記憶: 創造と想起の力 (講談社選書メチエ 93)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062580939

作品紹介・あらすじ

なぜ一杯の紅茶から、「記憶の大伽藍」が出現しうるのか?記憶とは、刻印の「集積」ではなく、「生成」しつづけるダイナミックなシステムである。回想、追憶、想起がもつおどろくべき創造力に光をあて、アートの現場、歴史認識、言語状況を横断しながら、終わりなき構築としての「記憶」を透視する。

感想・レビュー・書評

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  • 写真と記憶では、バルトの『明るい部屋』が取り上げられる。撮影は指差す行為でしかない。語るのは後から見る者の役目だ。写真を撮るとき、その瞬間は未来から見られる過去となる定めを負う。可視光線(現在と、写された過去)を目で見るという二重構造。写真を見るとき、未来すなわち死を感じる(つまり哀悼)のはそのためだ。写真はそのものが不在を証明する。不在の輪郭をなぞること(スペイン語 retratar)。ジャコメッティの場合は遠ざかる記憶を、小さな彫像に作ることで表現した。記憶の強弱を距離に置き換え、さらに大小に変換、彼の作る像はどんどん小さくなっていった。遠くへ押しやったにも関わらず、制作には顔をもっと近づけなくてはならない。その矛盾が哀れでもある。作家は指先でこねながら、記憶を紡ぐ。最後はベルクソンの、現在から未来への逆円錐モデルを引用、そのバベルの塔の建築に言語は欠かせないと説く。言語による記憶。現在は未来によって語られる。

  • 記憶はとっても気になっていたものなので、港千尋さんのお話を伺って飛びついて読みました。

    芸術的創造という切り口で記憶について書かれているのですが、芸術家やその作品だけではなく幅広く脳科学や心理学、人類学などからも考察されています。理解できたとはおこがましくてとてもじゃないけど言えませんが、読んでよかったと強く思います。

    脳科学とフロイトさんの精神分析の親和性を感じ「最新の脳科学でフロイトさんの説を跡づけるような本ないかなぁ~?」と考えていた私にとって、『フロイト草稿の再評価―現代認知理論と神経心理学への序文』(1988/7 K.H. プリブラム (著), M.M. ギル)などへの言及はまったくもって縁だなぁ~と驚きました。

    「あいちトリエンナーレ」行きます!

    Mahalo

  • 「記憶」の概念を変えてくれた本。

  • 色んなことに不安になると読み直す。vol.2

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著者プロフィール

写真家、映像人類学者。多摩美術大学教授。1960年神奈川県生まれ。南米滞在後、パリを拠点に写真家として活躍。1995年より多摩美術大学美術学部で教鞭をとり、現在は同大学情報デザイン学科教授。2006年〈市民の色〉で伊奈信男賞受賞。2007年第52回ヴェネチア・ビエンナーレ美術展における日本館の展示企画コミッショナーをつとめる。

「2019年 『現代写真アート原論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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