- Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062193221
作品紹介・あらすじ
『よるの美容院』で、第52回講談社児童文学新人賞を受賞し、第2作目『紙コップのオリオン』でも注目を浴びた著者の3作目。
主人公・みさとはアナウンス経験のない、放送部員。しかも2人しかいない零細クラブだ。能天気な顧問と厳しい担任のせいで、毎週火曜日の昼の放送を行うこと、しかも部員を増やさなければならない状況に陥る。
クラスメイトからの嫌がらせが原因で、孤高の美少女転校生・葉月とのかかわりを持つことになったみさとは、思い切って葉月を放送部に誘う。
さらには気になるクラスメイト・新納まで、入部してくれて…。
葉月のアドバイスにより本格的な活動が始まり、大会エントリーを目指して各々の思いを形にしていこうとする。
みさと自らもバスケ部を途中でやめた過去あり、前の学校で放送部員だったのにマイクの前で一言も発さない葉月にも、隠していたできごとがあった。
温かな描写と、キャラクターたちが美しく輝く、心優しい青春小説!
感想・レビュー・書評
-
2017年度読書感想文中学校の部の課題図書
中学校で放送部というのはとても珍しいのではないだろうか。
廃部寸前の弱小部で、コンクール目指して奮闘する部員たち。でもそこに至るまでは紆余曲折。
中学時代って、ホントに色々めんどくさいんだよなぁ…とあの時代にトリップして読んだ。
それくらい、作家の目線がリアルだった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いや、これは名作なんじゃないかな。
あまりに予定調和的なラストとか、あまりに一面的な敵役とか、ひょっとしたらそういう不満を持つ人がいるかもしれないけど、いいのである。中学生向けの本なんだから。
で、エンタテイメントとして秀逸。
特にキャラが立っているし、そういったキャラの特徴を物語の最前半でちゃんと提示するのがすごい。
ストーリーも奇をてらわないけどありきたりでもなく、一切のたるみを見せずに最後まで続く。
うん、やっぱ名作だ。 -
中学校の放送部を舞台としたYA小説。中学生向けの青春ど真ん中一直線の物語。
-
青春ど真ん中。この年頃の作品って、やっぱり楽しい、爽やか、羨ましい。こうでなくっちゃ。
-
昔、中学校で放送部の顧問をしていたことがあった。それまで放送部がなかった学校に創部したから、この本に出てくるような一期生と共にワクワクしながら、作り上げていった思い出がある。キーパーソンになる美少女転入生には、橋本環奈を重ねて読んでいた。彼女が主人公の少女と放送部を作り上げていく中でお互いの心の傷が癒えていく様子が爽やかな読後感につながった。
-
中学校課題図書
-
放送部を題材にしたのはうまいと思った。
なぜなら、放送部という1つの器のなかに、マイクの前で原稿を読み上げる人(アナウンサー)のほかに、機器操作をする人(ミキサー)や、全体を見て指示をだす人(ディレクター)などの多様な持ち場があって、個性を割りあてやすいから。
またスポーツ系と違い、女子と男子のどちらが担当しても不自然じゃないのも強みだ。
それにしても、この本の展開は“王道”だと思った。
大会出場に向けてバラバラだった個性が次第に結びつく展開はまさにそう。個性が多様ないまの中学生が感情移入しやすいように、それぞれのキャラクターが細部まで作りこまれている。
ほかに同級生からの同調圧力とそれの裏返しの巧妙な嫌がらせや、自分の主義主張を生徒に押しつけてそれが正しいと思いこんでいる先生との闘いや、そして異性への淡い思いなど、今の中学生が好きそうなアイテムがコンパクトに盛り込まれている。
でもあえて言わせてもらえれば、こういう最大公約数的な落ち着くべき地点に落ち着くような“万人受けしそうな”作品は、私はあまり好きではない。
この本の完成度を低く評価するつもりはない。だが私は最近読んだ「リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ」からも、この本と似たような感じを受けた。
https://booklog.jp/item/1/4062210800
まるで今の中学生が“忖度”や“空気を読む”というような現代的な風潮に取り巻かれつつも、そのせまい枠内のみで葛藤や軋轢を克服することで、もう自己満足を得てしまうのでは、と“深読み”してしまう。
「中学生」「放送室」と聞いて私が思い出すのは、私が中学生のときに放映された3年B組金八先生の「卒業式前の暴力」だ。
加藤優の物語を今の中学生も一度じっくり見てほしい。コンプライアンスとかに押し込められたせまい常識なんか百万光年かなたへ蹴り飛ばすかのようにいろいろな感想が胸から湧き上がること必定。そういう意味でこの本よりも多種多様な感想文が加藤優からは生み出されるのではないかと思っている。
昨今の中学生向け小説のパターンが1つの定型に落ち着こうとするかのような傾向に活を入れるという意味で、誰も書かないまたは書いていない視点からレビューを書いてみた。