感情の政治学 (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062585828

作品紹介・あらすじ

個人が政治の情報を集め、投票先を主体的に、合理的に選択すれば、
政治はよくなる――。そのような政治観は幻想に過ぎない。
自分の思う通りにならない他者と、人間の非合理性に注目し、
政治を組み立て直す。
理性を重視する従来のパラダイムではこぼれ落ちてしまう現実の政治を
気鋭の政治学者が描き出す一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 行動経済学がむちゃ注目されているように、政治を語るときもそりゃ感情を考慮する必要はあるよなあと思う次第。
    どの論考も極めて明晰でシャープ。たぶんすごく難しいことを言っているんだろうけど、記述が本当に論理的だから実に読みやすい。
    著者の紹介に「気鋭の政治学者」とあったのは、うんまさにそうなんだろうなあと納得する。

  •  政治の重要な要素を担う感情について。

     感情的に政治的判断をするというのは決してネガティブな意味ではない。人は合理的判断だけで政治をするのではなく、そこには様々な感情が判断の大きな役割を担っている。
     読んでいてなかなか分からない部分もあったので、また後で読み返したい一冊。

  • 多くの場合、政治の実際は決して合理性だけに拠っているのではなく、人びとの感情に働きかけ、引き出すことを資源にする。それを警戒し、非難することは時として必要なことだ。 (p.52)

    個人がどのような環境において自らの政治意識を発展させていくかに注目することの重要性は増す。いずれにせよ、政治的意識の基礎は、「現実よりも理想をめざすこと」、「認識よりも愛着を持つこと」をスタート地点とすることからはじまる。(p.104)

    社会運動とは―それを集団行動と呼ぶのであれ、集合行為と呼ぶのであれ―必ずしも合目的的な目標に向かって組織的かつ秩序的に進むのではなく、もっと不定形で自己言及的なかたちをとる。イタリアの社会運動の理論家で、詩人でもあったメルッチがいったように、それは現代社会でシステムが完成し、それが分散していることに呼応して生じる、局所的かつ多元的なものである。その集合がどのようなきっかけや動機によって生起するのか。そしてその後どのように、場合によっては複数の目標に向かって進み、変容していくのかはあらかじめ予期できない。それは集合行為が、何らかの財の再分配をめざすような具体的目標をもつものではなく、象徴的に遂行され、その目的自体も参加者による普段の再定義にさらされるからだ。(p.175)

    恐怖感は漠然としたものであるがゆえに増幅され、共有されていく。しかも、それはいつ訪れるかもわからない不確定性によって、ますますリアルなものとして感じられ、恐怖が恐怖を呼び込む特徴を持ち合わせている。恐怖がこのようにアモルフだからこそ、私たちは一般的に「わかりやすい悪」を好むことになる。この世を不幸なものにしている主体を無理矢理にでも特定するふりをすることで、安心を得ることができるからだ。しかし、実際にはそんな「責任者探し」を延々とくりひろげても、否、くりひろげればひろげるほどに、心的な平和を得ることはできない。(p.208)

    信頼を何かで代替するのは簡単なことではない(その逆の方が易しい)。現代社会で、行政だけでは手当できない問題がますます増えている。増大する課題に対処するためには、行政サービスの量を増やさなければならないが、そのためには予算手当てが必要となる。(p.239)

    信頼とは、あるのか、ないのか、あるはあるべきものなのか、といった次元で捉えられるものなのではなく、社会が社会であるために不可欠なものなのだ。他人の自由が増えることは自分の自由が減ることを意味しないということ他人を信頼することで自分の自由が拡大していくような社会が作られなければならない。もしそれがないのであれば、それはこれから作り出されていかなければならない。もしそれが創り出せないのであれば、それは発明されなければならない。(p.262)

  • 社会科学は社会での人間の行動を説明することを目的とする学問、したがって政治学とは広い意味で政治に関わる人間行動を解明する科学。


    民主主義と呼ばれる政治はその共同体の構成員の全員が主体であるという前提をおかなければ有効に機能しない。

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著者プロフィール

1975年東京生まれ。東京大学総合文化研究科(国際社会科学)博士課程修了(学術博士)。
慶應義塾大学法学部卒,日本貿易振興会(ジェトロ),日本学術振興会特別研究員等を経て,現在は北海道大学法学研究科/公共政策大学院准教授(ヨーロッパ政治史)。
主要業績:「フランス:避けがたい国家?」小川有美・岩崎正洋編『アクセス地域研究Ⅱ』日本経済評論社,2004年;「フランス政党政治の『ヨーロッパ化』」『国際関係論研究』第20号,2004年;「『選択操作的リーダーシップ』の系譜」日本比較政治学会年報『リーダーシップの比較政治学』第10号,2008年;「フランス・ミッテラン社会党政権の成立:政策革新の再配置」高橋進・安井宏樹編『政権交代と民主主義』東京大学出版会,2008年;伊藤光利編『政治的エグゼクティヴの比較研究』早稲田大学出版部,2008年など。

「2008年 『ミッテラン社会党の転換』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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