イギリスの片田舎の娘が年とった従姉妹とイタリアに旅行し、ホテルで口さがない宿泊客たちと交際するはめになる。交際に疲れた娘は一人街にくりだすが、偶然、殺人事件に出くわし、その場にいた一人の男に助けられる。男は同じホテルで他の客たちに疎まれていた卑しい生まれの青年だった・・・云々。ヴィクトリア朝式の保守的な家に生まれた女が、結婚と恋愛をつうじて、周囲の人々の間違いに気づき、やがて自分の本心を知るにいたるというジェイン・オースティン的なテーマ。でもオースティンよりずっとバロックで、登場人物も決して「類型」にはまってない。フェミや同性愛のテイストもそこここに見られて、思わずにんまりしてしまう。タイトルに見合う不思議な魅力をたたえた傑作。

2014年6月15日

読書状況 読み終わった [2014年6月15日]
カテゴリ イギリス文学

小説論はあんなに面白いのに、期待値が高いからつまらなく感じてしまうのか。やろうとしていることはわかるし、その意義もわかる。でも最後まで読めない。なぜ読めないのか、考えさせられる(そういう意味ではこれも著者のいう「小説」の醍醐味なのか)。原因は「オヤジ」的なユーモアの感覚と猫? 猫好きじゃないと、猫のくだりは楽しめない。

2014年6月10日

読書状況 読み終わった [2014年6月10日]
カテゴリ 日本文学

なんて健気な晩年のフー子。涙が出そう。

2014年6月5日

読書状況 読み終わった [2014年6月5日]

この著者の小説論を読んでいると、ほとんどマゾ的な快感を覚える。今までの自分の小説の読み方が全否定されている気持ちになるからだ。文体、印象、構造などはどうでもよく、大事なのは言葉の「現前性」、小説じたいがもつ「能産性」だという。そのうえで著者は情景描写とそこでの視線の運動に着目するのだが、その例証の手つきがすばらしい。特に情景描写を読む態度によって読者が二つにタイプ分けされ、それぞれのタイプによって「いい文章」の定義が違ってくるという主張は説得的だった。『フランドルの冬』(クロード・シモン)と『告白』(アウグスティヌス)を今まで面白いと思えなかった自分が恥ずかしい。読めていなかったのだ。

2014年6月1日

読書状況 読み終わった [2014年6月1日]
カテゴリ 文学研究・批評

今のところ、フランスの同性婚問題について参照できる唯一の和書。議論の経過を丁寧にたどっていて、よくまとまっている。訳語も適切。

2014年5月20日

読書状況 読み終わった [2014年5月20日]
カテゴリ 社会・政治批評

秋葉原にトラックで突っ込むまでの加藤智大の軌跡を追ったルポ。家庭環境のことが言われていて、その一点にかけては加藤に同情してしまった。親子のコミュニケーションがすべて間接的で一切の説明がない。だから加藤も間接的な行為でしか自分のメッセージを伝えることができず、つねに相手がそれを察してくれるのを期待する。そしてその期待が裏切られると、さらに行為=表現をエスカレートさせる。しかし秋葉原にトラックで突っ込むことが「自分の不満をわかってくれ」というメッセージの表現だったと言われても、唖然とするしかなかった。あまりにも幼稚で、ひとりよがり。とはいっても、ルポじたいはすばらしい。

2014年4月19日

読書状況 読み終わった [2014年4月19日]

薄い本だが、これ一冊で第一次大戦の流れをつかめる。そして、いかにこの「忘れられた戦争」が現在に至るまでの世界情勢を決定づけたかがよくわかる。特にロシア革命(最も重要なターニングポイント)をめぐる各陣営の右往左往と暗躍ぶりは面白すぎる。

2014年4月15日

読書状況 読み終わった [2014年4月15日]
カテゴリ 一般思想・歴史

東電OL事件のルポ。ほとんど古典となっているが、やはり面白い。著者のフェティッシュと言っていいほどの被害者に対する思い入れ(おそらく性的なものが含まれている)。「遺族のプライバシーを尊重して」と断りながらも、実際はまったくそれを無視して暴きたい放題。東電OLに触発されて登場人物たち(著者も含めて)の「いびつさ」が逆照射されるところにこのルポのロマネスクがある。ルポというより小説だからこそ、ぐいぐい読ませる。

2014年4月10日

読書状況 読み終わった [2014年4月10日]

読書状況 読み終わった [2014年3月30日]

尼崎事件の角田美代子について迫ったルポ。人物相関図がレヴィストロースみたいになっていて、思わず笑ってしまった。でも笑ってばかりもいられなくて、やがてこれでもかと角田の人心掌握術の巧みさと恐ろしさを見せつけられる。ヤクザの威の借り方、その場で一番偉いのは誰かをわからせる空気のつくり方、押すときは一気呵成、引くところは引くという状況判断力と臨機応変さ。特に思春期の子供の心理を知り尽くしていて、本人たちが意識しているいないかの反抗心や憎しみにすばやく輪郭と対象(親)を差し出し、後戻りさせなくするところがすごい。そして尼崎という土地のいかがわしさ。出てくる証人たちも一癖も二癖もある怪しい人ばかりで、もっと言えば、そのなかでのらりくらりと取材をつづける著者も充分に怪しい。

