台かと思ったけれど、内容を読んでみるともう少し田舎の、千葉とか西湘とかのほうがモデルなのかな。
微妙にあか抜けない街の、あか抜けない人たちの物語。