パッシング・チャイナ 日本と南アジアが直接つながる時代

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062182805

作品紹介・あらすじ

2015年、中国バブル崩壊!また、日本の時代が来る。

感想・レビュー・書評

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  • 13/3/23
    WBSコメンテータ熊谷 亮丸氏著

  • エコノミストというよりストラテジストによる本

  • 2014/03/20:読了
     ふつう
     意図的な偏りはなさそう。

  • 以前、アメリカが日本をバッシングするのを諦めて「パッシング(通過)」するようになったという本を読んだことがありますが、この本のタイトルは私にそれをイメージさせました。この本の著者である熊谷氏の本は初めてですが、年齢も私と同世代であり、育ってきた環境が似ているので新たな切り口があるのではと思い期待しながら読みました。

    10億人を超える中国市場は確かに大きいですが、購買力のある消費者層で考えると、アジアの他の国々(タイ・インド・ベトナム・インドネシア・ミャンマー)も十分に魅力があり、「チャイナプラスワン」を考慮する必要があると筆者は述べています。また、中国と異なり、日本に対する良いイメージを持っているという点でも魅力があるようです。

    あと10年は中国の重要性は変わらないとは思いますが、それ以降のことを考えるには、熊谷氏の言われている点も見据えて会社経営や社会人生活を送る必要があると痛感しました。

    ただ、文章による解説が多く、それを裏づけする定量的なデータを示すグラフが無かったのは残念でした。

    以下は気になったポイントです。

    ・2012年のわが国の輸出の内訳を見ると、ASEAN向けのシェアが16.2%と、中国向けの18.1%に迫っている(p3)

    ・万世一系の天皇をいただく日本と異なり、儒教などの伝統的文化が引き継がれていない(王朝・民族・言語が異なる)中国を4000年というのは無理がある(p31)

    ・中国では、都市と農村の資産格差は、平均値同士で10.2倍開いている、上位10%が金融資産・収入の6割、総資産の8割を保有している(p35)

    ・中国政府は、治安維持に軍事費を上回る7018億元(9兆円)の予算をあてている(p37)

    ・共産党には3つの派閥があり、1)胡錦濤、温家宝(第4世代)の共青団、2)江沢民、朱鎔基(第3世代)の上海閥、3)習近平・李克強(第5世代)の太子党がある(p49)

    ・7名の政治局常務委員会、25名の政治局員、205名の中央委員のメンバーや、68歳定年制を考えると、江沢民と胡錦濤の痛み分けとなるだろう(p53)

    ・中国で重視できる数値は、電力消費量・鉄道貨物輸送量・銀行融資の3つである(p69)

    ・自動車業界や鉄鋼業界の設備過剰は極めて深刻、自動車生産能力は4割過剰、粗鋼は2億トンも需要(7億トン)を上回っている(p81)

    ・日本で活躍する中国経済専門家は、中国人・日本人を問わず、経済学ではなく語学を専攻した人間が多いので、感覚的議論が多く定量的な分析が少ない(p87)

    ・南アジア全域に生産拠点を分散したうえで、各拠点が状況に応じて柔軟に最適の生産体制を維持できる仕組みを作るのが「チャイナプラスワン」である(p103)

    ・ASEAN 10か国の総人口は6億人を超えて、EU 27か国(5億人)よりも多い、人口構成は若年層が多く、都市人口の比率も高まっている(p115)

    ・日本を好きと答えたのは、ベトナム・フィリピン・タイ・インドネシア・シンガポールが90%以上、嫌いと言っているのは、韓国(64)中国(45)である(p116)

    ・加工組立産業が生む付加価値は低下傾向にある、コモディティ化の荒波にさらされやすいので、これを「保守・サービス産業」と組み合わせることで値崩れを防ぐ(p187)

    ・1901.1.2の報知新聞に「20世紀の予言」という特集記事が掲載され、23項目中17項目が実現している(p193)

    ・中国がレアアースの輸出を制限したことで、豪州・米国からの調達を開始して、輸入比率は5割を下回った。資料量削減や代替品開発の効果もある、また海底でレアアースを含む泥が堆積していることを確認した(p254)

    2013年5月11日作成

  • ■パッシング・チャイナ

    A.日中関係の悪化は、日本経済に次の3 つの悪影響を与える。
    1.日本から中国に向けた輸出の低迷
    2.日本企業が中国に設立した現地法人の売上の低迷
    3.訪日中国人の減少しかし、悪影響の程度は、巷間いわれるほど大きくはない。

    B.日中関係の悪化は、中国経済に次の3 つの悪影響を与える。
    1.国際社会でチャイナ・リスクへの警戒感が強まり、中国向けの直接投資が減少する。
    2.日本からの部品の輸出が止まると、最終製品を作れなくなる。
    3.中国国内で政治体制が動揺する恐れが強まる。

  • ■書名

    書名:パッシング・チャイナ 日本と南アジアが直接つながる時代
    著者:熊谷 亮丸

    ■概要

    『パッシング・チャイナ』――「バッシング」ではなくて「パッシ
    ング」、すなわち中国を素通りして、「南アジア」という巨大な潜
    在市場と、それを形成する親日国を直接、日本経済にジョイントす
    る発想。いや、事実、「チャイナ・プラス・ワン」は予想以上のス
    ピードで進展し、すでに『パッシング・チャイナ』の潮流が大きな
    うねりとなってアジアに出現しつつある。
    中国のバブル崩壊は2015年――それに備え、日本と、タイ、インド、
    インドネシア、ミャンマー、カンボジア、ベトナムなど親日国との
    経済圏が、いまスタートする!
    (From amazon)

    ■気になった点

    ・中国一極集中を改める動きが進行している理由は、以下の2つである。
     
     ・チャイナリスクに対する警戒が急速に高まったこと
     ・労働コストが高まっている事

    ・2011年の月額の労働コストは以下である。

     ・北京  ⇒ 538ドル
     ・インド(ムンバイ) ⇒ 403ドル
     ・タイ(バンコク) ⇒ 286ドル
     ・バングラディッシュ(ダッカ) ⇒ 78ドル
     ・ミャンマー(ヤンゴン)⇒

    ・日本を嫌う国(中国、韓国)よりも、好意を持ってくれる国で商売
     をする方がよっぽどやりがいがあるのではないだろうか。

    ・外交は現実的な落としどころを探るのが政治家の仕事だ。

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著者プロフィール

大和総研 副理事長兼専務取締役 リサーチ本部長 チーフエコノミスト。内閣官房参与(経済・金融担当)。研究・専門分野は経済調査、政策調査、金融調査全般。1989年東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。同行調査部などを経て、2007年大和総研入社。2010年同社・チーフエコノミスト。2014年同社・執行役員チーフエコノミスト。2021年より現職。東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(旧興銀より国内留学)。ハーバード大学経営大学院AMP(上級マネジメントプログラム)修了。政府税制調査会特別委員などの公職を歴任。経済同友会幹事、経済情勢調査会委員長。各種アナリストランキングで、エコノミスト、為替アナリストとして、合計7回、1位を獲得。著書は『ポストコロナの経済学』(日経BP)など多数。

「2021年 『この一冊でわかる世界経済の新常識2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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