2014年3月18日

読書状況 読み終わった [2014年3月18日]

読書状況 読み終わった [2014年2月22日]
カテゴリ イギリス文学

読書状況 読み終わった [2014年1月31日]

読書状況 読み終わった [2014年1月29日]
カテゴリ 文学研究・批評

読書状況 読み終わった [2014年1月7日]
カテゴリ 社会・政治批評

宮台真司をマシンガントークで圧倒しているYoutubeの動画を見て著者のことが気になった。言葉のセンスが抜群の人だと思う。言っている内容はポストモダンやニューアカの流れをくんでいるのだが、それを自分の言葉に変換してうまく活用している。「レイヤー」とか「態度経済」とか「解像度」とか。同じことを言うのでもこういう風に言えば人を動かせるということを本能的に知っている(ニューアカやポストモダンの担い手たちよりもずっと)。ただ、少しマッチョなところがあって、典型的な九州男だなぁという感じ。

2014年1月6日

読書状況 読み終わった [2014年1月6日]
カテゴリ 一般思想・歴史

恋愛において、男は対象を所有したがり、女は対象と関係したがる。この命題をめぐって、ジェンダー用語の解説、脳科学批判やフェミ批判をまじえながら、議論をつくしている。前半で批判に対する予防的な物言いをさんざんしていたわりに、後半は単純な男女論に陥っている感じ。著者も冒頭で「現代において精神分析は有効か?」という問いを投げていたが、読み終わってみると、「なぜそこまでしてフロイトーラカンにこだわる必要があるのか?」と著者の立場じたいを疑ってしまう。

2014年1月5日

読書状況 読み終わった [2014年1月5日]
カテゴリ 一般思想・歴史

続刊と比べると、モリアキ先生の訳の素晴らしさがよくわかる。

2014年1月5日

読書状況 読み終わった [2014年1月5日]

新書だけど、かなり情報量が豊富。一般に流布しているワイルドの「殉教者」としてのイメージを相対化するのが狙いらしい。ダグラス卿に対する二枚舌とか、性科学に対する関心とその利用とか、あとドレフュス事件との意外な関わりには驚かされた。日本ではあまり馴染みのない「変質論」(当時の脳科学みたいなもの)にも多く言及していて、ヨーロッパのゲイ文化史の教科書としてすばらしい。

2014年1月3日

読書状況 読み終わった [2014年1月3日]
カテゴリ イギリス文学

アンティークキルトを収集するキリノ。つくづくかっこいい女。ハワイアンキルトのキャシー中島とは違う。斎藤環のキリノ論が面白かった。

2014年1月1日

読書状況 読み終わった [2014年1月1日]
カテゴリ 文学研究・批評

『魂萌え』と『メタボラ』を足して二か三で割ったような作品で、どうしても自己模倣に陥っているとしか思えない。311の影響がこの著者にかぎっては悪いほうに働いているのではないか、と意地悪なかんぐりをしてしまう。でも前半のスピード感は面白かった。男ってやっぱバカ。

2013年12月30日

読書状況 読み終わった [2013年12月30日]
カテゴリ 日本文学

「社会契約」というヨーロッパ社会の基礎となった(今もなお、なっている)概念をホッブズ、ルソー、ヒュームなどを通して考察する。著者が問題にするのはこの概念が含む本質的な矛盾で、「何も失わずに新しく何かを得る」という特質である。この特質を著者は「わからない」と言い切る。しかし論理思考ではわからないということで、そこに含意されている宗教性みたいなものをまったく無視しているのが気になった。特にルソーにおいては福音書の影響というのがまぎれもなくあって、ルソーをプロテスタントの代表としてみる見方は当時からオーソドックであったはず。「宗教」を「自己啓発系マジシャン」と同定してためらわない著者の態度を潔いととるか、物足りないととるか。

2013年12月29日

読書状況 読み終わった [2013年12月29日]
カテゴリ 新書

「不美人を笑う男たちを利用した不美人の犯罪」。婚活サイトで出会った男たちを「ケア」しながら騙し、あげく殺した木島佳苗のルポで、エンタメ+社会批評として最高に面白い。著者が公判で目撃した佳苗は決して「不美人」ではなかった。毎回服装と髪型を変え、女としての自分を演出しながら、被害者の男たちにいらだち、弁護士と談笑する佳苗。「リングイネ」を知らない検事に対して「そんな男に佳苗を裁いてほしくない!」という著者の絶叫には笑ってしまったが、「リングイネ」を知っている男の方がかえっていやらしいんじゃないか? このエピソードからしても佳苗のやったことは女子の女子による女子のための犯罪という感じがするけれど、著者が主張するように、バブル期からバブル崩壊の狭間の日本社会が生んだ必然的な犯罪というのもすごくよくわかる。本書のスピンオフである『毒婦たち』(上野千鶴子、信田さよ子との鼎談)とあわせて読むべし。

2013年12月28日

読書状況 読み終わった [2013年12月28日]
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