- Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062179973
感想・レビュー・書評
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著者が著した博士論文「日本の自殺希少地域における自殺予防因子の研究」の内容を書籍化。
自殺率の低さが日本の市区町村で8番目(3318中)の徳島県旧海部町を調査・分析し、自殺予防因子(自殺の危険を緩和する要素)が何かを明らかにする。
直感と反する調査結果として、以下が述べられている。
・うつ受診率が高い。
➡海部町ではうつの早期発見と早期対応というメカニズムが機能しているため。軽症の段階で治療が始まっており重症化を防ぐことに役立っている。
・隣人とは淡白なつきあい
➡だれとでも等しく、必要十分な援助を行うつきあい方。緊密になりすぎないことで、コミュニティが広くとれる。(コミュニティにとらわれない人付き合い)
・海部町とその両隣に接する町と比較した場合、海部町の住民幸福度は三町の中で最も低い。
➡ただし、「幸せでも不幸せでもない」と感じている人の比率はもっとも高い。また、「不幸せ」と感じている人の比率は三町中もっとも低い。
また、海部町の風土・背景について、以下の考察をしている。
・「情けは人のためならず、めぐりめぐりて己が身のため」の理念を共有し根付かせることによって、自身たちの共存に成功したのではないだろうか。
・自分たちがこうあってほしいと考えるコミュニティにおいて、不適切と思われる行為すべてに、まずはべたべたと「野暮ラベル」を貼っておく。それと同時並行して、周囲から野暮と思われるのがいかに不名誉なことか、その観念を植え付けてコミュニティの共通認識にしたのではないだろうか。
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得られた研究成果について、特に子供への教育に取り入れるべきアイデアは多いと考える。ある程度育ってしまってはその人格を変えることは難しいため、できるだけ早くこの内容(海部町の風土・背景をつくる思想)が教育の場に適用されることを願う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ブログに掲載しました。
http://boketen.seesaa.net/article/397536409.html
日本一自殺率が低い町についての、愉快な研究レポート
徳島県海部(かいふ)町、人口約3千人の小さな町が、島しょ部を除けば全国でいちばん自殺率が低い。それはなぜなんだということを研究したレポート。実に興味深い本だ。 -
素晴らしい本だ。
読んでいて鳥肌がたった。 -
学問的誠実、人間的良心を感じた。自殺対策の決定打、総合策を打ち出した本ではないが、何かできるのでは、と思わせるものがある。また、社会科学系で研究生活に入る人にもお勧めしたい。
・赤い羽根募金が集まらない「だんじりの修繕には大枚はたいたけどな。ほないわけのわからんもんには、百円でもだしとうない」
・大事な場面での結団を子どもたちに託すリーダーの裁量。叱咤だけではだめだろう。
・お上に頼る気持ちが強いほど政府に対する無力感が増す
・「病、市に出せ」
・「スィッチャー」。炎上はクールダウンするスィッチャーがいないから。
・通説にはこれを用いる人々の思考を鈍らせる副作用がある。 -
徳島県民だが海部町がこんな特殊な町だったとは
驚いた
孤独死や中高年の自殺になると
地域の関係の希薄化にコメンテイターも言及するが
同じような地方の田舎で
自殺率が違うのはなぜ?
近所づきあいがあれば自殺がなくなるのか?
とさらに一歩も二歩も踏み込んだ本
マスコミレベルの言説をホントにそうなのか?と
あざ笑うこんな本が大好きだ
海部町の生き心地がいいのは
ひとつには多様性を認める価値観
傍論だが、おなじような集団でも
いじめがあるのとない、
その違いはいい意味で水をさす人がいる
多様性があるかどうか、だと言う著者の意見に
なるほどと思う
この本が面白いのは
最先端の研究結果が平易に読めることに加え
統計を用いた研究過程が興味深く
また、著者が現地で行う調査が
まさにエンタメノンフになっていることだ
以下追加レビュー
子供には
自分ができないことは早めに言え
周りに迷惑がかかる、と教育したい
文字道理周りのためでもあり
子供が苦しまないように -
世界の健康科学
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病は市にだせ。
いいねぇ 血縁、学歴、年齢ではなく人物本意 -
日本では交通事故死の数倍の自殺者がおり、自殺危険因子とか自殺多発地域などの研究が多くなされているが、筆者は逆に自殺希少地域でその理由を研究対象とし、その結果を記したのが本書である。
社会人の大学院生の学問としておこなっただけに、現地調査や仮説検証とか統計処理とか研究過程はしっかりしており結論を疑わせるものはない。判明した自殺予防因子は、なるほどというか、わかるような気がするものだ。四国のこの地が、このような条件を備えていることに驚く。比較例として上げられた自殺多発地域であるA村のほうが、まさに日本的というか伝統的というか、日本の農村の姿として典型的と思えるのだ。それもあって、この地が備えるその特徴を、まったく同じに真似るのは著者も認めるように難しいだろう。
しかし、目標が明確になったのだから、どのような手段でそれに向けて進むかは政治の課題になったのではないだろうか。政治家、役人には本書を必須の読書本としたいものだ。