- Amazon.co.jp ・本 (473ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062620697
感想・レビュー・書評
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大いなる幻影より猟人日記の方が読みやすかった。筆者が女性であることを忘れる。
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大いなる幻影
1951年4月、一人の女装の青年が大塚仲町の交差点で交通事故死する。警察も世間も最初はこの異様な姿の事故死を話題にするが、時間とともに忘れてしまう。一方同時期、在日米軍少佐の息子が誘拐される事件が発生。このプロローグから現場近くのK女子アパートの移動に伴い、ここに住むに住む人々(女性)の過去やエピソードがそれぞれがそれぞれの幻影に操られながら語られてゆく。物語の終盤は一気にストーリーが展開するが、最後にドンデン返しが用意されている。
本書に登場するK女子アパートのモデルは同潤会の大塚女子アパートがモデルとのこと。第8回江戸川乱歩賞受賞作
猟人日記
生命保険会社のキーパンチャー尾花けい子はバー「ボウ」で本田一郎と出会い一夜を過ごす。6ヶ月後尾花けい子は本田の子供を身ごもったまま自殺。尾花けい子の死を知った本田は哀悼するも、妊娠の事実を知らぬまま新たな獲物を求め、その成果を猟人日記としてゆく。しかし新たな女性たちは本田の持つ特異な血液型の痕跡を残したまま次々と殺されてゆく。本田の行動を追うように尾花けい子の姉である尾花常子の影がつきまとう。本田は被害者の残した痕跡が証拠となり逮捕、起訴され死刑の判決がおりてしまうが、弁護人になった畑中弁護士事務所に勤める進士は
調べを進めてゆくにつれ証拠の血液型の秘密に迫る。いったい真犯人はどのようにして証拠を入手したのか?犯人は尾花常子なのか? 最後に語られる驚愕の真相。DNA鑑定が採用される以前の時代背景。海外ミステリーのタッチを持つ小説 -
『大いなる幻影』
「老女(嬢)小説」というジャンルがあるとすれば、最高峰の部類。桐野夏生はこの系譜(特に『アイム・ソーリー・ママ』)。牛乳瓶を盗む老婆とバイオリンを盗んだ老女の対比。そして指紋を介して生まれる二人の共犯意識。文章の生硬さは意気込みの表れ。内題と章番号が煩瑣。
『猟人日記』
前作に比べ、文体の上でも構成の上でも洗練。昭和四十年代の風俗を知る上でも興味深い(特に喫茶文化について)。戸川と美輪らしき人物が登場。曰く、「戦後、人生というものが軽くなってしまった」。
『推定無罪』とトリックが同じ。