鳥獣戯画

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 85
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062208079

作品紹介・あらすじ

人間が考えることなど動物は何もかもお見通しなのだ。

二十八年間の会社員生活を終え自由の身となった小説家。
並外れた美貌を持ちながら結婚に破れた女優。
「鳥獣戯画」を今に伝える名刹を興した高僧。
父親になる三十歳の私。恋をする十七歳の私。

語りの力で、何者にもなりえ、何処へでも行ける。
小説の可能性を極限まで追い求める、最大級の野心作。

感想・レビュー・書評

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  • この作家のことを知っている訳ではないが、私小説のようなプロローグは自身が過去に何処かで経験した幾つかの場面を組み合わせて再現したものなのだろうな、と直感する。話の展開の妙ではなく切り取られた一つの場面に内在する数多の感情の一つ一つに意味を見出そうする文体は保坂和志を彷彿とさせる。自分自身が気付いてすらいなかった感情が何処から湧いてくるのか、それを探って言葉に投影してみる。ジャームッシュのオムニバスの中の短篇映画の一つを根掘り葉掘り解説したらこうなるとでも言うように。しかし、前後関係も何もかも無視して絡み合う融合した複数の感情(それを感情という言葉にした瞬間に言い表したい事の半分は指の間をすり抜けてこぼれてしまうように思うけれど)を解きほぐす事など出来るわけも無く、窮屈な言葉の表象に手放しで託してしまうことになる。それは創造による補遺を必要とし、省略によって因果律を成り立たせ、辛うじて物語の体裁を保ってはいるが元になった説明不可能な想いそのものではない。それ故、この小説の中で語られる、如何にも作家本人の経験談のようなものはすべてフィクションであるとも言えるし、かつ、作家の視点から見たの事実なのだと捉えて良いような気がする。

    面白いのは、そこに他人の感情が絡み合って来ることを作家が見逃さないこと。その赤の他人の感情も引き受け、その過去をも言及(想像)する。それは次第に時を遥か隔てた過去の人物の来し方にも波及し、一体この小説はどこへ向かって行くのだろうと読者を訝しがらせるが、恐らく、あのプロローグの場面へと引き取られて行くのだろうことも、また、想像に難くない。

    読んでいる時には自分自身の脳細胞がそれ程刺激を受けているようにも感じなかったけれど、いざ感想を記そうとすると次から次へと言葉が湧いてくる。存外、この不思議な小説に魅せられていたことを実感する。

  • ずっと読みつづけていたかった。
    ある謎の解決に向けて作家に誘導されているような感じがまったくしない。本作は不思議なことに、作家の作為を超え、自律性を持っている。作者本人にすら、行き先のわからない、その運動に身を委ねる心地よい読書体験。

  • ↓利用状況はこちらから↓
    https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00546370

  • あまりに過去に読んだことがない種の小説で、感想が書けませんでした。
    幸い買って所有している本なので、近々もう一度読んでみたいです。

  • 筋書立て、ストーリー性もほぼない、エッセイなのか小説なのかその中間に位置するかのような、不思議な1冊。

    キーワードは「語り」のようで、確かに筆者がひたすら出合ったこと、歴史のこと、過去のこと、何となくそれらが関連付けられているようなゆるい感じで語られていく。

    大きな事件や意外性のある展開などは皆無。といって無味乾燥では決してなく、味気無さは多少あるもの、気がつくとその語り口に引き込まれてしまっていた。他にはない、何とも独自的な作品。例えば自分が「文字中毒」的なところを自覚している人なんかがはまりそうです。

  • 題名と表紙に惹かれて。どこがどこにかかってるのか不明のまま読み進めて読み終わった。ボクと同級生だ。じゃがたらとかイヌとかボブマーレイとか。他に好きな人できたって人生で二度くらい言われたことあるし。

  • 自伝風の小説.昭和の喫茶店がとっかかりとなって,美人と出会い京都から明恵上人へと広がって鎌倉時代から高校時代へと移りゆく,心象風景といった感じの物語.心の動きが少し言い訳がましいような気もするが,何に向かって心情吐露をしているのだろう,読者かしら.

  • 初出 2016〜17「群像」

    芥川賞作家の私小説風青年期恋愛譚。
    途中に、若く背の高い美人女優と京都に行く話や明恵上人の伝記が挟まっていて、どこへ連れていかれるのか分からず、読み終えても、「それで?」という印象しか残らなかった。

    純文学は何が面白いのか訳がわからん。

  • 鳥獣戯画が好きで手に取る。
    最初話の展開についていけない、話がコロコロ変わるので、何を題材にして話が進んでいくのか骨が見えないのだ、が不思議な文章で「この不思議さはなんだ?」と思いながら読む。一文章が長いのだ読点が無くて。
    明恵上人の項に関しては歴史好きとしては興味を引きちゃんと読め、そこからは朧気ながらも話の展開が読めてくる。がラスト「鳥獣戯画」には触れず、話は終わる。
    「ん?」再度、表紙とタイトルを読み腑に落ちる、「ああ、鳥獣戯画なのか」

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著者プロフィール

1965年生まれ。2007年、文藝賞を受賞しデビュー。『終の住処』で芥川賞、『赤の他人の瓜二つ』でドゥマゴ文学賞、『往古来今』で泉鏡花賞を受賞。2015年、三井物産を退社。現在、東京工業大学教授。

「2019年 『金太郎飴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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